終活業務日誌~U様のケース③ | JNEXT司法書士事務所のブログ~終活業務日誌~池袋 相続・遺言書・認知症対策

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池袋のJNEXT司法書士事務所と申します。
相続といえば日本一と言われる様、日々精進してまいります。
また、終活に関する記事についても掲載していき、見てくださった方の参考になりますと幸いです。

みなさん、こんにちは!

 

司法書士の落合です。

 

本日は、U様の事例の3回目です。

(前回までの内容を見たい方はこちらをクリックしてください↓)

https://ameblo.jp/jnext-shihoushoshi/entry-12591248741.html

https://ameblo.jp/jnext-shihoushoshi/entry-12598743381.html

 

今回は、不動産の手続きを中心にお話しさせて頂きます。

U様は都内にご自身名義のマンションを所有されていましたが、遺言書ですべての遺産を日本赤十字社に寄付することを望まれていました。

しかし、遺産が不動産の場合、日本赤十字社側もそのまま受け取ることなどはしないため、不動産であれば売却し、現金化した上で寄付する必要があります。

 

ここで問題となるのが、U様のように身寄りがない方の場合、誰が不動産の売却手続を行うのかということになりますが、前回、お話しをさせて頂きました遺言執行者が遺言書で定められていれば、遺言執行者が行うことになります。

 

なお、遺言執行者が定めれていたとしても、遺言書の書き方には注意が必要です。

 

というのも、遺言執行者が不動産を売却した上で特定の団体に寄付する場合、流れとしましては、遺言執行者が不動産を購入してくれる買主を見つけ(実際は不動産業者にお頼みしますが)、買主が見つかれば、売却し現金化した上で寄付しますので、不動産登記簿の流れもU様名義から直接買主名義に移るものと思われますが、登記手続き上は違います。

 

今回で言えば、U様には法定相続人が5人いますので、一旦法定相続人全員の共有名義に相続登記をした上で、相続人名義から買主名義への所有権移転登記を行う必要があります。

したがって、売却手続き自体は遺言執行者が行ったとしても、相続人から買主への所有権移転登記を行う場合、登記手続き上は、相続人が登記義務者となるため、相続人全員と買主で登記申請を行うことが原則必要となり、相続人全員の印鑑証明書等をご準備して頂くなどの対応も必要となります。

 

U様の場合、幸い相続人全員が協力的であったため、お願いすれば印鑑証明書等のご準備もして頂けたかもしれませんが、相続人によっては自分には一銭も遺産が入らず、登記にだけは協力してくれというのは虫がいい話しでもありますので、ご協力を頂けない可能性も考えられますし、そもそも相続人の一部の方と連絡が取れないなどの事情で、せっかく買主が見つかっても買主名義の所有権移転登記を行うこと自体難しくなってくることも十分考えられます。

 

そこで、遺言書の書き方を清算型遺贈といって、「遺言者が有する全ての財産を処分又は換価し、その代金から遺言者の債務及び処分、換価のために必要な費用等を控除した残金を、〇〇に遺贈する」等といった文言にすることによって、遺言執行者が法定相続人に代わって、買主への所有権移転登記を行うことができます。(清算型遺贈の記載方法につきましては、専門家にご相談ください)

 

U様の遺言も清算型遺贈にしておりますので、遺言執行者が登記手続まで相続人に代わって行うことができますので、相続人のご協力を頂かずに手続きを進めることができます。

 

幸い、売却にあたってはお頼みした不動産業者さんが買主を見つけてくれたため、今月末に買主に物件を引き渡すことで段取りが進んでおります。

 

ここで余談となりますが、年が明けた1月の上旬、U様の自宅の遺品整理を行うということで、想いコーポレーションさんの担当者と一緒に遺品整理の現場に立ち会わせて頂きました。

U様のご自宅には生前も何度も伺っていましたので、本格的なカメラが数台置いてあるのを見つけ、趣味の一つが風景写真を撮ることだと聞き、撮られた写真を見せて頂く機会もありました。

なので、カメラが数台あることは知っていましたが、遺品整理をしたところ、部屋の中から押し入れの至るところに古いカメラやデジカメなど様々なカメラが何台も置いてあり、全部で15台くらいあったので驚きました。

 

また、以前見せて頂いた写真以外にもたくさんの写真が保管されており、中にはU様の若かりし頃の写真もあったので、担当者の方とU様にもこんな時代があったのですねなどとU様を懐かしむ時間がありました。

 

自宅の売却手続き自体は、まだ完全には終わっていませんが、順調に進んでいる一方で、私どもで把握しているU様の不動産はご自宅だけだと聞いていたので、自宅の処分さえできれば手続きもだいぶ終わるものだと思っていたところ、別にあることが判明します。

 

前回、相続人に遺言執行者就任通知を送った時に2人の甥っ子さんから連絡があったことを書かせて頂きました。

そのうちの1人の甥っ子さんがU様の家系を引き継いでおり、その方から教えて頂いたのですが、U様のお父様が亡くなった時にU様が相続した畑がありますよとご連絡を頂きました。

 

詳細な地番を教えて頂き、こちらで登記簿を調べてみたところ、確かに50年前くらいに相続したU様名義の畑がありました。

 

その甥っ子さんの話しでは、だいぶ昔にU様からその畑の管理を任せるからといったやり取りはあったものの、U様が消息不明となってしまい、消息不明後も周りの畑に悪影響を与えてしまうことから、甥っ子さんが今までその畑を整備したり、雑草処分などを行ってきたということでした。

念のため、グーグルの航空写真でも確認したところ、確かにU様名義の畑と思われる部分はきれいに整備されていました。

 

U様自身も50年前に相続した畑だったため、その存在を忘れていたのかもしれませんが、私自身も畑の存在は初耳だったため、その話しを聞いた当初は正直困りました。

 

というのも、遺言書上は不動産を売却して寄付するとなっているものの、そもそもこの畑を買ってくれる方が見つかるのか?

仮に見つかったとしても、畑の場合、名義を変えるためには農地法の許可が必要となり、農家以外の方が買主の場合、許可を取ることが難しいと言われているからです。

 

本日はここまでとさせて頂きますが、次回は残された畑の手続きをどのように対応したのかについて話しをさせて頂きます。