前回記事からの続き。👇
「信じられる」演技……
観客から見た「信じられる演技」。
それは同時に、俳優自身が、その状況を「信じている」ということ。
その結果。
台本に書かれた文字……ただの「紙とインク」、つまり「虚構」の世界は。
俳優の手によって「シンジル(信じる)」という命が吹き込まれ、「シンジツ(真実)」となる。
それが、観客が見て「信じられる演技」であり。
だからこそ、観客の心の中には真実の感情が湧き上がる。
目の前で繰り広げられる大冒険は、本当にワクワク、ドキドキするスペクタクルになり。
静かに語られる感動のドラマに、観客は、本当の涙を流すのです。
「真実」とは、今そこに “本当に” あるもののことです。
目の前のパソコンや、スマートフォン。
水の入ったコップ。
新しく買ったペンケース。
花瓶に生けた花。
そして、こちらを見ている、あなたの大好きな人。
でも。
「真実」とは、それだけではありません。
パソコンがフリーズして、イライラしている感情。
大事な書類の上に水がこぼれて、焦っている感情。
新調したペンケースを手に取って、ワクワクする感情。
花瓶の花を見て、ホッとする感情。
あなたの大好きな人と目が合った時の、言葉にできない感情。
この場にカタチはなくても。
記憶や思い出、想像、そして、感情。
あなたが「今、ここ」で感じているものは、確かにそこに存在する「真実」です。
すなわち。
「良い演技=信じられる演技」を実行するには。
物体も、感情も、衝動も、感覚も、全部ひっくるめて。
ただただ、今、ここに “本当に” あるもの「だけ」を頼りにしていれば良いのです。
さて。
アメリカの演技コーチ、サンフォード・マイズナーが積極的に実施した、「レペテーション」という訓練法。
近年では、日本でも多くの演劇学校やスタジオが、この「レペテーション」を取り入れるようになったので、一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は。
これがまさに、「今、ここに "本当に” あるもの」だけにフォーカスしていく訓練なんですね。
▲サンフォード・マイズナーさん。
「良い演技=信じられる演技」を実行するには。
まずは、とにかく、目の前に「実際に(物理的に)存在しているもの」だけに、しっかりフォーカスしていく訓練をします。
つまり、相手役をとにかく「よく見る」。
……とお伝えすると、時々、やたらと「目に力を入れよう」としてしまう方がいらっしゃるのですが。
「よく見る」というのは、「リキんで見る」ということではありません。
「相手のことを、『一瞬たりとも見逃さない』ように見る」ということです。
試しに、相手役の「まばたき」を数えながら、シーンを演じてみてください。
まばたきというのは、一瞬でも見逃すと、数えそびれてしまいますよね?
本当に数えようとすると、どれだけ相手への集中力が必要なのかが、感覚的に分かると思います。
このくらい、相手に対し、余すところなく持続的に集中力を維持していくのです。
そうすると。
「どうやって演じよう」といったプランニングや、役を「表現しよう」という作為に意識が向かなくなり、消えていきます。
つまり、「今、ここには ”ない” もの」に頼らなくなるのです。
ここまでの方法については、過去記事でもご紹介しています👇
ここから、「聞く、感じる、洞察する…」というように、相手役への注意の深さはどんどん増してゆくのですが。
とにかく、最初は「見る」が基本となります。
そうやって、相手役に注意を向け続ける訓練(レペテーションを基にした訓練)を繰り返していると。
やがて、「目の前に、本当にあるもの」だけに、常に注意を向け続けられる集中力が手に入ります。
”演技のウソ” が入り込まなくなってくるんですね。
▲「今ここに ”本当に” あるもの」への注意力に、スキマがあると。
怖〜い、怖〜い、「演技のウソ」というオバケが入りこむ……。
さらに、この先。
ちょっと面白いことが起こってきます。
以前。
僕の演技ワークショップに長く通ってくださっている受講生の方が、こんなことを言っていました。
「レペテーションを使って、相手と本当に『会話』をする訓練を続けていたら。
どういうわけか『立ち稽古』が、急に上手くなった!!」
その受講生いわく。
相手役にフォーカスし続けることを磨いていったら、ある日、相手役以外の「今、そこに “本当に” あるもの」までもが突然、はっきり見えるようになった、と。
目の前の舞台装置や小道具……テーブル、そこにあるノート、ペン、コップに入った水。
そうしたもの全てがクリアに見えるようになり、そして、
演技の中でそれらのものを自由に使えるようになった……。
その通りなんです。
相手役を見続ける「レペテーション」の基礎訓練は。
相手だけにとどまらず、自分の意識を「今、ここにあるもの」すべてへと向けられるようになるという、とても大きな意味合いを持ったものなのです。
さらにさらに。
それは、物質的なものだけではありません……!!
相手役を、よく見る。
相手役に対して、一瞬たりとも見落とすことなく、注意を向け続ける。
そのレペテーションの訓練は、やがて、「今、その瞬間に ”自分の中” から湧き上がったものにも、躊躇なく従っていきなさい」という内容へと進んでいきます。
つまりこれは、「自分の中から ”本当に” 湧き上がったもの=内面的な真実」をキャッチする訓練。
「今、ここに ”本当に” ある衝動や感情」をも利用していく訓練へと向かってゆくのです。
こうして、衝動や感情も「今ここに "本当に” あるもの」を、余すところなく使えるようになる。
心が揺れたのなら、そのバイブレーションに、正直について行く。
たとえそれが、事前にプランニングしたものと違っていても。
予想していた感情と違っていても。
そんなことはどうでもいいから、とにかく、「今ここに ”本当に" あるもの」だけについていく。
こうやって紡ぎ出された演技は。
どこまでも「信じられる」ものになる。
なぜなら。
物質的なことにとどまらず、衝動や感情、感覚、その全てにおいて、「今ここに “本当に” あるもの」だけを使っているからなのですね。
ここに必要なのは、とにかく、徹底した基礎訓練なのです。
(※僕の演技ワークショップ "EQ-LAB" では、レペテーションの訓練を、心を痛めない安全な方法に改良しています。)
▲基礎からしっかり、一段一段積み上げていくこと。
演技の訓練も、これが大事!!
焦ったら、積み木は崩れてしまいます。
現在、Instagramを使って、期間限定での発信を開始しています。
6月下旬に出演する舞台に向け、
▶︎役作りレポート!
▶︎演技の相談室!
という内容で、インスタライブ(ライブ配信)を中心に発信。
リアルタイムで皆さまにレポート&ご質問・ご相談に回答していきたいと思っています。
(画像の投稿もやっていく予定ですが、そのあたりの運用については模索中です…)
閲覧・ご視聴は、僕のInstagramアカウント
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期間は、6月下旬の舞台の千秋楽までの限定です!!
相談室へのご質問、ご相談は、ライブ配信中のコメントで直接投げてくださっても構いませんし。
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(舞台に関係のないご質問・ご相談でも、演技に関することならなんでもOKです!!)
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