このあいだ、日本三大霊場の一つである恐山をお参りした。
比叡山、高野山、に並ぶ大変有名な霊場である。
十月の青森県下北半島は、予想以上に寒かった。
朝、東京駅を出発した際には半袖でちょうどよい天候だった。
ところが、七戸十和田駅で列車から降りると肌寒い。
さらに、バスで移動したさきの恐山は標高約二百メートルだ。
山道の途中で「長寿の水」が湧き出てきている所で休憩をするも、すでにとても寒かった。
駐車場につきバスを降り、山門をくぐる。
夕方のお寺は身にこたえるくらい寒かった。
しかし、お参りをするには悪くない。
かえって心が引き締まり、厳かな気持ちにさせられる。
参道を進むと硫黄のにおいが強くなってきた。
境内に硫黄泉が噴出しているらしい。
確かに、御本尊が安置されている地蔵殿に向かって左手側では岩肌が表れており、煙もたちあがっていた。
足下には、まるで小川のように温泉が流れていた。
本尊を拝した後、さらに境内を奥に進む。
八角堂がみえてきた。
堂内には地蔵尊が奉られている。
衣服も沢山納められていた。
亡き方がお堂に降臨されたときのために置かれているらしい。
少し歩んでいくと、砂浜と湖があらわれた。
浜は「極楽浜」と名付けられている。
湖は「宇曽利山湖」だ。
砂はとても白い。
流紋岩なのだろうか。
湖は、青く澄んでいる。
湖底で硫化水素が噴き出しているため、生き物がほとんど住んでいないらしい。
それくらい酸性が強いのだ。
湖も浜も大変綺麗で美しかった。
まさに極楽である。
しばらく景色を眺めた後、浜辺で静かにお経を称えた。
僭越ながら、恐山の諸仏諸菩薩への恭敬と、恐山に奉られている先亡者と東日本大震災でお亡くなりになられたかたへの御回向の意味を込めた。
姿なき故人さまとも、この聖域においては心の交流を確かに行うことができると信じられている。
至るところでご供養が勤められている。
古から開かれ続けている霊場には、特別な清浄性が感じられる。
とても有り難いお参りをさせていただきました。
地蔵菩薩さまの御経の内に、以下のお経文がございます。
『はやく父母に別れたもの、亡くなってどこにいるのか所在のわからぬものがあった場合、兄弟、姉妹や、親しいもの、あるいは、無縁の人々であっても、お地蔵さんの像を造ったり、描いたりしてそれを礼拝し三七日、二十一日の間、お地蔵さんのみ名を念ずれば、お地蔵さんが、どこにでも姿を現して、その場所を示し、助けて下さり、その気持ちを長く失わなければ、清らかな世界におつれ下さるというものです』
(地蔵菩薩本願経 見聞利益品第十二の抜粋の解説)
【中山書房仏書林 お地蔵さんのお経・地蔵菩薩本願経―講話 太田久紀先生著p194】
ありがとうございました。