「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

東京の寺院に勤めている浄土宗僧侶・凉心です。
仏さまや高僧さまの御教えを、エッセイとともにご紹介しています。
有り難い法話が書けるといいのですが……。
ほとんどが与太話となっています。
それでも、微笑んでもらえたり、なっとくしてもらえたりすると嬉しいです。
どうぞ、ご笑覧くださいませ。
趣味は、山登り、海をながめること、雅楽演奏、テニスです。

先日、夢をみた。

 

冷や汗が止まらなかった。

 

龍笛の音が鳴らなかったのである。

 

お客さまの前で雅楽演奏をしていた。

 

その際、自分が独奏をするパートがあった。

 

高音が続くフレーズだ。

 

しかし、この大事な部分で音を出せなかったのである。

 

完全に失敗をしたわけだ。

 

(うわっ)

 

まもなく目が覚めた。

 

「……助かった」

 

夢だと気がついた。

 

ほんとうに安心した。

 

それから数日後、大法要で行う催しに向けて稽古があった。

 

仕事は坊主である。

 

都内の寺に勤めている。

 

この催しでは、自分に独奏役が与えられていた。

 

「ス~、ビャ~」

 

ところがまともな音が出せなかった。

 

夢が正夢になってしまった。

 

やたらと緊張していた。

 

口の中がカラカラだった。

 

吹く息が不安定で弱々しかった。

 

「しっかり息を入れろ!」

 

先生にお叱りをうける。

 

「フュ~」

 

ますます音が震える。

 

(なさけない……)

 

龍笛は20年近く習っている。

 

それなのに、未だに自信がない。

 

(どうすればいいのだろうか)

 

自分がどうなっているのか自覚できない。

 

何が原因なのかわからない。

 

一人で練習しているならば音が出る。

 

フレーズもそれなりに奏でられる。

 

(あっ。これはダメな感覚だ)

 

ところが、何かの拍子で緊張が始まる。

 

すると、しくじることとなる。

 

聴衆がいるからなのか。

 

先生が目の前に座っているからなのか。

 

「綺麗に演奏したい」

 

「上手に吹きこなしたい」

 

もちろん、これらは長期の目標である。

 

だが、目の前の演奏では、贅沢なことは考えていない。

 

(普通でいい。格好よくなくてもいい)

 

こんなことを自分にいい聞かせている。

 

(とにかく本番までには)

 

絶対に、何らかの対策をみつけておく必要がある。

 

やがて、当日となる。

 

支度を整え、リハーサルを行う。

 

(このまま乗りきれれば……)

 

準備段階では、なんとか音がだせていた。

 

「中止です」

 

直前で主任から指示が出た。

 

15分前になって雨が降ってきた。

 

催しは屋外で披露することになっていたのである。

 

(そうか)

 

一気に身体の力が抜けた。

 

しかし、今回の切迫感を私は記憶しておかなければならない。

 

次の機会の有無にかかわらず、危機感を持って稽古に臨むべきだからだ。

 

 

お釈迦さまの御教えです。

 

『心が沈んでしまってはいけない。またやたらに多くのことを考えてはいけない。腥い臭気なく、こだわることなく、清らかな行いを究極の理想とせよ』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P155】

 

ありがとうございました。