「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

東京の寺院に勤めている浄土宗僧侶・凉心です。
仏さまや高僧さまの御教えを、エッセイとともにご紹介しています。
有り難い法話が書けるといいのですが……。
ほとんどが与太話となっています。
それでも、微笑んでもらえたり、なっとくしてもらえたりすると嬉しいです。
どうぞ、ご笑覧くださいませ。
趣味は、山登り、海をながめること、雅楽演奏、テニスです。

龍笛を習っている。

 

雅楽の楽器の一つである。

 

坊主の仕事に就いてから始めた。

 

法要儀式にて雅楽演奏をすることがある。

 

だから、一人前にお勤めができるよう、勉強することにした。

 

33才から教わっている。

 

龍笛は、横笛である。

 

「新しい笛を吹いてみる?」

 

先日、式部職の先生が声をかけて下さった。

 

3本ならんでいた。

 

笛を求めている生徒さんがいらした。

 

そこで笛師に依頼をしていた。

 

それが4本仕上がってきたそうだ。

 

つまり、その生徒さんはすでにお気に入りを選び終えた格好だ。

 

「とりあえず、順番に息を入れてみなよ」

 

笛を手に取る。

 

ザラザラした感触だ。

 

新しい証拠である。

 

使いこんでいくと、表面の竹が滑らかな手触りへと変化していく。

 

(緊張するな)

 

先生の前である。

 

しかも、商品の楽器である。

 

手を震わせながら構える。

 

「息が入れやすいのは、どの笛?」

 

一通り音を出し終えると、先生から質問がきた。

 

「音色はどれが好き?」

 

矢継ぎ早に問われる。

 

「え~。あ~」

 

こちらは、先生に叱られないような音を出す意識だけで精一杯である。

 

細かいところまで気を向ける余裕はない。

 

「じゃあ、何か曲のさわりを吹いてみなよ」

 

先生と一対一で、加えて初めて触る笛である。

 

(お~。おっ!)

 

足まで震えてきた。

 

「もっと息が入るでしょ」

 

私が演奏を終えると、今度は先生が吹いて下さった。

 

(うは~)

 

全くちがう。

 

とてもいい音である。

 

曲が生きている。

 

これぞ音楽である。

 

「すばらしい笛ですね!」

 

思わず声が出てしまった。

 

名手が吹いてみないと、笛の良し悪しはわからない。

 

私が吹いてみたところで、笛の潜在能力を正確には引き出せない。

 

(それにしても……)

 

先生だって、初めて手にする笛である。

 

私と同じ条件である。

 

それなのに、衝撃的な差がでる。

 

約20年、私も稽古を積んでいる。

 

それなのに素敵な演奏は、未だ披露できない。

 

(センスがないなら、もう……)

 

一瞬そう考えた。

 

しかし、次の瞬間である。

 

(でも、もしかすると来週、自分は急成長するかもしれない)

 

イヤハヤなんとも。

 

まったくもって、馬鹿につける薬はないのである。

 

 

お釈迦さまのお言葉です。

 

『慢心によって「自分は勝れている」と思ってはならない。「自分は劣っている」とか、また「自分は等しい」とか思ってはならない。いろいろの質問をされても、自己を妄想せずにおれ』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P200】

 

ありがとうございました。