4年前から続く「尾骨痛」の整体治療
9診目に完治していた症例の解説です。
患者Sさん=29才-女性-無職の症例
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① Sさんの病歴・・・
患者Sさんは、別件(斜位/右眼の引きつれ・他)で来院されていましたが、4年前から続く尾骨痛もありましたので、本件も併せて治療する事になりました。
② Sさんの診察
・4年前から、特にきっかけも無く尾骨に痛みが生じるようになったそうです。ただ立位ではあまり痛む事は無く、座位で痛みが増強するそうです。また、月経時にも尾骨痛が増強するそうです。
・高校二年生の時に尻もちをついたそうですが、Sさんはそれが尾骨痛の原因だと思っているそうです。しかしレントゲン等で骨折などの異常は無かったそうです。
・血液検査で異常は無く、血圧も正常だそうです。
・Sさんの身長は162cmで、体重は54kgだそうです。
・食欲は普通で、排便はやや便秘気味だそうです。
・月経不順があり、周期は28日から90日だそうです。直近は大体45日周期だそうです。月経期間は7日くらいだそうです。経血量はやや多めだそうですが、塊は無いそうです。
・生理痛は下腹部痛が主で、特に左下腹部が一番強く痛むそうです。 (☚月経時に尾骨痛が増強する事は先述)。
・婦人科医より、多嚢胞性卵巣症候群の指摘を受けているそうです。
・中学生の頃に心因性の頻尿との指摘を受けていて、この頻尿傾向は年々強くなり、短い時では1時間に1~3度のペースで小用にいかれるそうです(例:通勤時、自宅で小用をし、勤務地の最寄り駅で小用する、、、など)。尿量はそれほど多くないそうです。
・排尿痛は無いそうです。
・腹部聴診上、血管雑音は無く、グル音は普通に聴取されました。
・腹部触診上、恥骨の上縁(深部)に著明に緊張と圧痛がありました。また、尾骨と坐骨直腸窩にも著明な緊張と圧痛がありました。
➂ 治療目標と整体治療
⑴ ダグラス窩を解放し、血流を改善して免疫細胞の浸潤を促進し、同部にあると推定される逆流月経血残渣(☚内膜症片?)を除去する
⑵ 坐骨直腸窩を解放し、血流を改善して免疫細胞の浸潤を促進して、、同部にあると推定される炎症残渣or血腫残渣(☚内膜症性or外傷性)を除去する
・ダグラス窩解放テクニック
・子宮底解放テクニック
・坐骨直腸窩解放テクニック
④ 経過と結果・・・
・5診目来院時、
「(4診目までは尾骨痛があったそうですが)尾骨の痛みが6~7/10くらいまで減っていました」と仰っていました。
・7診目来院時、
「(尾骨の痛みは)調子よかったのですが、2~3日前から少し悪化しました。けど、元に戻ってはいません、以前の半分くらいです」と仰っていました。ちなみに7診目の5日前に月経が始まっていたそうです。
・8診目来院時、
「今回は、かなりマシで、(尾骨痛を)意識する事が少なかったです。」と仰っていました。
・9診目来院時、
尾骨痛を気にする事は、ほとんど無かったそうです。そして10診目来院時も、尾骨痛は一度も無かったので、本件の集中治療を終了する事にしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
◆ 尾骨痛の原因は、月経血の逆流が遠因 ?!
・Sさんは、高校二年生の時に尻もちをついた事が、今回の尾骨痛の原因と思っているそうです。しかし今回の尾骨痛発症は高校2年生の尻もち事故から7~8年も年月が経っていて、なおかつその発症様式は、何のキッカケも無く自然に尾骨痛が生じた事から、尻もちの既往歴はあまり関係ないのでは、と考えました。
(ただ、尻もち受傷時に生じていた内出血片-血腫残渣や炎症残渣が残っていて、それが原因している可能性は、あるかもしれません)
・そこで考えた仮説は、やはり婦人科的な病態でした。それは、「恥骨の上縁(深部)に著明に緊張と圧痛がある事」や、「尾骨と坐骨直腸窩にも著明な緊張と圧痛がる事」、さらには「月経時に尾骨痛が増強する事」からも推測されました。
つまり、「月経血は逆流する」という女子の解剖学的事実から推測すると、その逆流月経血(内膜残渣を含む)がダグラス窩や膀胱子宮窩に流れ落ち、さらに同部の底辺をなす腹膜を超えて直腸膣隙から直腸傍窩を廻って直腸後面に達し、そこから骨盤隔膜を浸潤して尾骨部に溜まり、それが尾骨の痛みの原因になっているのでは、と考えました(☚一種の流注膿瘍)。
◆ 逆流した月経血を処理できない、、、そこが治療目標となる
・この様な逆流月経血(内膜残渣を含む)が流れ落ちた走行ルートにあたるのが、「恥骨の上縁(深部)に著明に緊張と圧痛がある事」や「尾骨と坐骨直腸窩にも著明な緊張と圧痛がる事」ですから、この事が同部に圧痛が生じる所以ではないか、と考えます。
また月経時には、腹腔内に残っている逆流月経血内の内膜残渣も溶けて炎症を起こしますから、そこで痛みが生じます。つまりこの事が、「月経時に尾骨痛が増強する事」の原因ではないか、と考えられます。
・ただ一般的には、これらの炎症残渣や血腫などの異物は、免疫細胞によって貪食-処理されるはずですので、痛みは自然消退していくはずです。それが処理されないとすると、考えられる事は、何らかの理由で免疫細胞が浸潤しにくい環境に陥っているのでは、と思われます(例:残渣や血腫の塊が肥大しすぎて貪食されにくいor血流不全などで免疫細胞が浸潤しにくい)。
◆ 整体治療目標…逆流月経血を処理できるよう「局所免疫力」をUPする…
・以上の考察から、上記③「治療目標と整体治療」に掲げる治療目標、
⑴ ダグラス窩を解放し、血流を改善して免疫細胞の浸潤を促進し、同部にあると推定される逆流月経血残渣(☚内膜症片?)を除去する
⑵ 坐骨直腸窩を解放し、血流を改善して免疫細胞の浸潤を促進して、、同部にあると推定される炎症残渣or血腫残渣(☚内膜症性or外傷性)を除去する
を設定し、その為の整体テクニックとして、
・ダグラス窩解放テクニック
・子宮底解放テクニック
・坐骨直腸窩解放テクニック
を施術しました。
◆ 9診目で尾骨痛の解消…免疫力が回復か ?!
・先述した様に、これらの整体テクニックでダグラス窩や坐骨直腸窩を解放して血流を改善する事で、免疫細胞が浸潤しやすい環境を設定し、痛みの原因となる内膜症の残渣などの貪食-処理を促進しようとしたわけです。
・結果的に5診目から、尾骨痛の改善傾向が現れ始め、9診目、10診目とほぼ尾骨痛は解消した事から、上記仮説で概ね妥当であったのでは、と思います。
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