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とらこは一度だけ、自分達夫婦が住む家に来たことがある。
先週、木曜の明け方。
水曜から都内に戻っていたが、自分の夢の中に現れた。
キッチンと部屋の境目を、自分の左側に並んで歩いていた。
その日の昼前、とらこが弱っていると知らされ午後会いに行ったが、
とらこはもっと前から教えてくれてたのかもしれない。
土曜の昼過ぎ、火葬車に来てもらい、とらこの家でとらこの身体とお別れをした。
火がおとされるまで、とらこが好きだった2階のベランダで火葬車を見ていた。
風向きが変わる直前、風が止まると、火葬車から上ってくる空気を感じる。
前日、息絶えたとらこと何時間も一緒にいた。
同じ部屋で一緒に寝た。
言葉をかける時間はたくさんあったのに、頭の中で繰り返す言葉は二つしかない。
「ごめんね、とらこ 大好きだよ、とらこ」
日曜、とらこの家から自宅に戻った。
いつもなら、夫と自宅でしばらく過ごし、一人でとらこの家に戻る。
とらこの家に仮住まいしてからは、都内との行き来が多く、下道を使うことが多かった。
またしばらく下道を走ることもないだろう。
少し感傷に浸りたくて、その日は下道で帰った。
よく一人で泣きながら運転したな・・・ 随分飛ばしたな・・・
桜もすっかり散ってしまい、数日で風景も変わってしまった。
普段の生活に戻っただけなのに、なんだか慣れない。
一緒にちゅくちゅく寝たい・・・