383.密談~イ・シンは偉大な皇帝に成る その邪魔をしないように 君は今 身を退く必要が有る | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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チェギョン目線です


普段だったら絶対取らない知らない番号のその電話に 恐る恐る出た
「ヨボセヨ?」
「妃宮媽媽…愛猫が 死んだと聞きました…どうかお心落としのなきよう お見舞い申し上げます」
この声…
あたしは 息を飲んで受話器を握り直し辺りを見廻して ガラス戸を開けテラスに出た
「手紙は ちゃんと読んだんですか?
無視するからあんなことに…本当に 何と言ったらいいか…」
うそ…こ…この人がJiJiの餌にユリ科の植物を…?
いったいいつの間に どうやって?

「もしもし妃殿下?誤解しないで聞いて欲しい
僕はただ君に手紙を届けただけで 君の思っている事は全部 手紙の差出人の仕組んだこと…でもまあ…どう思われても…仕方がないかな
君はあの手紙の差出人が誰だか もう解っているんだろう?
そして僕が誰かも…気付いているね?」
あたしの頭の中に浮かんでいるその人は 皇太后さまの甥で ユル先輩の従兄
「えと…ソ・ジテさん…?」
「正解」

「猫のことは…本当に 残念に思ってる
言い訳させて貰えるなら…手紙が脅迫状だとは知らなかったんだ
ただ皇太子の警戒が凄くて近付けない君に 手紙を届けて欲しいと頼まれただけだった
東宮殿の猫の死と巫女の買収騒ぎで 君たち皇太子夫妻が追い込まれるまでは 本当にあの方がそんな卑怯な手を使うなんて 思ってなくて…
ただの甥の嫁に宛てた手紙を預かった気でいたんだ」
「あなたから 貰ってません いつの間にか荷物に紛れてた
それって 後ろめたい事が有るからじゃないんですか?」
「そりゃだって 僕が直接渡すのは 危険だろ?
怖~い旦那様に首を跳ねられ兼ねない ははっ」
「なっ!笑い事じゃ無いわ!手紙の内容は深刻な脅迫なんですよ?!」

「ああ 事態はかなり深刻だ
はっきり言うけど 僕は君に離婚を奨める」
「ジ…!?」
ジテさんは あたしに何も言わせず続ける

「君は知ってるか?恐らく聞かされていないだろう?
君が秋に流産する前と後…二度にわたって 王族会は皇太子に側室を持つことを奨めた」
そ…側室…?
「だが皇太子は王族会に 君に子供ができなければ ユルかソンに譲位すると言った
でもそれはとても危険だ
赤ん坊のソンに譲位は有り得ないだろ?ソン派の王族の思うがままになってしまう
だが少し前ならいざ知らず 今のユルは皇太子に相応しくない」
ユ…ユル先輩と仲良しのジテさんが なぜそんな事を?

「知らずとは言え 恵政殿皇太后からのダークな手紙を預かった事実は拭えない
君に信じて貰えなくても仕方が無い
しかもずっとユルの傍に居て義誠大君派で有名な僕が 掌を返したようにこんなことを言うなんて 混乱するだろうね
だけど僕は今 誰の遣いでもなく自らの意志で 国益を見据えて君に働きかけているんだ
イ・シンは今の皇帝の非じゃない 偉大な皇帝に成る その邪魔をしないように 君は今 身を退く必要が有る」

こ…国益?…身を退く? どういう事?

「義誠大君派といっても 僕はユルを擁立する事を望む義誠大君派とは考えを異にしてる
確かに僕は 叔母である皇太后さまの遣いに応じたし 義誠大君派の王族達にも気に入られてる
だってそれは 彼らの暴走を見張り いつかユルの思いを遂げる為に 息を潜めてそうする必要が有るからだ
僕は本当の意味でユルの意志に添うユル派だ
ユルは 皇位に就く事など本当に望んでいない 自分よりもイ・シンこそが皇帝に相応しいのだと ずっと聞かされてきたし 僕自身 その思いをやっと理解したところだった」

じゃあなんで皇太后さまの悪意満載の手紙をあたしに?本当に内容は知らなかったっていうの?
あたしの頭はすっかり混乱して 言葉が出て来ない

「僕は ワケあって自分の叔母でもある恵政殿皇太后さまを調べるようユルに頼まれて…彼女の恐ろしさを知ったんだ
あの女(ヒト)はチャンスが巡ってきたら一気に皇太子を潰しにかかる為に 常に方々の王族の弱みを握っている
それは 義誠大君派に名を連ねている王族達だけでなく皇太子派も然りだ
王族会を丸ごと牛耳れるほどに 秘密裏に着々とね
ユルが皇太子になれば 恵政殿皇太后の天下だ
彼女はその愛を得られなかった夫 孝烈(ヒョヨル)殿下と 彼と親交の深い王族達でその昔立てた計画を実行するために動いているらしい
だが…逆に言えばあの女(ヒト)は敵を作り過ぎた…
彼女の側に居る者はみな 彼女に弱みを握られ彼女を恐れている
それが崩れたら いつ何が起こるか…」

ジテさんは更に 皇太后さまの知られざる過去にはシンくんとあたしを決して許せない理由が有る… ご心痛も その願いも承知の上で それでも自分は過去より未来を見据えていると言った
シンくんの敵はユル先輩や皇太后さまだけでは無いって事も 説明してくれて…少しでも早くシンくんが皇帝に即位してこそ 韓国の未来は守られる とも言った

「しかも 状況は良くない方向に変わりつつある
妃を迎えたユルの中で 何が変わったのか…
今やユルは 大君妃となったキム・ミルの存在によって 少しずつ恵政殿皇太后に寄り添い始めてる」
「うそよ!ミルさんはそんな…」
「そんな事無い?ミルとミニョンを一ミリも疑ったこと ホントに無い?」
「それは…」
む 無理だよ…シンくんも最初からずっと疑ってた
確かに国婚後 ユル先輩とは少し距離を感じる でも…ミルが…?

「ユルはミルを自分で選んだと信じ込まされてるが…
本当はそうじゃない ミルは実は皇太后さまの手駒のうちのひとつだ」
「うそ!?」
「従姉だから信じたいけれど…ジュヨンも…いつか皇太子妃になるものと思って 嘗て皇太子妃であった叔母のソ・ファヨンに会いに イギリスへ足繁く通っていたし…
そういうの 簡単に変わらないだろ?
おまけにミルの従姉のミニョンまでもが皇太后の駒だ…女達は危険すぎる」

王族の令嬢たちの中でも 敵だとは思えない人たちの名前が挙がる
皇太后さまがあたしの妊娠を知ったのも… やっぱりジュヨンさんが?
信じたくて仲良くしてきたけど 信じきれなくてモヤモヤしてきた人達
きっとそれは向こうも同じなんだと思う あたしの事 認めたくない気持ちは簡単には拭えないのかも…

「僕は女達とは違う 法を学んでいるし 先見の明には自信が有る
この国の為には皇太子はユルではなく イ・シンでなくてはならないし 現皇帝も…早く退いて彼が皇位を継ぐべきだ
陛下が 自分との過去が有った為に異国へ送られるのを黙って見過ごすことしか出来なかった皇太后さまに情が残って 今も些細な事で揺らぐ場面が有る事は ユルから聞いてる」
そんな…
「王族達が皇太后さまを煽ってユルを帝位に祀り上げたら 新しい皇室と王族はたちまち力を持ち 国会主義的立憲君主制度(国会が優位の立憲君主制度)は崩れ 君主主義的立憲君主制度(皇帝が優位の立憲君主制度)に… もっと進めば 民主主義とは名ばかりで 国民が選んだ国会議員は力を失い 国会は金と権力を持った資産家たちに送り込まれた王族達で形成され
君主と王族達ばかりが力を持つ半独裁主義的国家にならないとも言えない
格差はどんどん広がり 経済は大きく揺らぐだろう その不満を外へ向けるために戦争を目論む

僕は正直… 北や中国 日本との関係までも危惧している」
「うそ…」
「こんな嘘ついてなんになる?ユルを皇帝に押し上げるために準備されたストーリーは容易ではないにせよ順調に進んでいる
君の身に危険が及ぶのも遠くない」

危険…?
命ならもう狙われたわ?タイで…
そしてあれがただの脅しじゃないってことを強調するように JiJiを見せしめに…

「ユルには止められない だがイ・シンが覚醒すればきっと止められると 俺は信じてる」
覚醒すれば…?
「心当たりが無いか?春の蛙騒ぎでも ユルのバチェラーパーティーや 従姉兄弟達で一緒に飲みに行ったときも… それに あれもそうなんじゃないのか?酔って友達を殴って騒ぎを起こしただろう?
いつも君が絡むと過敏になる皇太子を見て思ってた
側室を持てと言われた時も 天が望むのならユルに譲位したって構わないなんて…
君の存在はイ・シンの足枷になってる ってね…」

元々皇太子位はユル先輩の物で 自分の座するべき席ではなかったのだから いつか返す時が来ればと 譲位する考えを仄めかした事は 実際有る
孤独な氷の皇子だったはずのシンくんは 今やあたしに心を許し過ぎてる
自棄になって手放しでもしたら…

「このまま皇太后さまの手の者によって 君にもしもの事が有ったら イ・シンはおかしくなる
皇太后さまとの泥試合を 国民に全部明かしてしまうかもしれない
そうなったら皇室はお仕舞だ

でも君が自ら自分の元を離れたとなると別だ
ユルと違ってイ・シンには幼い頃から培ったモノが全部染みついてる
陛下に仕える忠誠心は絶対的な物だ
たとえどんなに君を愛していようと 君が自ら去ったのなら
何もかも投げ出したりしないのがイ・シンだ」
ジテさん…それ 多分当たってるわ?
あたしにとっては辛い事だけど シンくんの事 そこまで評価してくれているのね

「君の身を守る為にも イ・シンの築くこの国の未来を守る為にも
出て行けと忠告されてる間に出て行けば… 君が負けても… イ・シンひとりなら勝てる」
刺されたみたいに胸が痛かった でも…
「本当に…そう…思いますか?」
「…ああ…」

「少し 考えさせてください」
「勿論充分考えて後悔しない選択をするんだ でも 時間はあまりないよ?
離婚するなら 二度目の結婚記念日がくる前がいい じゃないと国民感情を無駄にざわつかせる事になる
辛くても…個人的な感情に囚われず 真摯に向き合うんだ」

「もう一度言うけど 僕は 叔母である恵政殿皇太后さまに敬意を払ってはいるが 決して同じ方向を向いてるわけじゃ無い
君が協力してくれるなら イ・シンを支えると言っていた元のユルを 取り戻して見せる
俄かには信じられないだろうね でも 時間が無いんだ
君とイ・シンとユルは勿論 国民にとって最良の選択をしてくれると信じてる
また電話するよ」

通話の切れた携帯電話を漫然と見つめてたら 急にチェ尚宮お姉さんに声を掛けられてドキリとした
「妃宮さま…殿下に ご懐妊の事実をお話しなさいましたか?」
「え?あ~…ごめんなさい シンくん落ち込んでるし 今は話せる雰囲気じゃ無くて…
あ でも!自分で話すから もう少し待って?お願いっ」
お姉さんは…勘が鋭いから…あたしの様子がおかしいと気付いてるみたい 誘導尋問されちゃう!
テラスからパビリオンに入ってそのまま東宮妃の部屋の化粧室に逃げ込んだ

色んなことがぐるぐる頭の中を回って お裁縫箱の中に放り込んだ糸みたいに こんがらがっちゃった
落ち着くのよシン・チェギョン 一回整理しよう?

ジテさんはホントに手紙の内容を知らなかったのかな?
あたしの身を守る為にも…とは言ったけど 赤ちゃんの事には触れなかったから…何を脅迫されてるのかまでは知らないのかも…
シンくんが巫女を買収した事がバレる前から 王族会から ユル先輩に譲位するよう迫られてるのは あたしに子供が出来ないからで…
皇太后さまはあたしが妊娠したから命を狙ってるわけで…
懐妊の事実を明かせば 譲位はしなくても良くなる?
でももしもまた流産したら 今度こそあたしはお払い箱で… シンくんは”継妃を娶れ!”とか言われちゃうのよね… そうなると シンくんは絶対自分も譲位すると言い出すだろうし…
え?そんな自信があるのかって?
え…ちょ…ちょっとだけよ…
お母さまとおばあさまの陛下たちは おそらく 側室を召されたご経験が…
本当だか知らないけど シンくんはそれを拒んだって…ジテさん言ってたし…

それにユル先輩やミルも ジュヨンさんだって言ってたもん!
あたしの事となるとあのシンくんがムキになるって…
確かに ミニョンさんの蛙事件とかフランスでのテオさんのナンパ事件もそうだったよね…
インくんを殴ったのはあたしの夜更かしが続いて 不機嫌だったせいで…
シンくんのカリスマがあたしの所為で薄れたなんて…
わ~// あたしにそんな魅力がある?うふっ

いや待て… だからどうすんのよ!
ジテさんが言うようにあたしも ユル先輩自身はとってもいい人だけど… 怨と欲に憑りつかれてる恵政殿皇太后さまを背負ったユル先輩が この国の皇帝になるのは…
時代劇の見過ぎって言われちゃうかもしんないけど… ぶるるっ…アンドェ/良くないわ
シンくんは 今はまだ陛下の臣下だけど 色々な事が一方からではなく しっかり見えてると思う
これまで皇帝に成る為に訓育を積んできたし 法を学んでる
ユル先輩だって皇子だから美術に造詣が深いだけではないにせよ… シンくんの比ではない
どちらが皇太子に相応しいか どちらが皇帝に相応しいかは一目瞭然
あたしが自分から身を退いたとなれば確かに皇帝の臣下として命に従うであろう事は…あたしとの結婚で立証済みでしょ?

でもだからって こんなに好きなのに… 離婚するしかないの…?
あたしが 無事に出産するまで身を隠す…とかできない?
とにかく あたしがいくら考えても名案は浮かばないし…
巫女を買収した不祥事騒ぎで凹んでるシンくんには相談できる筈も無かった


今日もありがとうございますカムサハムニダ
続きは2/3(金)予定でしたが 1/30(月)am8:18:18にUPします→384.密談Ⅱ~すべてうまくいけば 君は後からでも東宮殿に戻ることは可能だ

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