ゴジラを観て4ハウスについて考えた話

先日ゴジラを観に行って、家族とは何だろうか、ということを考えた。

もちろん親子とか、何とか、そういうまとまりを「家族」と称するのは分かっているにしても、映画の中で出てきた家族はそうではなかった。しかし、確実に家族であった。

出てきた役の名前を憶えていないので俳優の名前で代用すると、神木隆之介が浜辺美波と子供と3人暮らしをしているところへ、職場の仲間が遊びに来てご飯をごちそうになる。そんな中で佐々木蔵之介だったか吉岡秀隆だったかが「奥さんが…」「人妻が…」と話すので、浜辺美波はうっかり「やめてくださいよ、奥さんなんかじゃないんですから」と言ってしまう。もちろん場は凍り付くのだが、戦後の混乱の中、赤ん坊を抱っこしている浜辺が神木のところへ居候する形で落ち着いてしまい、そしてついでに言うならその赤ん坊も浜辺の子供ではない、というあらすじである。

ついでに言うと隣に安藤サクラが住んでいて、彼女は子供を3人、空襲で亡くした。神木にはさんざん嫌味を言いながらも赤ん坊は放っておけないので、貴重な白米を渡したり面倒を見たり、何くれとなく世話を焼いてくれるのである。

隣の安藤サクラは別としても、神木と浜辺、それに赤ん坊の関係性は今ではなかなか築けるものではない。

その必要がないからである。

それでは、この神木、浜辺、赤ん坊の3人は家族ではないのだろうか？

しかし周りから見ると明らかに家族である。神木は稼いだ金を浜辺に渡して赤ん坊を育てるし、浜辺も当然の顔をしてそこにいる。

だがこの職場の仲間の一件があって、浜辺が自立を目指して働くことにした。「いつまでもここにいるわけにはいかないでしょう」と言う浜辺に頭を垂れて「それはそうだけど…」と神木は言いよどむのだが、特に結婚しているわけでもなし、元は迷惑だと思っていたのだから止める理由もない。表向きは。

家族というのは占星術で言うと4ハウスである。

そして4ハウスは本人の寝る場所ということでもあるから、同じ家に寝泊まりしているこの人たちは家族と言っても差し支えないのかもしれない。

講座では4ハウスを「最小のコミュニティ」と言っている。もちろん家族のことを指しているのだが、それだけを言いたいのではないからである。

だからこの神木＆浜辺は4ハウス的役割をお互いになしていて、無論赤ん坊にとってもそういうことになる。

そしてゴジラが襲来して、どういうわけだか神木が銀座で働いている浜辺を見つけ出し(この辺はまぁ…人口が少なかったということで…)逃げるのだが、まったくの他人でただの居候ならそこまでする必要はないだろう。もともと迷惑だと思っていたのだし。しかし襲来の知らせを聞いて真っ先に神木は浜辺を案じ、勤め先の近くまで行ったのである。

安藤サクラはとにかく嫌味を言いまくる、世話焼きのおばさん(と言っては失礼か)役だった。

現代においてこんなに嫌味を言う人もなかなかいないのではないかと思うほどの嫌味っぷりである。これは、その当時の日本人が今よりももっと積極的で、我慢することをある意味でしなくて、どこかで鬱憤を晴らして、だからこそエネルギッシュでいられたのではないかと、時代的なものも感じた。

今はとにかく人に迷惑をかけないように、めちゃくちゃなことはしないように、我慢して、鬱憤を晴らせず、である日突然爆発したりなんかする。

その結果が、今の婚姻率の低さなのかもしれない。

婚姻は家族の基本であるから、今の世の中は4ハウスを1人1人が独自に持っていると考えることもできる。

その1人1人は必ず誰か保護者のもとで育ってはいるのだが、それを継承していくということが少なくなっている。結婚したからと言って子供を作るとは限らないし、そもそも結婚制度も疑いの声が出てきているから4ハウスのあり方が問われているのかもしれない。

物事を抽出するのは5ハウスである。

だから、どこから数えても5ハウス目というのは元のハウスを抽出したものと考える。

5ハウスの自己表現は1ハウスの自我を抽出したものだし、6ハウスの労働は2ハウスのリソースを抽出したものである。

では、8ハウスとして抽出されたベースの4ハウスが希薄になっている今、何を8ハウスとすれば良いのか。

神木と浜辺のような絆のある他人と冷戦状態の続く夫婦なら、どちらが「家族」と言えるのだろうか。

そんなことを考えさせられた映画だった。