★今日のベビメタ
本日11月29日は、2013年、台湾のTV「完全櫻樂」に出演し、二週連続でバラエティに挑戦。YUI、MOAが巨大なウシガエルを持って、逃げ回る女性司会者愛紗とSU-を追いかけた日DEATH。
アメリカのロックフェスといえば、オールドファンには1969年のウッドストックが思い浮かぶが、近年では、カリフォルニア州インディオのコロラド砂漠の一角で行われるコーチェラ・フェスティバル、シカゴで行われるロラパルーザ・フェスティバル、テネシー州マンチェスターで行われるボナルー・フェスティバルが、アメリカ三大フェスティバルと言われる。
1999年にスタートしたコーチェラは正式名称をCoachella Valley Music and Arts Festivalといい、例年4月中旬の金・土・日に開催される。ヘッドライナーは、ロックに限らずヒップホップ/ダンス系の大物アーティストが多く、最近ではエミネム、ビヨンセ、レディ・ガガ、ケンドリック・ラマーといったところが務めている。だが、ブリティッシュロックバンドも多く出演しており、レッチリやガンズ、AC/DCがヘッドライナーになったこともある。
日本人では、2013年に東京スカパラダイスオーケストラがメインステージに出演したほか、今年2018年にはX JAPANが4月14日と21日に出演し、セカンドステージMOJAVE STAGEのトリを務めた。
ロラパルーザ(Lollapalooza)は、1991年、ジェーンズ・アディクションのボーカル、ペリー・ファレルが、バンドの活動休止中に、お気に入りのバンドと全米を回る巡回フェスとしてスタートした。パール・ジャム、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、レッチリなど、グランジ/オルタナティブ系のバンドを中心にしたフェスだったため、1996年にメタリカが出演した時は拒否感を示すファンもいたという。1997年にいったん終了し、2003年にリスタート。シカゴ中心地のグラントパークで開催され、メインストリームのアーティストが出演するようになった。今年のヘッドライナーは、ザ・ウィークエンド、ブルーノ・マーズ、ジャックホワイト、アークティックモンキーズといったところ。
日本人では、X-Japanが2010年に出演している。
ボナルー・フェスティバル(Bonnaroo Music and Arts Festival)は、2002年にブルーグラスなど、アメリカのルーツ・ミュージックの祭典として始まったが、今ではヒップホップからロックまで幅広いアーティストが出演するフェスとなっている。近年のヘッドライナーはミューズ、エミネム、U2、レッチリ、Laudeといったところ。
日本人では東京スカパラダイスオーケストラが2004年に出演している。
BABYMETALは、まだこれら三大フェスには出演していない。
ぼくは、BABYMETALのアメリカ攻略の最大のポイントは、この三大フェス出演だと考えている。
ロックフェスに来るアメリカ人は、ジャンルなど細かく気にしない。
ジャンルやサブジャンルを気にするのは人種的偏見と同じこと。「先入観にとらわれずに目の前にいる人を見ろ」という価値観は、歴史の中で培われたアメリカ人の正義である。
無名であっても、目の前で演奏しているアーティスト/バンドと、その楽曲が気に入るか気に入らないか、ただそれだけ。そこにアメリカでのフェス出演の醍醐味がある。
BABYMETALが、2014年にレディ・ガガの前座で西海岸、秋にはNYを、2015年はメキシコから中西部を、2016年は東海岸~中西部と西海岸を、2017年にはレッチリと東海岸~フロリダを、KORNと西海岸を、2018年は東海岸から中西部、南部を攻略してきたことを思い出してほしい。
BABYMETALの目標は、「典型的なメタルバンド」になることではない。
他のバンドだって実はそうだ。「典型的なメタルバンド」になろうと思ってバンドを組んだのではなく、自分らしさを表現するために音楽スタイルが決まるのだ。
BABYMETALの目標は、「アイドルとメタルの融合」、Only Oneの「BABYMETAL」というジャンルを作ることであり、言い換えればメタル的な表現をしながら、観客の心を動かす=集客力のあるメインストリームアーティストになることである。だから、前座を務めたのは、レディ・ガガ、レッチリ、メタリカ、ガンズ、KORN、ジューダス・プリーストまで幅広いのだ。ウルトラジャパンでは、EDMの王様スクリレックスとも共演している。
これらのアーティストの前座を務め、北米(メキシコ、カナダを含む)の主要地域で単独公演を行い、3大フェス以外のロックフェスで集客力を示してきたのだから、出演資格は十分にあるはずだ。
サマソニ2013やLOUDPARK13は、日本のロックファンに認知されることが目標だった。
ソニスフィア2014での欧米デビューは、世界のメタルバンドの仲間入りをすることだった。
これに対して、アメリカでのロックフェス出演は、メタル/ロックバンドでありつつも、メタリカやガンズやレッチリのように、メインストリームに食い込むアーティストになるための「修行」なのだと思う。
●HEAVY MONTREAL 2014年
2014年8月9日土曜日、レディ・ガガの西海岸ツアー帯同が8月6日に終了した後、BABYMETALは、カナダ・モントリオールで行われたHEAVY MONTREALに出演した。2008年に始まったこのフェスは、ソニスフィアと同じく、ヘヴィメタル、ハードロック専門のフェスである。土曜日のメインステージのヘッドライナーはMetallicaとAnthrax。BABYMETALは、The Offspringがヘッドライナーのセカンドステージの一番手に出演した。8月10日日曜日のメインステージのヘッドライナーはSlayer、セカンドステージのヘッドライナーはLamb of Godだった。
セットリストは、1.「BABYMETAL DEATH」、2.「ギミチョコ!!」、3.「Catch me if you can」、4.「メギツネ」、5.「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の5曲で、ソニスフィアと同じ。神バンドは、ギター:大村神/Leda神、ベース:BOH神、ドラムス:前田遊野神。
「メギツネ」で、SU-の投げたキツネ面がMOAに当たってしまうというハプニングが起こった。
だが、セトリからわかるように、HEAVY MONTREAL 2014の出演は、ソニスフィア同様、「世界のメタルバンド」の仲間入りをすることにあり、「メタル界」からメインストリームへという遠大な構想の第一歩だったことがわかる。
●ROCK ON THE RANGE 2015年、2018年/CAROLINA REBELLION 2016年/NOTHERN INVASION 2016年
2015年5月16日、メキシコシティ、トロント、シカゴと単独公演を終えたBABYMETALは、シカゴのお隣、オハイオ州コロンバスで行われたROCK ON THE RANGEに出演した。
2002年に始まったこのフェスは、クラシックロックを中心としたラインナップで、2012年以降12万人~14万人を集めるビッグイベントに成長した。
2015年のヘッドライナーは、Monster Energy メインステージがSlipknotとMarilyn Manson(金曜日)、Judas Priest(土曜日)、Linkin Park(日曜日)だった。BABYMETALが出演したのはセカンドステージのErnie Ballステージで、7バンド中5番目の出番。BABYMETALの2つ前はSabatonだった。ご縁ですな。
セットリストは、1.「Catch me if you can」、2.「メギツネ」、3.「Road of Resistance」、4.「ギミチョコ!!」、5.「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の5曲。神バンドは、ギター:藤岡神、大村神、ベース:BOH神、ドラムス:青山神。
エクストリームな「BMD」を外し、わかりやすいパワーメタルの「ROR」を入れた。ここにアメリカ市場でのメインストリーム志向が現れている。
「ギミチョコ!!」MVの視聴件数は当時すでに3000万回を超えており、知名度はアメリカでも上昇中だった。BABYMETALの出番に集まった観客は推定2万人で、セカンドステージの標準をはるかに超えていた。
メインステージはアメフト用スタジアムだったのだが、出演バンドのセッティングが遅れ、客席最上段から観客が鈴なりになって遠くからBABYMETALのステージを観ていたのも印象的だった。
翌年の2016年も、ROCK ON THE RANGEに出演する可能性があった。このフェスは例年5月中旬に行われており、BABYMETALは5月2日から14日までアメリカに滞在していた。特に5月11日~13日は、すぐそばのデトロイト、シカゴにいたのだ。
だが、この年のROCK ON THE RANGEは5月20日~22日の開催で、BABYMETALは出演できなかった。もし「Metal Resistance」がビルボード200にランクインし、「The Late Show with Stephen Colbert」にも出演したこの年、ROCK ON THE RANGEに出演していたら、前年より確実にいいポジションになっていたはずだ。
ROCK ON THE RANGEの代わりに、2016年に出演したアメリカのフェスは、CAROLINA REBELLION(ノースカロライナ州シャーロット、5月8日)と、NOTHERN INVASION(ウィスコンシン州サマーセット、5月14日)だった。どちらもロックフェスとしては小規模だったが、とてつもない盛り上がりだった。ぼくはCAROLINA REBELLIONを現地で見たが、SU-が「♪Woo…Woo…」とハミングし、「Everybody Jump!」とつなぐ「KARATE」の煽り、現地のファンが熱狂的に叫ぶ様子はちょっとびっくりだった。
三年後の今年2018年5月20日。
BABYMETALは再び、ROCK ON THE RANGEに出演した。
ご存知のとおり、YUIMETALが欠場し、SU-METAL、MOAMETALにMINAKO神、MINAMI神のダンスの女神2人が加わったDark Side仕様だったが、日曜日のセカンドステージZippo Encore Stageのトリだった。やはりBABYMETALの格は上がっていた。
セトリは、1.「IN THE NAME OF」、2.「Distortion」、3.「TATTOO」、4.「メギツネ」、5.「ギミチョコ!!」、6.「KARATE」、7.「Road of Resistance」の7曲。
2015年と同じなのは3曲だけ。あの真っ黒な鎧+ヘッドギアのコスチュームやメイクも含め、まったく印象の違うアーティストになった。「BMD」や「CMIYC」のソロがない分、少女のKawaiさと神バンドの演奏力のギャップで観客を圧倒するというセトリではない。
これをアメリカの観客が気に入るかどうか。試金石だった。
2015年と同じく、ぎゅうぎゅう詰めになった観客は、やはりBABYMETALのパフォーマンスに熱狂し、巨大なサークルモッシュやクラウドサーフが発生した。
ネット配信された公式動画を見て、ぼくは確信した。大丈夫。藤岡神の逝去、YUIMETAL欠場でもベビメタはベビメタ。あのエネルギーがあれば、アメリカ市場で「メタル界」からメインストリームに食い込む可能性はまだ残っている。
なお、ROCK ON THE RANGEは2018年で終了し、来年からSONIC TEMPLE ART + MUSIC FESTIVALと名前を変えるとのこと。すでにラインナップが発表されており、Foo Fighters、System of a Down、Disturbed、Bring me the Horizon、The Prodigyなどが出演するが、そこにBABYMETALの名前はまだない。
(つづく)