★今日のベビメタ
本日5月2日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。
<2016年(2)>
●2016年5月11日:SU-METAL「Push it Back and Sit down!」
BABYMETAL WORLD TOUR 2016 デトロイト公演@The Filmore
<セットリスト 13曲>
1. BABYMETAL DEATH
2. いいね!
3. あわ玉フィーバー
4. GJ!
5. Amore-蒼星-
6. 神バンドソロ~Catch Me If You Can
7. META!メタ太郎
8. イジメ、ダメ、ゼッタイ
9. KARATE
10. メギツネ
11. ギミチョコ!
12. THE ONE English Ver.
13. Road of Resistance
神バンド:藤岡幹大(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)
Carolina Rebellionを終えたBABYMETALは、いったん東部のシルバースプリングに戻り、そのあと、デトロイト~シカゴ~ウィスコンシンのNorthern Invasionといったアメリカ中西部での公演を繰り広げた。
デトロイトは、20世紀初頭に自動車産業で栄えた町だが、1990年代からはコストパフォーマンスの高い日本を含む外国車の台頭によって衰退した。KISSの「デトロイトロックシティ」に歌われたように、何度も再開発が繰り返されたが、1960年代に造られたレンガ外壁の古いビルがいたるところに残っている。
ぼくは2016年には行けなかったが、2017年にトランジットでデトロイトに降り、わざわざThe Filmoreを見に行った。
The Filmoreは、町の中心地からやや外れた国道沿いにある古い映画館のような造り。
ここで、2016年のBABYMETALは、歴史上類を見ないパフォーマンスを行った。
セトリが進み、「ギミチョコ」になったとき、YUIとMOAが、チョコレートバーの「Snickers」と「Three Muskets」が描かれたボードをもって上手・下手に並んだ。
SU-は、観客に向かって「Push it back, Push it back!Sit down!」(下がって、下がって!座りなさい!)と叫び、スタンディングピットの観客を座らせた。
続いて「On the count of three, Jump up with us. Are you OK?」(3つ数えたらジャンプするのよ、わかった?)と説明し、「Are you ready?」を繰り返して盛り上げた後、「1,2,3, Jump!」と一斉ジャンプをさせた。
これはもちろん、ロックバンドがよくやる観客参加アクションの定番ではあるが、これを日本のBABYMETALが「ギミチョコ!」でやることには、特別な意味が生じる。
1945年、日本は広島・長崎に原爆を落とされてポツダム宣言を受け入れ、敗戦した。
日本は米軍を中心とした連合国に占領され、焼け跡になった各地に米兵が進駐した。米兵は人心収攬のひとつとして、餓えた子どもたちに、街頭でチョコレートやチューインガムを配布した。
日本の子どもたちは、ジープに乗った米兵が来ると、「ギブミーチョコレート!」「ギブミーチューインガム!」と叫んで群がった。
米兵は、押し寄せる子どもたちを「Push it back, Push it back!Sit down!」と言って落ち着かせ、「1,2,3!」でチョコレートやチューインガムをジープの上からばらまいた。
2016年、BABYMETALがデトロイト公演で始めたこの観客参加アクションは、まさにその光景の再現ではなかったか。
こんなことを想起するのは、焼け跡の光景をなんとなく知っているぼくら世代の日本人くらいなもので、アメリカ人ファンはこの「進駐軍煽り」を楽しみながらも、チョコレート会社とタイアップしたのではないかなどと書き込んでいた。
だが、ぼくには、広島出身のSU-が、「ギミチョコ!」という曲で、アメリカのど真ん中でこれをやったことは、音楽によって、かつて敵国だった日米両国のわだかまりを「浄化」しているように見えた。
アメリカに進出した日本人アーティストで、BABYMETALが唯一、それができる地位にたどり着いたのだともいえる。
ちなみにこの日3曲目に披露された新曲「あわ玉フィーバー」は、チューインガムが題材である。
「進駐軍煽り」は、このあとシカゴ公演、Northern Invasionでも行われたが、2016年後半の西海岸ツアーでは行われなかった。
●2016年6月10日:Download UK「メギツネ」
Download UK @イギリス・レスターシャー州Donington Park
<セットリスト 6曲>
1. BABYMETAL DEATH
2. ギミチョコ!
3. 神バンドソロ~Catch Me If You Can
4. メギツネ
5. KARATE
6. Road of Resistance
神バンド:藤岡幹大(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)
2015年、BABYMETALはKerrang!Awards、METAL HAMMER Golden Gods Awards授賞式の合間にロンドンから2時間ほど北のレスターシャー州ドニントンパークに赴き、DownloadフェスティバルのDragon Forceのステージに飛び入り参加した。その時はメインステージではなく、サードステージだったから、ラインナップ出演者としてメインステージに登場するのは、デビュー3年目の新人バンドとしては、奇跡的な「二階級特進」のような扱いである。
実はこの年、イギリスでは一人の日本人が奇跡を巻き起こしていた。
レスターシャー州の州都を本拠地とするプレミアリーグの万年最下位チーム、レスターFCに加入した岡崎慎司である。
2015-2016シーズン、レスターが優勝する確率は5000分の1だった。ところが岡崎が加入してから、レスターはあれよあれよと勝ち進み、ついに優勝してしまった。
レスターFCのロゴマークは「キツネ」であり、ファンのことをFOXと呼ぶ。
そのレスターシャー州ドニントンで行われるDownloadフェスティバルに、BABYMETALが出ないわけがない。それもドニントン城を遠く望む、広大な丘の上に設置されたメインステージに。
当日、BABYMETALの出番直前に、土砂降りの雨が降った。
ヘッドライナーが出演するときには、数万人が一同に集まるメインステージ前の丘は、芝草がまばらに生えているだけであり、雨が降れば「泥田」のようになる。
2018年にぼくがDownloadに参加したとき、イギリス人は椅子を持ち込んだり、地面に座り込んだりせず、一日中立ったままでも平気で見ているのに驚いた。
だから、少しくらいの雨なら問題はないのだが、2016年の雨は文字通りの豪雨だった。
このため、BABYMETALの開演は遅れた。
それでもメインステージ前に詰めかけた数万人の観客は微動だにせず、BABYMETALを待ち続けた。
機材のチェックも含めて、約1時間後に始まったBABYMETALのステージは伝説的なものになった。
この雨はレスターに奇跡の優勝をもたらしたキツネ様の魔力によるものであり、「狐の嫁入り」という言葉通り、BABYMETALのセットが始まると、雨は嘘のように上がった。
だが、地面は泥田そのものであり、セットリスト4曲目「メギツネ」が始まると、その中を数万人が「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊り狂った。
この場にいたというぼくのイギリス人の友だちRichard氏は、跳ね上がる泥で髪の毛から靴下の中まで泥だらけになったと笑っていた。困難や試練は、後で振り返れば強烈な思い出になる。
2016年のDownload UKは、過酷だっただけに、BABYMETAL史に燦然と輝く名場面のひとつである。
●2016年7月18日:APMAsロブ・ハルフォード「ここにメタルの未来がある」
Alternative Press Music Awards@オハイオ州コロンバスSchottenstein Center
<セットリスト 3曲>
1. KARATE
2. Painkiller(with ロブ・ハルフォード)
3. Breaking the Law(with ロブ・ハルフォード)
神バンド:藤岡幹大(下手G)、YUIMETAL(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)、MOAMETAL(上手G)
『Alternative Press』は、オルタナティブ・ロックをメインとしたアメリカの音楽・文化誌であり、音楽市場ではRolling Stone誌やBillboard誌に次ぐ、“メジャー”な存在である。
2016年、BABYMETALはそのAwardsにノミネートされたが、選出はされなかった。
しかし、おそらくアメリカのプロモーション会社の力で、授賞式でのデモ演奏のチャンスを得た。
しかも、メタルゴッド=ロブ・ハルフォード(Judas Priest)とのコラボ付きで、Amazon Musicにより全世界に配信された。
オープニング、BABYMETALだけの「KARATE」が生演奏され、SU-のハミングからの「Everybody、Jump!」が響き渡った。
そして、「メタルゴッドとフォックスゴッドの出会いは偶然ではない」という「紙芝居」が流れ、赤い革ジャンを着た大御所、ロブ・ハルフォードが登場した。
Judas Priestの名曲「Painkiller」をロブとSU-が熱唱するという、ありえないシーンが現出した。
さらに、SU-が「Today’s Special Guitarists, YUIMETAL and MOAMETAL!」と呼び込むと、スチューデントサイズのESP製Vギターを持った2人が登場。「Breaking the Law」のリフを弾き始めた。
もちろん、実際には音が入っていなかったとか、形だけだったという声もあるが、YUIが藤岡幹大と、MOAが大村孝佳と、それぞれリフからのソロを弾き、真ん中でロブ・ハルフォードとSU-が歌いまくるというシーンは、2016年の欧米ロック市場におけるエポックとなった。
会場にはグラミー賞の事務局も来ており、この模様は、グラミー賞サイトに記事として掲載されたので、「2017年グラミー賞ノミネートに内定しているのか!?」というわくわく感もあった。
残念ながら、それは叶わなかったが、終演後、インタビューを受けたロブ・ハルフォードが、「BABYMETALはメタルの歴史に敬意を払ってくれる。そして、ここにメタルの未来がある。」と言ってくれた。これこそ、BABYMETALがメタルゴッドに受けた「勲章」だった。
●2016年9月19日:東京ドームRed Night「Tales of the Destinies」
<セットリスト 13曲>
1. Road of Resistance
2. ヤバッ!
3. いいね!
4. シンコペーション
5. Amore-蒼星-
6. GJ!
7. 悪夢の輪舞曲
8. 4の歌
9. 神バンドソロ~Catch Me If You Can
10. ギミチョコ!
11. KARATE
12. Tales of the Destinies
13. THE ONE
神バンド:藤岡幹大(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)
6月にヨーロッパ、7月にアメリカ西海岸のツアーを終えたBABYMETALは、フジロック@新潟県苗場スキー場、Rock in Japan@ひたちなか海浜公園、Rising Sun Rock Festival@石狩湾港樽川ふ頭、サマーソニック@大阪舞洲のいわゆる日本4大夏フェス制覇を果たした。
いずれの会場もBABYMETALのステージには数万人の観客が集まり、それぞれのフェスの「目玉」になった。
とりわけ、初出演となったフジロックでは、夕闇迫るホワイトステージ目指してものすごい数の観客が押し寄せ、会場前の川をじゃぶじゃぶ渡るツワモノも現れた。ついには入場制限がかかり、会場には入れなかった人も大勢いた。最前列でBABYMETALを見るには、朝からステージ前にいなければならなかったのだ。
この光景は「音楽とアウトドアライフ」を楽しむアダルトな雰囲気のフジロックには不似合いではあったが、BABYMETALの終演後、メイトたちは会場のごみを拾って持ち帰るなど、マナーの良さを発揮した。
重要な出会いもあった。
BABYMETALの出番中、ステージ袖からヘッドライナーのRed Hot Chili Peppersのチャド(D)とジョシュ(G、当時)が観ていたのだ。これにより、BABYMETALは2016年12月のUKツアーおよび2017年4月のアメリカ東海岸ツアーにOAとして帯同することになった。
さらに、4大フェスの合間を縫うように、大阪なんばHatch、東京Zepp Tokyo、名古屋Zepp Nagoyaという「小箱」で、観客全員白塗り必須という「White Mass」も実施された。
大阪では終演後、会場から出てきた白塗りの群れを見て、通りかかったオバチャンが「アラアラ、今日は悪魔の集会!?」と叫んだという。
こうして夏が終わり、いよいよ9月。
デビュー以来の「夢」の一つであった東京ドーム公演を迎えた。
当初1日限りのはずだったが、2日間公演に変わり、しかも初日Red Nightと二日目Black Nightでセットリストの「全曲カブりなし」というBABYMETALの「集大成」となるライブだった。
初日、物販列が動き出したときは、まだ曇り空だったが、やがて本格的な雨となり、開場前にはドームの周囲にならんだ待機列に、大粒の雨が容赦なく降り注いだ。ドニントンパーク同様、大イベントを前に慶び勇んだキツネ様の魔力がなせる業である。
コルセットを受け取って場内に入ると、野球では見ることもない“霧”が立ち込めており、中心となるピッチャーマウンド付近に巨大な「塔」が設置されていた。
ぼくの席はピットレベルの「C」ブロックで、比較的ステージに近かったが、あまりに巨大な会場で、全体像がよくつかめなかった。「Road of Resistance」が始まった瞬間には、「塔」のてっぺんのステージに三人が降臨したということがわからなかった。
「全曲カブりなし」というルールにしたがって、『BABYMETAL』と『METAL RESISTANCE』の収録曲が交互に披露され、12曲目に、世界初となる「Tales of the Destinies」が披露された。
「THE ONE」の三連符のリフが2倍速で演奏され、変拍子、テンポの変化、微妙な「間」など、生で演奏するのは至難のプログレメタルである。
しかも、神バンドの各プレイヤーは、塔の中央部にバラバラに位置しているので、アイコンタクトもできない。だが、これを初日の藤岡幹夫(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)の4人は軽々と演奏した。
SU-は、初日、東京ドームだからというより、この曲を生披露することに非常にプレッシャーを感じていたという。曲の途中、ホンキイ・トンク風のピアノで、YUIとMOAが「人形」のようにKawaiく踊ることも含めて、絶対失敗できない東京ドームでこの曲を生演奏したBABYMETALは、次の「THE ONE」で、5万5千人のコルセットが光ったあの壮大で幻想的な光景に勝るとも劣らない「凄み」を示したとぼくは思う。その演奏を映像作品で観られる。これがBABYMETALファンの至福である。
(つづく)
ご訪問ありがとうございます。
このブログは、「アイドルとメタルの融合」をテーマに、Metal Resistanceを掲げ、世界を舞台に活躍するBABYMETALと、その背景となる社会現象について考察するエッセイブログです。
『METAL GALAXY』のリリースを機に、BABYMETALは新たな段階に入りました。
メインとなるエッセイはテーマ:「ブログ」に、ライブレポートは、テーマ:「Road of BABYMETAL」に、結成から海外進出に至るまでの歴史をテーマ:「History」に収納してあります。
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