以前「放送局のアキレス腱は?」でも述べた通り、新規に開局することを考えれば、電波法、放送法の基準内であれば、「放送局かく在るべし」との既成観念に固着する必要はないだろう。
 

そこで基幹放送局の思い切った「経営方針」を以下の通り建ててみた。
  • 旧癖を排除した経営手法の見直し
  • 資金、人材、収益でリスクの分散化
  • 設備投資等を抑制して固定費を低減
  • 変化に即応しやすい収益窓口の多元化
  • 経営体質の異なる配信と制作部門を分社化
  • 番組の独自性が発揮できる評価方法の開発
  • ルーチンワークは省力化技術を積極導入
  • 労使ともに効率を図る勤務形態の多様性

経営方針に基づく具体的なフローを以下にまとめてみた。大別して専門分野に特化した制作会社数社と、中核となる配信会社で構成し、時々刻々変化する収益構造に対応可能な体制を織り込んだ。
 
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放送事業を分割と収益構造の概念
 
配信会社

 
経営管理部門の下で、番組編成部門が放送内容の一元的な計画と管理を行う。
 
番組配信部門では、UHF送信で独自の地上デジタル放送配信、BS、CS認定基幹放送事業者への配信、EPC集配会社を利用して提携全国放送局へのリアルタイムな配信を行う。
 
IP配信では、インターネット経由のIPサイマル配信(リアルタイム)、動画サイト等にコンテンツを提供するストリーム配信、ストアからダウンロード配信を行う。
 
一方で、双方向性が重要視される昨今、ITCセンターでSNS、メール、掲示板などを一元化して活用しする。
リアルタイム放送では、制作会社に随時フィードバックして、番組との関連を高めるほか、データを蓄積して次の番組に活用する。
 
アーカイブ部門は、IP配信用コンテンツを提供するほか、DVD販売や番組の海外向け提供を行う。またアーカイブ部門では、法務、著作権管理を行う。
 
比較的ルーチンワークの多い配信会社部門は、AIを含めた自動化技術を活用し、徹底した省力化を進める。
 
制作会社

 
ルーチンワークの少ない番組制作では、制作会社を専門分野化することで、独自性や品質の高いコンテンツを制作する。
 
制作会社は、必要最小限のスタジオ設備(カメラ、音声、照明)とENG編集(ポスプロ)設備を備え、CG制作、ウェザーカム、バーチャルスタジオ、FPU、SNG車輛など、利用頻度が低い場合は、配信会社側が用意して供用する。
 
番組に対する評価は、ビデオリサーチの視聴率を参考とるが、衛星放送での加入者数、IPサイマル配信と動画サイト等の再生回数、ダウンロードとDVDの販売数、SNSエンゲージメントやメール投稿数などを加えた新たな評価方法を構築する。
 
収益構造

 
以前に「放送番組をなにで見る?」で述べた通り、地上デジタル基幹放送局の視聴構造は変化している。
 
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詳細は、「放送番組をなにで見てる?」を参照。
 
特に家庭用テレビの独占時代から、スマートフォンやタブレット端末で簡単にストリーミングやダウンロードができるようになって、さらにIPサイマル放送も実用化するようである。
 
これに伴って、2015年、Netflixの日本進出を機会に、既存の動画サイト、ストリーミング業者も本腰を入れていると思われる。
 
地上波デジタル基幹放送局も、広告枠販売から収益構造も徐々に変化せざるを得なくなっている。
 

 
下図は、関東エリアを放送対象地域とする既存放送局の使用チャンネルと空きチャンネル。難視聴地域解消の目的(?)で、1放送局が異なる中継所で多くのチャンネルの免許されていると思われる。
 
 
2017年4月現在、すべての送信・中継所で使われていないのが、31、38、40チャンネルだが、総務省の見解は不明。事によると、周辺エリア(福島、山梨、静岡)などの隣接中継所との混信を防ぐ目的なのかもしれない。
 
日本放送協会(総合)、日本放送協会(教育)、日本テレビ放送網、TBSテレビ、フジテレビジョン、テレビ朝日、テレビ東京は放送対象地域が「関東広域圏東京親局」となっているが、東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)は、放送対象地域が「東京都県域放送親局」に限定されている。
 

 
仮に総務省総合通信局によって、地上波デジタル・テレビジョン基幹放送局の周波数割当の認可数が増えた場合、思い荷物(設備投資、人件費、固定資産)を背負ったままの既存局より、新規に開局する事業者が有利とも云える訳だ。
 
 
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