深掘り 母と子の絆 ポール・サイモンとフランソワーズ・アルディ
寒くなり始めるこの時期なぜか 聞きたくなるのがサイモン&ガーファンクル…ポール・サイモン(個人的な感覚です)
そういえば 昨年6月 フランソワーズ・アルディさんが亡くなられた後 世界中のSNSは 彼女の若い頃のフォトジェニックな美しい写真投稿で溢れていました…。 そんな中でもちょっと珍しい写真。こちらは 1973年にご自宅でポール・サイモンのソロアルバムを手にしているアルディさん
この写真の撮影者は アルディさんの元恋人の写真家ジャン・マリー・ペリエ氏ではなく
Wojtek Laski(ヴォイテク・ラスキー)氏というポーランド出身の著名なフォトジャーナリストです。
1960年代「タイム」「パリマッチ」などのに有名人の写真を提供したりしてましたが フォトジャーナリストという立場で東欧やソビエト(ロシアの)政治、社会、革命など歴史的な出来事を記録された事で有名な方だそうです。
アルディさんが手にされている 1972年1月に発売されたばかりの ポール・サイモンのソロとしてのアルバム「Paul Simon」。このアルバムにはシングルカットされた「母と子の絆」という名曲が入っている事でも知られています。
もしかしたら母親になったばかりのアルディさんに ラスキー氏が提案して この「母と子の絆」が入ったアルバムを手に撮影された可能性も少しありますが 私はアルディさんご本人が 大好きなアルバムとして 選び撮影したのではないかと推察してます。
実は「母と子の絆」というタイトルは日本国内版でのタイトルであり 原題は"Mother and Child Reunion" 直訳すると「母と子の再会」となります。ポール・サイモン氏は インタビューで「この歌のタイトルは ニューヨークの中華料理店で食べた鶏と卵の料理名の"mother and child reunion ”に由来している。(親子丼みたいなものか?)ポール曰く
「この頃 僕が飼っていた愛犬が車に飛び込んで突然事故死してしまい悲しんでいた。たった今までそこにいたのに…次の瞬間には いなくなってしまう… それがもし僕の妻のペギーだったらどうしよう? 死って何だろう? もし(死別した)母(鶏)と子供(卵)の本当の再会が叶うとしたら…それは死んだ後の 天国なのかもしれない」と考えたのだとか。
そこで「死」を「母と子の再会」という言葉に置き換えて書いた作品なのだそうです。ちょっとわかりにくいですが 聖書的発想なのか タイトル通りの単純な母子の絆や愛の歌詞でないところがポール・サイモン。(つまり親子丼は天国なのか?この謎に満ちた歌詞については今だに多くの議論?があるようです。)
このアルバムを発表した'72年1月の約8ヶ月後の
9月にポール・サイモンも 当時の妻ペギーとの間に 第1子の ※1.ジェームス・サイモンを授かり 父になったていたのでした。 つまりこの写真を深掘りすると「父親になったばかりのポール・サイモンさんの最新アルバムを手にする 母親になったばかりのフランソワーズアルディさん」という事なのでした。
追記:親子丼については ネット検索で「ボイルドエッグとフライドチキンを合わせたような料理だった…」との新情報もありました。
ところで洋を問わずファンというのは 非常によく ”推しの写真”を解析をするものみたいですね(笑) この写真の片隅に ニック・ドレイクのアルバム「five lieves left」が置かれている事に気付いた方がフランスのファンサイトおられました。

ファンとはすごいです(笑)
このアルバム「ポール・サイモン」には
南米の※2フォークローレを取り入れて制作した作品 「ダンカン」も入っています。S&G時代の「コンドルは飛んでいく」と同様 伝統的フォルクローレのグループ ロス・インカスと共演。ロックに伝統的な音楽を積極的に取り入れるというポール・サイモンの発想は フレンチポップスに※3 ブラジル音楽やスペイン民謡などを取り入れたアルバムをすでに制作をしていたアルディさんにとっては 大変共感できるものであったのだろうな!と思います。
この写真と同じ日に撮影した写真が他にも見つかりました。白黒ですが…(カラー画像が見つからない)

見慣れない漢字 ポスターなのでしょうか 調べたところ「禅」という文字の簡体字でした。簡体字ということは中国製なのでしょうか? もしかしたら この世界中を飛び回る写真家ラスキー氏の手みやげ品であったのかもしれません。この頃はまだガチガチ社会主義体制の国家が「禅」? 少し不思議ですが こんな漢字のポスターを前にアルディさんと写真家のラスキー氏がどういう会話をしたのかしら? 更に気になった私でした。
フォルクローレを取り入れたポール・サイモンの「Duncan」⬇️
Je suis seule à crever et je sais où vous êtes
J'arrive, attendez-moi, nous allons nous connaître
Préparez votre temps, pour vous j'ai tout le mien
Je voudrais arriver, je reste, je me déteste
Je n'arriverai pas: je veux, je ne peux pas
私はとても寂しいの
あなたがどこにいるかは知っている
行くから待ってて
お互いをよく知りましょう
時間を作って欲しいわ
私の方はあなたのための時間はちゃんとあるの
行きたい でも 私はとどまってる…だから
自分がいやになる… 行きたいの でもできないの…
恋人(出産はしたもののこの頃はまだ未入籍)
を待つ不安な気持ちを抑えて 禅(しずか)な面持ちで待つアルディさんの表情を写真家ラスキー氏は捉えていたのかも…
タイムマシーンに乗ってデュトロン氏に思わず
https://wojteklaski.pl/
※1 ハーパー・ジェームス・サイモン(1972年9月7日生まれ)はアメリカのシンガーソングライター、ギタリスト、プロデューサーである。ポール・サイモンとペギー・ハーパーの息子でショーン・レノンの友人でもある。
※2 1964年まだ ほぼ無名のポール・サイモンがパリに滞在していた頃 フォーククラブで ロス・インカスの演奏する「コンドルは飛んでいく」を聴き感銘を受け その後1970年にサイモン&ガーファンクルとしてこの曲をカバーする際 ロス・インカスのバッグ演奏でアンデス地方の楽器ケーナ(笛)チャランゴ(ギター)が使われた。フォルクローレとは 主に南米アンデス地方の民族音楽をさし もともとは「民俗学」や「民間伝承」を意味する言葉でスペイン語の「Folclore」に由来。南米の原住民の音楽とヨーロッパやアフリカから伝わった音楽が融合したもの。
「コンドルは飛んでいく(El Condor Pasa)」や「花祭り(El Humahuaqueño)」が有名である。
楽器:
ケーナ(縦笛)サンポーニャ(パンパイプ)チャランゴ(小型の弦楽器)ボンボ(太鼓)
アルバム「Paul Simon」収録曲一覧

※3アルバム「La Question 」1971年ブラジルのギタリストTucaのボサノヴァ風の作品を多く取り上げた
スペイン語タイトルのSi mi caballero(私の騎士)をはじめ 1970年リリースのアルバム「Soleil」では スペイン民謡「Sant Salvador」にフランス語の歌詞をつけている。
戦後80年の祈り l' amitié フランソワーズ・アルディ
米英を中心とした連合軍が フランス北部ノルマンディー海岸に上陸 南進しパリが解放されたのが1944年8月25日。
残念ながら息子のトマ・デュトロン氏はご自分のツアースケジュールの為に参加できませんでしたが 最愛の母アルディさんへの大勢の追悼の歌声に感謝されておられました。
⬇️小さめですがYouTubeにも動画が投稿されてました
https://youtube.com/watch?v=GNrg3gahFVI&feature=shared
こちらは⬇️ヴォーグ時代の1965年にリリースされた
アルディさんのオリジナルです♡
l'Amitie :友情
雲の向こうから友達がやってくる
太陽と雨をカバンに詰めて
彼らが創り出す優しい友情の季節
四季のなかで一番美しい季節
友達の優しさは美しい風景に似ている
渡り鳥のように舞い戻る人々
彼らの心に刻まれる無限の優しさ
Et de nouveau sourire à bien d'autres visages
でも その瞳には時に悲しみの色が宿る
だから 彼らは私の家に温もりを求めにやってくる
あなたもきっと来てくれるでしょう
でもあなたは再び雲の彼方に立ち去る
別の表情で もう一度微笑みながら
あなたの周りに優しさを与える
仲間が悲しみを隠したい時も
人生の意味が分からない時も
自分が何者なのか 分からない時も
理解してくれる友達が一人でもいたなら
そんな時はあなたの家に行こう
あなたの燃やす炎で私の心が温まるから…
作詞ジェラルド・ブルジョワ 作曲ジャン・マックス・リヴィエール
soleil 「お陽さまと私」フランソワーズアルディの名曲
毎日太陽がギラギラ…本当に疲れてしまいますね
さて 私が大好きなフランソワーズアルディさんのアルバムにお陽さま=Soleilと呼ばれているものがあります。
日本ではなぜか「アルディのおとぎ話」cont de féesというタイトルで1973年に発売されました。
フランスでの発売は1970年。発売当初はノンタイトルでした。(この頃フランスではレコードアルバムにタイトルをつけない事はごく普通であったとか…)
現在は他のタイトル付きのアルバムと区別する為に
「Soleil 」と呼ばれています。薄黄色の眩しい太陽 不思議なコラージュアートのジャケ。赤い涙。
そしてシングルカットされた 美しいバラード「Soleil」(お陽さまと私)が収録されてます。
この曲は実はカヴァー作品でアメリカの女性シンガーソングライターのサンディ・アルパートさんの「Sunshine」1967年にイギリスでヒットしたものが原曲です。
こちらも素敵です⬇️
♫Disgosのデータによると Written-By Françoise Hardy,
作曲がSandy Alpert, 作詞はTash Howard フランス語の詞はアルディさん本人が書かれたのではないでしょうか。本当に美しいフランス語の歌詞です✨️☺️
(日本語訳には私の意訳が入っております)
Et c'était lui, le soleil
Qui faisait nos réveils
Chaque matin
Et la mer était belle
Et nous courrions vers elle
Main dans la main
Et puis nous marchions sur la plage
Tu cherchais des coquillages
Comme un enfant
Les mettant à ton oreille
Pour entendre je me rappelle
L'océan dedans
毎朝 目覚めさせてくれたのは太陽だった
私達は海に向かって走った
手をつないで…
それから海辺を歩いた
あなたは子供みたいに貝殻を探して
耳に押し当て 潮騒を聞こうとしてた
思い出すわ
Soleil, je t'aime
Et pour toujours tu es fidèle
Mais l'amour
N'est pas souvent comme toi
Pourquoi ?
太陽が大好き
あなたはずっと誠実だから
でも恋はあなた(太陽)みたいじゃないの
なぜかしら?
Tu avais toujours si faim
Les fruits mûrs et le vin étaient pour toi
Tu me grondais quelques fois
Lorsque je ne mangeais pas
Ce n'était rien
Et l'eau s'allongait sur le sable
Nos rêves étaient semblables
Je me souviens
Nous parlions de la maison
Des enfants que nous aurions
Et nous étions bien
あなたはいつもおなかが空いてて
熟れた果物とワインを一人じめしちゃうのに
私があまり食べないからって
時々私を叱ったたいしたことじゃなかったけど…
砂に打ち寄せる波
私たちの夢も同じだったのね
いつか住むだろう家のこと
生まれてくる子供達のこと話したわ
私たちはうまくいっていたもの…
Et c'est toujours lui, le soleil
Qui fera mes réveils
Chaque matin
Soleil d'hiver ou d'été
Il voit les amours passer
Et les chagrins
Combien faudra-t-il de plages
Combien d'autres visages
Pour comme toi
Oublier la maison
Et l'enfant aux cheveux blonds
Que nous n'avons pas ?
今でも毎朝私を目覚めさせてくれるのは
やっぱりお陽さま
冬も夏も太陽は過ぎ去った恋と悲しみを見てるの
どれだけの海辺と
いくつの顔が要るのかしら
あなたと同じ様に
得ることができなかった
ブロンドの髪の子供達とか
お家の事も…
忘れることにするわ
soleil=お陽さま 日本以外の多くの国の子供達は
赤ではなく黄色やオレンジを使って描くのだそうです。
これは⬇️だいぶ以前 姪っ子が小さい頃 描いてくれた
イラストですが右上の太陽は しっかり赤色です。
私も子供の頃は赤で描いてました。もちろん🇯🇵国旗の影響でしょう!

少し文学的に "le pays de soleil levant "日の出づる国"とも表現するとか…これは英語でいうところのLand of the Rising Sunですね。
フランス語の "levant" には「昇る」という意味の動詞「lever」の現在分詞形として「昇るもの」や「東」を指す名詞の意味があるそうで 旧約聖書にも les rois venant du soleil levant ”(王族は東からやって来る)という表現があったりもします。
さて 今週日曜日7月20日 2025参議院選挙がありますが 今回は特に日本の未来がかかっていると言われて盛り上がっていますよね。
日本が "日出づる国"であり続けますように…
決して"日の沈む国"Le pays du soleil couchant"には
なりませんように…
皆さん是非投票に参りましょう!
この「Soleil」アルディさんは 2006年に歌手のアラン・スーション氏とデュエットをされています。
お二人で歌われている素敵な動画がありましたので是非ご覧ください⬇️
https://youtube.com/watch?v=J3RqrqdMVSk&si=9lo6NAmOFGbbPETB
















