回復の兆しのない衰退
アメリカのブラウンストーン研究所の最近の記事で、カナダに関する投稿を見たのですけれど、それは非常に驚くような数字が並べられているものでして、ご紹介したいと思いました。本当に驚くべきものです。
カナダといえば、2020年からのパンデミックでは、世界で最も厳格なロックダウン規定を課した国のひとつで、「家の外にいるだけで逮捕される」というような法律(カナダ検疫法という法律)を実際に施行した国だったりもしましたが、今回の話はそういうディストピア方面の話ではないです。実際的な「国家の衰退」についてのことです。たった数年で、ここまでになるという。
2020年からのカナダのディストピアぶりについては、以下の記事の後半などにあります(前半は雑談)。カナダは、ワクチン未接種者への締め付けも大変に厳しい国でした。
(記事)未来世紀カナダ:「家の外にいるだけで逮捕される」という世界で最も厳しい外出禁止が発令されたオンタリオ州の現実…
In Deep 2021年4月22日
ブラウンストーン研究所の記事をご紹介する前に、記事に出てくる数字だけを並べますと、今のカナダは以下のようになっています。そして、これが、「わりとあっという間に、こうなった」のです。
・経済成長率は先進 50カ国中最悪
・実質賃金は 2016年以降横ばい
・食品インフレ率は 25%
・破産申請件数は昨年 40%増加
・暴力犯罪率は 2014年以来 40%増加
・世論調査でカナダ人の 10人中 7人が「カナダは崩壊している」と回答
・カナダ人の 42%が他国への移住を検討している
・カナダ人の 3人に 1人が政府に勤務
・およそ 10世帯に 1世帯が 生活保護を受けている
読者様にもカナダ在住の方がいらっしゃいまして、以前から生活の大変さを伺うことはありましたが、数値として、ここまで悪化しているとは、と驚きます。
なお、こういう他の国の問題について、たまにご紹介することがありますが(フィンランドとか)、それは、別にそういう国々への感情の問題ではないですし、「やーい」というような話でもないです(そりゃそうだわな)。
たとえば、今の日本の現状や未来感などから、他国への留学や、短期長期を含めた海外移住を考えるような方々も多いご時勢だと思いますけれど、それぞれの国に対してお持ちになっている「少し前のイメージ」からでは、もはや何もわからない現実が、多くの国にあります。
カナダは、かつては楽園とまで言われた国であり、今でも留学や移住を考える人の多い国のひとつだと思いますが、先ほどの「数字」は、以前のイメージからはまったく乖離した現実を示しています。
これはアメリカもそうですし、ヨーロッパの多くの国もそのような場合が多いと思われます。
じゃあ、どこの国がいいんだ、ということになると、それは本当に難しい時代なのかもしれません。それはそれとしても、日本もまた極めて危険な状況にあることが変わるわけでもないですが。
ブラウンストーン研究所の記事をご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カナダ:「40年間で最悪の衰退」
Canada’s “Worst Decline in 40 Years”
brownstone.org 2024/07/28
カナダのフレイザー研究所による新たな調査によると、カナダの生活水準は過去 40年間で最悪の低下に向かっている 。
この調査では、過去 40年間におけるカナダの3つの最悪の衰退期、 1989年の不況、 2008年の世界的金融危機、そしてパンデミック後の時代を比較した。
このフレイザー研究所の調査により、前回の不況とは異なり、今回はカナダが回復していないことが判明した。何かが壊れたのだ。
実際、 ファイナンシャル・ポストによると、2019年以降、カナダの経済成長率は先進 50カ国中最悪となっている。インフレ調整後のカナダの賃金は 2016年以降横ばいだ。
つまり、何かが壊れた。
そして、それはまだ終わっていない。カナダの一人当たり実質 GDP は依然として下落しており、米国の景気後退が迫っているため(米国はカナダの輸出の 75%を占めている)、カナダは回復する前に再び破綻する可能性がある。
トルドー政権下のカナダは衰退中
私は、ジャスティン・トルドー氏のカナダが抱える惨状について話したことがあるが、簡単に言うと、所得はウェストバージニア州レベル、住宅価格はロサンゼルスレベル、そしてカナダの税金はソ連の半分レベルだ。
カナダの中流家庭が収入の半分を税金として支払うことは珍しくない。
一方、パンデミック以降、カナダの公式食品インフレ率は 25%上昇し、エネルギーは炭素税のおかげもあって 30%上昇している。
また、カナダのほとんどの州では、購入するものすべてに対して 13 ~ 15%の消費税がかかるということを覚えておいてほしい。
カナダ人が、一週間分のライ麦パンをなんとか食いつぶそうとしたり、食料品を買うために持ち物を売ったりする様子を TikTok に投稿する一方で、生活費は時とともに高騰している。
カナダの破産申請件数は昨年 40%増加したが、CIBC の報告によると、カナダ人のほぼ半数が緊急時の貯蓄を全く持っていない。
統計局によると、カナダの暴力犯罪率は 2014年以来 40%増加している。
イプソス社の世論調査によると、カナダ人の 10人中 7人が「カナダは崩壊している」と同意しており、18歳から 34歳の間では 10人中 8人に上る。
アンガス社は、カナダ人の実に 42% が他国への移住を検討していることを発見した。
何が変わったか
これはすべて衝撃的なことだ。なぜなら、あまりにも急激に起こったからだ。前回の危機である 2008年の際とは雲泥の差だが、当時のカナダはアメリカよりもずっとうまく危機を乗り越えた。
当時と何が変わったのか? ジャスティン・トルドー氏の存在だ。具体的には、カナダを米国のような混合経済から、欧州連合の病人のような政府主導の経済へと転換するという彼のキャンペーンによる。
トルドー政権下では、企業投資は 3分の1に急落した。一方で政府支出はほぼ倍増し、GDP のほぼ半分に達した。
カナダの公務員は民間部門のほぼ 4倍の速さで増加しており、現在ではカナダ人の 3人に 1人が政府に勤務し、彼らが支配する納税者よりも 30%多い給与と福利厚生を受け取っている。さらに 170万人のカナダ人、つまりおよそ 10世帯に 1世帯が 生活保護を受けている。
もちろん、カナダで小さな政府を掲げて選挙に勝つのは非常に難しい。有権者の 40%の生活を政府に頼らなければならないからだ。つまり、残りの 80%の支持も得なければならないのだ。
次に何が起きるか
カナダ国民は 2025年の次回選挙までトルドー氏に縛られるため、短期的には事態は悪化するだろう。
保守党のピエール・ポワリエブル氏は今のところ世論調査でリードしているが、カナダの政府系メディアは彼を打ち負かすためにあらゆる手を尽くしており、その差はすでに縮まりつつある。
それは、かつては楽園だったこの国で、さらなるインフレ、さらなる衰退、さらなる大量移民、そして犯罪の増加を意味する。
転載元