今日の三橋貴明の「新」日本経済新聞 http://www.mitsuhashitakaaki.net/
◆九州大学の施 光恒(せ・てるひさ)氏
(前略)
猪瀬都知事「標準時2時間前倒し」提案 東京を「世界で最も早く始まる市場」に
http://www.j-cast.com/2013/05/23175772.html
東京都知事の猪瀬直樹氏が、5月22日の政府の産業競争力会議で、日本の標準時を2時間前倒ししようという提案を行ったとのことです。
猪瀬氏の提案によれば、日本の標準時を2時間早めれば、東京の金融市場を「世界で最も早い時間帯から取引の始まる市場」にできる。それによって、東京の金融市場としての国際的魅力を高め、外資系金融機関を呼び込み、日本経済を活性化できる。そういう提案でした。
竹中平蔵氏は、やはりこの案に好意的とのこと…。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130525/lcl13052518000002-n1.htm
麻生財務大臣はさすがに否定しました
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL280HN_Y3A520C1000000/
猪瀬氏の提案のニュース、最初聞いたとき、耳を疑いました。
これ、本当に実現したら(まさか実現しないでしょうが)、かなりおかしな生活になってしまいます。
特に、九州など西日本はそうです。冬場の日の出は7時20分過ぎの時もありますので、標準時を2時間前倒しにした場合、九州は、朝9時半近くにやっと夜が明けるということになります。(東京でも8時45分ごろになります)。
朝ご飯は、電灯をつけて食べることになりますね。冬の通勤・通学は、真っ暗のなか家を出なくてはなりません。たとえば、小学生の児童が暗闇のなか登校するなんて、やっぱりちょっと心配です。
現在、日本の標準時は、兵庫県明石市などを通る東経135度を基準にしています。これを2時間早めるということは東経165度を基準に日本の標準時を定めることになります。
東経165度とはどこかと地図でみてみたら、北海道のはるか東、カムチャッカ半島の付け根あたりですね~。日本の標準時が日本列島から大きくずれている。もうアホかと…。
(*´Д`)=3トホホ…
なんでこれが「成長戦略」なんでしょうね。
「外資系金融機関を呼んでくればいい。日本人には期待できないので、外国の企業や人を呼ぶためならば、日本人の生活など少々おかしくしてもかまわない」。
そういうことなんですかね。
猪瀬氏は、この5月22日の産業競争力会議で、このほかにもう一つ「成長戦略」を提案しています。「国家戦略特区(仮称)」というものですが、こちらも、やはり外国企業や外国人を呼んできて、彼らが活動しやすい環境を作ることこそ、「成長」につながるという発想です。
・現在40%程度の法人税を20%程度まで引き下げる(法人税率の低いシンガポールや香港に近づける)
・外国人向け医療の充実
・外国人子弟の教育環境の充実
・外国人ビジネスマンの入国審査の緩和
・法人設立に係る申請書類の英語対応
以上のようなものが提案されています。どれも、外国企業や外国人を呼んで来よう、彼らが活動しやすい環境を整えよう、ということです。
以前からたびたび書いていますが、日本にとっての一番の「成長戦略」とは、大勢の一般的日本人が、落ち着いて人生設計を考え、能力を磨き、それを発揮しやすい環境を整えることでしょう。
猪瀬氏は、シンガポールや香港をよく例にあげていますが、言うまでもなくシンガポールや香港と、日本の経済の性格はまったく違います。シンガポールや香港の貿易依存度(輸出依存度と輸入依存度の合計)は、300パーセントを超えて世界1位と2位ですが、日本はたった28パーセントで世界180か国中なんと175位(2011年)です。
シンガポールや香港は、外資に来てもらわないと経済が立ちゆきません。ですが、日本経済は両国とはまったく違い、外資に頼る必要など非常に少なく、日本国民の力で十分回していけるわけです。
なのに、今回の「標準時を2時間早める」の話によく表れていますが、一般的日本人の慣れ親しんだ生活をヘンなふうに変えて暮らしにくくしても、外国企業や外国人を呼んでくることのほうが「成長」につながると考えてしまうのは、まさに三橋さんのいうところの「経済的自虐史観」の一つの現れだと思います。
(´д`)マタマタトホホ…
もう一点。
この先の話は、私の妄想というか、根拠のない単なるタワゴトなのですが、万が一、猪瀬提案が通ったら、おそらく「日本国内に時差を設けよう!」という話になりはしないでしょうか。
「いくらなんでも、冬場は、九州など西日本は、朝の9時半ごろまで夜が明けないというのは、おかしい。だったら東日本と西日本で時差を設けよう。せっかく道州制も導入しようと議論しているところだし、標準時も各州が自由に設定できるようにしたらいいのではないか?」
日本を東海地方あたりで区切り、東日本は二時間早めた新しい標準時に変え、西日本はいままでどおりの標準時を使う、というような提案が出てきそうな気がします。
この手の日本を分割しましょう!みたいな提案、最近、よく目にしますからね。民主党政権時の連休分散化の話もそうでしたし。
もっと進めて以下のようなことを言う人もいそうです。
「いっそのこと、西日本は、いまより1時間遅らせて北京に合わせよう。これは道州制時代にもってこいではないか。
東日本は2時間早めて、東京をロンドン、ニューヨークと並ぶ世界の金融センターにする。外資系企業を取り込み、成長のエンジンとする。
西日本は、いまよりも1時間遅らせて北京時間と合わせ、いわば東アジア標準時にする。それによって時差もシームレスになり、東アジアとビジネスがしやすくなる。アジアの成長を取り込める!」
┐(  ̄ー ̄)┌ドーダ
書いていていやな気分になりますが、最近の風潮だと、こんな案が提出されることもあながち否定できないように思います。竹中平蔵先生でしたら、たぶん褒めてくれる提案ではないでしょうか。
ですが、国内に時差を設けるというのは、日本をとりまく現在の国際情勢では絶対しない方がいいですよね。国民の一体感や連帯意識が損なわれるからです。
時差を設けたら、きっとテレビのニュースなどは、別に作らざるを得なくなるでしょう。生活のそのほかの面でも、国民の一体感や連帯意識(仲間意識)が薄れてくる恐れがあります。
たとえば中国はそのあたり、よくわかっているようです。
中国はあんなに国土が広いのに、中国国内には時差はありません。なかば強引に北京を標準とする時制のみでやっています。もちろん、国土が広いので、たとえば北京で夜が明けても西部のウイグルなどはまだ真っ暗らしいのですが。
中国政府が時差を設けようとしないのは、もともと中国は、分裂圧力が非常に強い国だからでしょう。おそらく時差を作ると、ウイグル、チベットなど西部の人々は、北京などに一体感をますます感じなくなり、民族意識が高まり、独立運動がさらに活発化するという懸念があるからだと思います。時差を設けることは、国民の連帯意識にとってはマイナスです。
国民の一体感や連帯意識というのは、ふだんあまり意識しないですが、実はすごく大切です。
たとえば、福祉政策一つ取り上げてみても、結局は、「同じ日本人だから」という国民の連帯意識に基づく国民の助け合いのうえに成り立っています。
震災のような大災害が起こった時でも、結局のところ頼りになるのは国民の相互扶助の精神以外にありません。
もちろん、国防や領土の保全でも、最後のよりどころは国民の連帯意識でしょう。
最近、中国は沖縄を狙っていることを隠そうともしません。日本の他の地域と、沖縄との分断を願っているようです。
日本は中国などと違い、国民の一体感や連帯意識は十分強い国柄ですから、余計なことをしなければ今と同じように保たれていくと思います。
ただ、最近は、道州制(地域的分断)にしろ、大学入試でのトーフル採用や英語を使う授業の大幅増加の提案(言語的分断)にしろ、国民の連帯意識をわざわざ壊そうとする提案がなぜか多いですからね。ちょっと心配です。
(ついでにいえば、秋入学の提案は、世代的分断につながるかもしれません。秋入学がもし、小中高、大学と、全面的に導入されるようなことがあれば、4月入学世代の我々と、記憶や感性を共有しなくなる子が増えていくのではないでしょうか。)
日本国内に時差を導入しようなどという提案がもしあったら、一番喜ぶのは、中国でしょうね。道州制もそうかもしれません。
「グローバル化」と言われる現代だからこそ、国民の連帯意識を壊さぬよう政府や政治家は慎重に配慮する必要があるはずです。
猪瀬東京都知事も、東京のことだけでなく日本全体を、そして金融などだけでなく国民生活のさまざまな側面を、よく考慮したうえで政策を練ってもらいたいものだと思います。
いつもながら、飛躍の多い長話、失礼しますた…
<(_ _)>
P.S
七人の怒れる男たち。6月14日発売。
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上記の本のトークイベント。怒れる男の一人、関岡英之氏が登壇します。
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=718
P.P.P.S
明日の放送です(^_^)
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=718
◆三橋貴明の「新」日本経済新聞 http://www.mitsuhashitakaaki.net/
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◆九州大学の施 光恒(せ・てるひさ)氏
(前略)
猪瀬都知事「標準時2時間前倒し」提案 東京を「世界で最も早く始まる市場」に
http://www.j-cast.com/2013/05/23175772.html
東京都知事の猪瀬直樹氏が、5月22日の政府の産業競争力会議で、日本の標準時を2時間前倒ししようという提案を行ったとのことです。
猪瀬氏の提案によれば、日本の標準時を2時間早めれば、東京の金融市場を「世界で最も早い時間帯から取引の始まる市場」にできる。それによって、東京の金融市場としての国際的魅力を高め、外資系金融機関を呼び込み、日本経済を活性化できる。そういう提案でした。
竹中平蔵氏は、やはりこの案に好意的とのこと…。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130525/lcl13052518000002-n1.htm
麻生財務大臣はさすがに否定しました
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL280HN_Y3A520C1000000/
猪瀬氏の提案のニュース、最初聞いたとき、耳を疑いました。
これ、本当に実現したら(まさか実現しないでしょうが)、かなりおかしな生活になってしまいます。
特に、九州など西日本はそうです。冬場の日の出は7時20分過ぎの時もありますので、標準時を2時間前倒しにした場合、九州は、朝9時半近くにやっと夜が明けるということになります。(東京でも8時45分ごろになります)。
朝ご飯は、電灯をつけて食べることになりますね。冬の通勤・通学は、真っ暗のなか家を出なくてはなりません。たとえば、小学生の児童が暗闇のなか登校するなんて、やっぱりちょっと心配です。
現在、日本の標準時は、兵庫県明石市などを通る東経135度を基準にしています。これを2時間早めるということは東経165度を基準に日本の標準時を定めることになります。
東経165度とはどこかと地図でみてみたら、北海道のはるか東、カムチャッカ半島の付け根あたりですね~。日本の標準時が日本列島から大きくずれている。もうアホかと…。
(*´Д`)=3トホホ…
なんでこれが「成長戦略」なんでしょうね。
「外資系金融機関を呼んでくればいい。日本人には期待できないので、外国の企業や人を呼ぶためならば、日本人の生活など少々おかしくしてもかまわない」。
そういうことなんですかね。
猪瀬氏は、この5月22日の産業競争力会議で、このほかにもう一つ「成長戦略」を提案しています。「国家戦略特区(仮称)」というものですが、こちらも、やはり外国企業や外国人を呼んできて、彼らが活動しやすい環境を作ることこそ、「成長」につながるという発想です。
・現在40%程度の法人税を20%程度まで引き下げる(法人税率の低いシンガポールや香港に近づける)
・外国人向け医療の充実
・外国人子弟の教育環境の充実
・外国人ビジネスマンの入国審査の緩和
・法人設立に係る申請書類の英語対応
以上のようなものが提案されています。どれも、外国企業や外国人を呼んで来よう、彼らが活動しやすい環境を整えよう、ということです。
以前からたびたび書いていますが、日本にとっての一番の「成長戦略」とは、大勢の一般的日本人が、落ち着いて人生設計を考え、能力を磨き、それを発揮しやすい環境を整えることでしょう。
猪瀬氏は、シンガポールや香港をよく例にあげていますが、言うまでもなくシンガポールや香港と、日本の経済の性格はまったく違います。シンガポールや香港の貿易依存度(輸出依存度と輸入依存度の合計)は、300パーセントを超えて世界1位と2位ですが、日本はたった28パーセントで世界180か国中なんと175位(2011年)です。
シンガポールや香港は、外資に来てもらわないと経済が立ちゆきません。ですが、日本経済は両国とはまったく違い、外資に頼る必要など非常に少なく、日本国民の力で十分回していけるわけです。
なのに、今回の「標準時を2時間早める」の話によく表れていますが、一般的日本人の慣れ親しんだ生活をヘンなふうに変えて暮らしにくくしても、外国企業や外国人を呼んでくることのほうが「成長」につながると考えてしまうのは、まさに三橋さんのいうところの「経済的自虐史観」の一つの現れだと思います。
(´д`)マタマタトホホ…
もう一点。
この先の話は、私の妄想というか、根拠のない単なるタワゴトなのですが、万が一、猪瀬提案が通ったら、おそらく「日本国内に時差を設けよう!」という話になりはしないでしょうか。
「いくらなんでも、冬場は、九州など西日本は、朝の9時半ごろまで夜が明けないというのは、おかしい。だったら東日本と西日本で時差を設けよう。せっかく道州制も導入しようと議論しているところだし、標準時も各州が自由に設定できるようにしたらいいのではないか?」
日本を東海地方あたりで区切り、東日本は二時間早めた新しい標準時に変え、西日本はいままでどおりの標準時を使う、というような提案が出てきそうな気がします。
この手の日本を分割しましょう!みたいな提案、最近、よく目にしますからね。民主党政権時の連休分散化の話もそうでしたし。
もっと進めて以下のようなことを言う人もいそうです。
「いっそのこと、西日本は、いまより1時間遅らせて北京に合わせよう。これは道州制時代にもってこいではないか。
東日本は2時間早めて、東京をロンドン、ニューヨークと並ぶ世界の金融センターにする。外資系企業を取り込み、成長のエンジンとする。
西日本は、いまよりも1時間遅らせて北京時間と合わせ、いわば東アジア標準時にする。それによって時差もシームレスになり、東アジアとビジネスがしやすくなる。アジアの成長を取り込める!」
┐(  ̄ー ̄)┌ドーダ
書いていていやな気分になりますが、最近の風潮だと、こんな案が提出されることもあながち否定できないように思います。竹中平蔵先生でしたら、たぶん褒めてくれる提案ではないでしょうか。
ですが、国内に時差を設けるというのは、日本をとりまく現在の国際情勢では絶対しない方がいいですよね。国民の一体感や連帯意識が損なわれるからです。
時差を設けたら、きっとテレビのニュースなどは、別に作らざるを得なくなるでしょう。生活のそのほかの面でも、国民の一体感や連帯意識(仲間意識)が薄れてくる恐れがあります。
たとえば中国はそのあたり、よくわかっているようです。
中国はあんなに国土が広いのに、中国国内には時差はありません。なかば強引に北京を標準とする時制のみでやっています。もちろん、国土が広いので、たとえば北京で夜が明けても西部のウイグルなどはまだ真っ暗らしいのですが。
中国政府が時差を設けようとしないのは、もともと中国は、分裂圧力が非常に強い国だからでしょう。おそらく時差を作ると、ウイグル、チベットなど西部の人々は、北京などに一体感をますます感じなくなり、民族意識が高まり、独立運動がさらに活発化するという懸念があるからだと思います。時差を設けることは、国民の連帯意識にとってはマイナスです。
国民の一体感や連帯意識というのは、ふだんあまり意識しないですが、実はすごく大切です。
たとえば、福祉政策一つ取り上げてみても、結局は、「同じ日本人だから」という国民の連帯意識に基づく国民の助け合いのうえに成り立っています。
震災のような大災害が起こった時でも、結局のところ頼りになるのは国民の相互扶助の精神以外にありません。
もちろん、国防や領土の保全でも、最後のよりどころは国民の連帯意識でしょう。
最近、中国は沖縄を狙っていることを隠そうともしません。日本の他の地域と、沖縄との分断を願っているようです。
日本は中国などと違い、国民の一体感や連帯意識は十分強い国柄ですから、余計なことをしなければ今と同じように保たれていくと思います。
ただ、最近は、道州制(地域的分断)にしろ、大学入試でのトーフル採用や英語を使う授業の大幅増加の提案(言語的分断)にしろ、国民の連帯意識をわざわざ壊そうとする提案がなぜか多いですからね。ちょっと心配です。
(ついでにいえば、秋入学の提案は、世代的分断につながるかもしれません。秋入学がもし、小中高、大学と、全面的に導入されるようなことがあれば、4月入学世代の我々と、記憶や感性を共有しなくなる子が増えていくのではないでしょうか。)
日本国内に時差を導入しようなどという提案がもしあったら、一番喜ぶのは、中国でしょうね。道州制もそうかもしれません。
「グローバル化」と言われる現代だからこそ、国民の連帯意識を壊さぬよう政府や政治家は慎重に配慮する必要があるはずです。
猪瀬東京都知事も、東京のことだけでなく日本全体を、そして金融などだけでなく国民生活のさまざまな側面を、よく考慮したうえで政策を練ってもらいたいものだと思います。
いつもながら、飛躍の多い長話、失礼しますた…
<(_ _)>
P.S
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上記の本のトークイベント。怒れる男の一人、関岡英之氏が登壇します。
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=718
P.P.P.S
明日の放送です(^_^)
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=718
◆三橋貴明の「新」日本経済新聞 http://www.mitsuhashitakaaki.net/
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