この物語は1・2・3がございます。


 
 
 
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夕暮れが迫り、
氷の寒さも迫って来ました。
ツルの祭典はあと一羽の踊りを残すのみとなっています。
 
 
 


西の風と南の雲に連れられきたあのツルが、
そっと舞台にのりました。
このツルは大きくてりっぱ、というほどではありません。
 
 
 


大舞台で緊張し、
自分の未経験さに震えてる、やせっぽちなツルでした。
 
 
 
 
 
 
 
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太陽は沈もうとしています。
残された時間はわずかでした。
谷を渡る風が踊りを始めるよう促しました。






とうとう彼女は翼を開きました。
体はひらりと浮き上がり、谷に沈んだ冷気と共に回転します。





***それは不思議な踊りでした。***
 
 
 
 


彼女が何について踊っているのか、なかなか皆に伝わりません。
太陽は西の峰に落ちて行きます。





彼女は冷気を吸いました。
深紫の空を吸いました。
そして・・・舞台にいるのを忘れました。





***西の風がはるか上空で笑っています***
 
 
 
 
 
 
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彼女の心は拡がり、全世界を包みました。
 
 
 


ほっそりした足はほとんど地面を踏まず、
風は彼女を支え、最後の緋色がさみしげに氷の舞台に映ります。





観客のツルたちは息をのんで見守りました。
その踊りは「友情」でもなく、「愛情」とも違い、
「うれしさ」や「悲しみ」「嘆き」「怒り」とも違いました。
 
 
 


***南の雲が微笑んでいます***
 
 
 


舞っているツルはもうどこも見ていません。
ただ・・・・・星のかなたのことだけを知っていました。
 
 
 


太陽はほとんど姿を隠しました。
濃紺が東の空からやって来ます。
もう光をまき散らすことはできません。
 
 
 


踊り子のツルは影となり、
息を吐き、繊細な翼は何かを訴えました。
 
 
 


・・・その時でした。
ツルたちは一斉に彼女の舞いを理解しました!
 
 
 
 
 
 
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≪そうか・・・・・・・・・! 
これは、”切なさ”だ≫
 
 
 


そのダンスはまるで涙でした。
悲しみに包まれた愛でした。
そして忘れ去られた自分への慈しみでした。





ツルたちは心を揺さぶられ、
自分自身の中にある、
遠のいていた大切な物語を思い出しました。
すべてのツルが涙をこぼさず泣きました。






やがて太陽は峰に消え、
踊り子のツルは最後の羽ばたきを終え、
氷の上に倒れました。





けれど激しい鼓動は、
やせた胸の中でしっかりと生きています。
彼女は限界を踊りました。
 
 
 
 


闇が完全に谷を覆っています。
聖なるツルの祭典は、終わったのです。
 
 
 


 
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