ウタマロ物語をお届けします。

1〜5の連作ですが、3分ほどで読めると思います。

お楽しみください。

 

 

 

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あるところに躍ることが大好きな、

無邪気なツルがおりました。
大きな白い羽、しなやかな首、美しい声の持ち主でした。

 

 

 



のびやかなダンスはお日様の光を浴び、
冷気の中でキラキラ光をまき散らします。





そのツルの願いは、ずっと遠くの有名な谷で開かれる
『ツルの祭典』で自分のダンスを踊ることでした。

 

 

 

 

 

 

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ところがそれを聞いた、

老いたツルの教師が言いました。

 

 

 


「お前はなにを勘違いしているんだね?
あの祭典に行くには、たくさんの段階があるんだよ」




「それはなあに?」

無邪気なツルは尋ねました。




「まずは”ここで”踊ることさ。
この村で少しずつ有名になって認めてもらうのさ。


そして町に出て、認めてもらい、
隣町でも認めてもらい、そのまた隣町でも認めてもらう・・・。


そうなったら『ツルの祭典』に出ることを考えてやってもいいよ
それが昔からのやりかたなんだよ」

 

 
 
 
 
 
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無邪気なツルはがっかりしました。
彼女は今すぐにでもあの谷に飛んで行きたかったからです。




それを見て老いたツルの教師はくりかえします。




「いいかい、それが昔からのやりかたなんだよ。
だいたいお前は方向音痴、
一人でなんか行けっこないよ。
その上あそこは遠いんだ。
お前の華奢な体力じゃ、どう考えたってとても無理」
 
 
 

そう強く言って去りました。





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その晩、美しい月夜でありました。
けれどもツルはうなだれます。
 
 
 
 
 
なぜかって、
このツルは踊ることしかできないからです。
 
 
 
 
どこに憧れの谷があるのか、
どうやったらそこまで飛べるのか…。
何にも知らない世間知らずでありました。
 
 
 
 
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やがてお月様は去り、霧が晴れ、
真新しいお日様が現れようとしています。
冷えきった大気が目覚めようとしています。
 
 
 
 
 
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……その時でした。
 
西の風と南の雲がやってきました。
 
 
 
 

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物語は2へ続きます。