この物語はツルの祭典1:
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の続きです。
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太陽が向こうの峰から顔を出した時、
西の風と南の雲がやってきました。
彼らはツルを見下ろしました。
ツルは濡れた瞳で見上げました。
冬の精霊が支配する大気に、
お日様の光が砕けたような、
氷のかけらが舞っています。
「おはよう!」西の風と南の雲が上機嫌に言いました。
「おはよう!」西の風と南の雲が上機嫌に言いました。
「おはようですって?
私はこんなにふさいでいるのに」
ツルは不機嫌につぶやきました。
「あなたの望みを知っている」
西の風が陽気に言いました。
「それにしてもあなたのダンスはおもしろい」
南の雲が歌うように言いました。
「それで、我々はあなたと共に旅をしようとやって来た」
風と雲が口をそろえて言いました。
「それはどういうことなのかしら?」
ツルは不思議そうに訊きました。
「ツルの祭典へ行こうと誘っている。あの谷へ!」
風と雲が力強く言いました。
ツルは再び泣きました。
今度は感謝の涙でした。
風のない冷気を舞っていた氷の破片は消え、
その奥で、青い青い空が笑っていました。
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ツルの祭典が開かれる特別な谷は、
世界で一番高い山の、
その中腹にありました。
高い峰を越え、雪嵐を通過し、
孤独な旅を何日も何日もする遠い場所です。
ツルはそんなことは知りません。
彼女にとって初めての長旅でした。
「あたしもうダメ、飛べないわ」
すぐに弱気で泣き出しました。
吹雪の中を飛んでいました。
すると西の風が言いました。
「そうだね、あの谷には銀色に凍りついた草むらがある」
「銀色に凍りついた草むら?
あたしそれが見てみたい」
ツルは再び上昇しました。
ツルは再び上昇しました。
また何日か飛びましたが、
ツルは涙声で言いました。
「あたし・・・やっぱり無理みたい。
だってだって遠すぎるもの・・・」
ツルは凍えた上に空腹でした。
すると南の雲が言いました。
すると南の雲が言いました。
「あの谷の川は半分が流れているが、半分は凍っているんだ。
その凍った半分が白銀に光った舞台だよ」
「白銀の舞台?」
ツルの心は惹かれました。
「あたし、そこで踊ってみたい」
「そうこなくちゃ!」
西の風が言いました。
「あと7日はかかるけどね」
南の雲がこっそり言いました。
けれどもそれは幸か不幸か、ツルには聞こえませんでした。
***
西の風は正しい方角を指し示し、
南の雲は疲れたツルをそっと支えて、
とうとう神聖な谷にやって来ました。
最後の峰を越えた時、たくさんのツルが集まる、
白い白い谷が見えてきました。
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物語は次に続きます。
ツルの祭典3