アンドロイドばぁば
第十二話
※シェルタ。
気を失った忍者のひとりをバックスがアームに携えて来た。
「ばぁば!」
「怪我は無いか!」
「オーライ」
「ばぁば…手、大丈夫?なの」
バックスは両手の甲にざっくりと傷を負っていたが、人工皮膜が破れていただけで…もちろん痛みなど感じていない。
心配そうに眺める瞬と美瑠紀。少し離れて武満は近寄るタイミングを失っている。
「そいつ…寝てるのか」
(グゥ……ピィィィィ)
バックスが唐突にイビキを真似た。
「ハッ……ハハハ」
武蔵が笑うと、瞬は何を思ったのか、急にバックスに抱きついて頬擦りをし始める。
「ばぁば…痛くない?ねっ僕がおまじない。したげよか?」
「しゅぅんってば」
「いいじゃないか…」
「ねぇばぁば…いっしょに寝よ、ねぇ」
「脳天気な奴だ…」
武蔵が言うと、武満は満面の笑みを浮かべた。
「うっ」
忍者の男が目を醒まし、躯の痛みに顔を歪めた。
「オイ!お前!」
武蔵はまだ下を向いたままの男を威嚇した。
「…誰だ」
男が顔をあげた。
わざと薄暗くしたシェルタでは目をいくら細めても男の視野に家族の輪郭すらぼやける。
「…俺をどうする積もりだ」
美瑠紀は改めて男に突かれると、無策だったことに気づいた。
「フンッ…素人が」
するとバックスは男を掴んだアームをぐんと伸ばした。
「おっおい!」
うろたえる男を壁の角まで持ち上げると、設置されていた金属性のフックに特性のバンドを一瞬で巻き付けた。
「オイ!放せ!」
「コンプリート」
気のせいかバックスが笑ったように見えた。
「ねぇっみんな見た?今ね、ばぁばが笑ったよ」
瞬が必死で訴える。
「ロボットは笑ったりしないよ」
武蔵は冷たくあしらう。
「そうとは決まってないよ」
美瑠紀が言った。
「俺もそう想う」
肩を並ばせ武満も言う。
「父ちゃんまで」
人知れず武蔵は、武満の強い想い入れがこれ以上大きくなるのではと案じていた。
「オイ!下ろせ!たたじゃ済ませねぇぞ!」
武蔵の心配をよそに叫びだす男。
「お前らの目的は何や」
バックスが西岸の声になったと想うと、いきなり男を見据えて言った。
「カール…」
「何千年も続いたもんを……また始める気ぃか」
「何をほざきやがる!」
「お前らのせいで世界中が怯えとる」
「はぁっ!俺たちに怯えてるってか、お前らはお前らの亡霊に追い詰められてるだけだ」
「何を血迷うとる」
「いいコちゃん面した奴らが、ここぞとばかり!便乗しやがる!その内にバカな官僚どもも血祭りにあげられるだろうよ」
(ウィィィンカシャッ)
「止めろ…………」
「黙らんかい」
「おじさん!」
「何するんだ」
「心配しなやお嬢ちゃん……。武満ぅ」
「何だ」
「そこのボクちゃん、どこぞに連れて行ってんか…」
慌てた武満が瞬を連れ出すと、バックスの目つきが変わった。
「さぁ…全部教えて貰うとするか」
アームで締め付けられた男はまったく威勢を吸い取られたように大人しくなった。
(シュュュッウォン…トットトットトット)
「お嬢ちゃん」
「あっはい」
「バックスに命令してくれんか」
「はい…何て」
「転送、言うてくれるかな」
「ばぁば…」
「オーライ」
「転送!」
「エンター」
(ブィィィィィン)
「あっアァァァ!」
絶叫する男。
西岸はバックスのアームに内蔵されている電子抽出装置で男の脳内を刺激し、記憶中枢の言語化を謀った。
続く
※シェルタ。
気を失った忍者のひとりをバックスがアームに携えて来た。
「ばぁば!」
「怪我は無いか!」
「オーライ」
「ばぁば…手、大丈夫?なの」
バックスは両手の甲にざっくりと傷を負っていたが、人工皮膜が破れていただけで…もちろん痛みなど感じていない。
心配そうに眺める瞬と美瑠紀。少し離れて武満は近寄るタイミングを失っている。
「そいつ…寝てるのか」
(グゥ……ピィィィィ)
バックスが唐突にイビキを真似た。
「ハッ……ハハハ」
武蔵が笑うと、瞬は何を思ったのか、急にバックスに抱きついて頬擦りをし始める。
「ばぁば…痛くない?ねっ僕がおまじない。したげよか?」
「しゅぅんってば」
「いいじゃないか…」
「ねぇばぁば…いっしょに寝よ、ねぇ」
「脳天気な奴だ…」
武蔵が言うと、武満は満面の笑みを浮かべた。
「うっ」
忍者の男が目を醒まし、躯の痛みに顔を歪めた。
「オイ!お前!」
武蔵はまだ下を向いたままの男を威嚇した。
「…誰だ」
男が顔をあげた。
わざと薄暗くしたシェルタでは目をいくら細めても男の視野に家族の輪郭すらぼやける。
「…俺をどうする積もりだ」
美瑠紀は改めて男に突かれると、無策だったことに気づいた。
「フンッ…素人が」
するとバックスは男を掴んだアームをぐんと伸ばした。
「おっおい!」
うろたえる男を壁の角まで持ち上げると、設置されていた金属性のフックに特性のバンドを一瞬で巻き付けた。
「オイ!放せ!」
「コンプリート」
気のせいかバックスが笑ったように見えた。
「ねぇっみんな見た?今ね、ばぁばが笑ったよ」
瞬が必死で訴える。
「ロボットは笑ったりしないよ」
武蔵は冷たくあしらう。
「そうとは決まってないよ」
美瑠紀が言った。
「俺もそう想う」
肩を並ばせ武満も言う。
「父ちゃんまで」
人知れず武蔵は、武満の強い想い入れがこれ以上大きくなるのではと案じていた。
「オイ!下ろせ!たたじゃ済ませねぇぞ!」
武蔵の心配をよそに叫びだす男。
「お前らの目的は何や」
バックスが西岸の声になったと想うと、いきなり男を見据えて言った。
「カール…」
「何千年も続いたもんを……また始める気ぃか」
「何をほざきやがる!」
「お前らのせいで世界中が怯えとる」
「はぁっ!俺たちに怯えてるってか、お前らはお前らの亡霊に追い詰められてるだけだ」
「何を血迷うとる」
「いいコちゃん面した奴らが、ここぞとばかり!便乗しやがる!その内にバカな官僚どもも血祭りにあげられるだろうよ」
(ウィィィンカシャッ)
「止めろ…………」
「黙らんかい」
「おじさん!」
「何するんだ」
「心配しなやお嬢ちゃん……。武満ぅ」
「何だ」
「そこのボクちゃん、どこぞに連れて行ってんか…」
慌てた武満が瞬を連れ出すと、バックスの目つきが変わった。
「さぁ…全部教えて貰うとするか」
アームで締め付けられた男はまったく威勢を吸い取られたように大人しくなった。
(シュュュッウォン…トットトットトット)
「お嬢ちゃん」
「あっはい」
「バックスに命令してくれんか」
「はい…何て」
「転送、言うてくれるかな」
「ばぁば…」
「オーライ」
「転送!」
「エンター」
(ブィィィィィン)
「あっアァァァ!」
絶叫する男。
西岸はバックスのアームに内蔵されている電子抽出装置で男の脳内を刺激し、記憶中枢の言語化を謀った。
続く
アンドロイドばぁば
第十一話
※浜辺。
黒づくめの男は忍者。 ナパーム銃をバックスに向けると矢継ぎ早、撃ち続ける。銃口から飛んだ銃弾がバックスのフォーカシングに映る。
100万分の1のスピードで換算された銃弾は撃っても撃ってもバックスにかすりもしない。
苛立った男。
「チックショ!」
(接近戦モード)
バックスの網膜スクリーンに点灯するや、否や。
(ブァッビィィィン)
踵に装備されている高速ジェットエンジンが起動した。
あらかじめ測定していた間合いにぐっと近づく。
「ぐぉっ……ぐぐっ」
男の喉元にはバックスの左手ががっちりと収まっていた。
「だから甘く見るなと言ったんだ!」
別の男は鞭を鳴らして現れた。鞭を打つ度に高圧電流を放電し、いともたやすく打たれた物体は粉々に割れ吹き飛ぶ。
それでも動じないバックス。奴らも怯むことなく半径十メートルほどの間合いに詰めてきた。
瞬きする間もなく部下数名に取り囲まれ、次の策がフリーズする。
(ばぁば!ばぁば!)
(応答)
「ミルキ」
(そだよ、ばぁば)
「ミルキどうする」
(逃げて!)
「ニゲル?」
(そだよ、その男、背中のアームで捕まえたまま!とにかく走って!)
「エンター」
(ブァッビィィィン)
再びエンジンが起動する。フルパワーに加速するバックスの力に忍者達は成す術もなく。枯れ葉が舞うが如く一気に飛ばされる。
「グワッ!」
「ウォォォ!」
(ドゥフッ)(バサッ)
「オォイ!何とかしろっ………」
(ばぁば!)
「ミルキ…ネクスト」
(奴らが見えない所に隠れて!)
そうしている時。もうひとりの男が舌打ちして言った。
「バカな奴だ。」
(ヅギュン!)
放たれた鞭は砂を巻き込んだ。いったん蛇がトグロを巻くように力を溜め込むと、さっきまで見事に20世紀を象った風景が無惨に切り刻まれていったのだ。
まだバックスは美瑠紀との通信を続けていた。
(ばぁば!赤外線スコープON)
(ウィィィンピピ)
バックスのAIがシェルタの裏口を感知した。
(そこだよ、ばぁば、)
「コンプリート」
(次はそいつの視力を弱くして!)
(あっ痛くしちゃダメだからね)
「エンター」
(ウィィィンカシャッ)
バックスの右肩からアームが飛び出して、男の前頭部を覆い隠す。
「おっオォイ…何する積もりだ!」
がっちり挟んだアームの中心部分から特殊な光線が網膜に発射された。
「ウゥッ……。」
(左右視力…0.02)
バックスの網膜スクリーンに点灯した。
(それじゃばぁば…連れて来ていいよ)
「エンター」
※忍者アジト。
「はっはっはっは…」
忍者の第二の頭目。フジナミが高笑いしていた。
「お前達の手際の良さには恐れいったよ!ロボットごときに一団脆とも吹き飛ばされたぁ?んぁっ?…飛んだエリートだよ!!!どの面下げてノコノコ帰って来た!」
「頭目!今度こそ!」
「……お前らに明日は無い……。」
(ズバッ)
「ウゥッ…」
四方から放たれた針が一団それぞれの頸動脈を貫通した。
「お前らは廃人だ」
忍者は四派から構成され、中でもこのフジナミが率いる軍団が、非情で残虐だった。
残りの三派の内にもアラキと言う男の一派があるが、それらには冷酷さに秘められた計算高さがあった。
故に無益な破壊も略奪もすることはない。
忍者の中でもアラキは別格に扱われていた。
フジナミはそれが気に入らない。
黙ってアラキの出世を見過ごすフジナミではなかった。
「奴らが先か…俺が先か…勝負だ」
続く
※浜辺。
黒づくめの男は忍者。 ナパーム銃をバックスに向けると矢継ぎ早、撃ち続ける。銃口から飛んだ銃弾がバックスのフォーカシングに映る。
100万分の1のスピードで換算された銃弾は撃っても撃ってもバックスにかすりもしない。
苛立った男。
「チックショ!」
(接近戦モード)
バックスの網膜スクリーンに点灯するや、否や。
(ブァッビィィィン)
踵に装備されている高速ジェットエンジンが起動した。
あらかじめ測定していた間合いにぐっと近づく。
「ぐぉっ……ぐぐっ」
男の喉元にはバックスの左手ががっちりと収まっていた。
「だから甘く見るなと言ったんだ!」
別の男は鞭を鳴らして現れた。鞭を打つ度に高圧電流を放電し、いともたやすく打たれた物体は粉々に割れ吹き飛ぶ。
それでも動じないバックス。奴らも怯むことなく半径十メートルほどの間合いに詰めてきた。
瞬きする間もなく部下数名に取り囲まれ、次の策がフリーズする。
(ばぁば!ばぁば!)
(応答)
「ミルキ」
(そだよ、ばぁば)
「ミルキどうする」
(逃げて!)
「ニゲル?」
(そだよ、その男、背中のアームで捕まえたまま!とにかく走って!)
「エンター」
(ブァッビィィィン)
再びエンジンが起動する。フルパワーに加速するバックスの力に忍者達は成す術もなく。枯れ葉が舞うが如く一気に飛ばされる。
「グワッ!」
「ウォォォ!」
(ドゥフッ)(バサッ)
「オォイ!何とかしろっ………」
(ばぁば!)
「ミルキ…ネクスト」
(奴らが見えない所に隠れて!)
そうしている時。もうひとりの男が舌打ちして言った。
「バカな奴だ。」
(ヅギュン!)
放たれた鞭は砂を巻き込んだ。いったん蛇がトグロを巻くように力を溜め込むと、さっきまで見事に20世紀を象った風景が無惨に切り刻まれていったのだ。
まだバックスは美瑠紀との通信を続けていた。
(ばぁば!赤外線スコープON)
(ウィィィンピピ)
バックスのAIがシェルタの裏口を感知した。
(そこだよ、ばぁば、)
「コンプリート」
(次はそいつの視力を弱くして!)
(あっ痛くしちゃダメだからね)
「エンター」
(ウィィィンカシャッ)
バックスの右肩からアームが飛び出して、男の前頭部を覆い隠す。
「おっオォイ…何する積もりだ!」
がっちり挟んだアームの中心部分から特殊な光線が網膜に発射された。
「ウゥッ……。」
(左右視力…0.02)
バックスの網膜スクリーンに点灯した。
(それじゃばぁば…連れて来ていいよ)
「エンター」
※忍者アジト。
「はっはっはっは…」
忍者の第二の頭目。フジナミが高笑いしていた。
「お前達の手際の良さには恐れいったよ!ロボットごときに一団脆とも吹き飛ばされたぁ?んぁっ?…飛んだエリートだよ!!!どの面下げてノコノコ帰って来た!」
「頭目!今度こそ!」
「……お前らに明日は無い……。」
(ズバッ)
「ウゥッ…」
四方から放たれた針が一団それぞれの頸動脈を貫通した。
「お前らは廃人だ」
忍者は四派から構成され、中でもこのフジナミが率いる軍団が、非情で残虐だった。
残りの三派の内にもアラキと言う男の一派があるが、それらには冷酷さに秘められた計算高さがあった。
故に無益な破壊も略奪もすることはない。
忍者の中でもアラキは別格に扱われていた。
フジナミはそれが気に入らない。
黙ってアラキの出世を見過ごすフジナミではなかった。
「奴らが先か…俺が先か…勝負だ」
続く
アンドロイドばぁば
第十話
※鯛我家。
バックスの腕の中で美瑠紀はぐったりしていた。
「ミル!」
「お姉ちゃん!」
「何をしたんだっ」
いっせいに駆け寄る家族たち。
それをよそに、美瑠紀は
バックスの腕の中で大あくびして起きる。
「あ、みんな…」
「ミル!お前…何ともないのか?」
「うんっ」
「驚かすなよ」
「カールの奴が何かしたのか」
「人聞き悪いこと言いなや…」
再び西岸がバックスの唇を動かす。
「嘘じゃないだろな」
「ホンマや」
バックスが美瑠紀を床に下ろすと、美瑠紀の瞳をフォーカスした。
「お祖父ちゃん、おじさんは何もしてないよ」
「……本当か?」
「ホントっ」
バックスはただ眺めているだけだ。
(ピッピッピッピッ)
「あっ……」
バックスの信号に美瑠紀は反応し、その瞬間西岸も送信を切った。
美瑠紀の脳裏に地面が揺れ動き、逃げ惑う人々が浮かんだ。
「あぁあ…」
突然怯える美瑠紀。
「どうしたんだっ」
「あぁあ…壊れてく」
「何がだっ…ミル」
「みんなが…みんなが」
瞬きもせずに脳裏の映像に集中する美瑠紀。
「みんなって…」
「ミルは何かが見えてるのか…」
武満はそう呟いて、美瑠紀の能力に気づいた西岸の仕業に違いないことを確信している。
非常事態である今、同時に美瑠紀に託す西岸の意思をも感じ取っていた。
「お父さん…何かが私たちを狙ってる」
「何だって…」
美瑠紀の真実めいた言葉には、裏打ちされた過去があった。
※五年前の出掛け先。
あるショッピングモール の屋上に設置された無重力観覧車を目の前にした美瑠紀が、急に乗りたくないと言い出した。
「どうしたんだミル?あんなに乗りたがってたじゃないか」
「エアタクシーがぶつかるよ」
「何言ってんだ?」
その時、俄かに周囲が騒ぎ立てた。
「おっオォイ!逃げろ!逃げろ!」
「キャア!」
「〇〇ちゃぁん!!」
前方二百メートル先、観覧車の予想だにしなかった光景が武蔵と美瑠紀の 目に映し出された。
有ろうことか後方の人工森林から木々の葉を散らしながら、エアタクシーが猛スピードで観覧車に衝動したのだ。
茫然とする武蔵。
※再び鯛我家。
「ミルそれは近くに」
「うん…ココに」
美瑠紀は表情を歪め地面を指差した。
すると、バックスが辺りを探る態勢を見せる。
(ウィィィンビゥン)
まさに目も眩むような瞬間だった。武蔵と美瑠紀の躯が宙に浮いていた。
(ドゥッキゥィィン!)
瞬時の出来事だった。 家は無数の破片になって飛び散る。
炎が空中高く舞い上がり、火の玉は次つぎに襲いかかってきた。
「お姉ちゃゃん!!」
「瞬!逃げて!」
「武蔵っ」
「逃げろ!!」
その間も辺りの数軒並ぶ家に火の粉が移る。
それらには端から誰も住んではいない。見せかけの…風景の一部に過ぎない。姿も見せない奴らは、明らかに鯛我家を狙っているのだ。
「いいか!あの岩陰にシェルタがある!そこまで…」
武満が言い終わらない間に、バックスが次の動きに出た。
「みんな隠れて」
「あっ…ばぁば」
「バックスが…喋った」
「もうすぐ奴らが来る」
「奴ら?」
「早く!」
バックスの背中から再びマジックハンドが四本飛び出し、それぞれを掴み上げるとシェルタに向かって走り出した。
「ウォォ」「ウワァッ」
「ばぁば凄ぉい!」
シェルタはまるで家族たちを待っていたかのように開き、ニョロリと伸びたバックスのマジックハンドを受け入れた。
「お前か!アンドロイドは!」
(プロファイリング)
バックスのAIが夥しい電気信号で溢れた時。
「どの程度の能力か…お手並み拝見だ」
黒づくめの男は囁くように告げると。
握っていた小形ナパーム銃の引き金を弾いた。
続く
※鯛我家。
バックスの腕の中で美瑠紀はぐったりしていた。
「ミル!」
「お姉ちゃん!」
「何をしたんだっ」
いっせいに駆け寄る家族たち。
それをよそに、美瑠紀は
バックスの腕の中で大あくびして起きる。
「あ、みんな…」
「ミル!お前…何ともないのか?」
「うんっ」
「驚かすなよ」
「カールの奴が何かしたのか」
「人聞き悪いこと言いなや…」
再び西岸がバックスの唇を動かす。
「嘘じゃないだろな」
「ホンマや」
バックスが美瑠紀を床に下ろすと、美瑠紀の瞳をフォーカスした。
「お祖父ちゃん、おじさんは何もしてないよ」
「……本当か?」
「ホントっ」
バックスはただ眺めているだけだ。
(ピッピッピッピッ)
「あっ……」
バックスの信号に美瑠紀は反応し、その瞬間西岸も送信を切った。
美瑠紀の脳裏に地面が揺れ動き、逃げ惑う人々が浮かんだ。
「あぁあ…」
突然怯える美瑠紀。
「どうしたんだっ」
「あぁあ…壊れてく」
「何がだっ…ミル」
「みんなが…みんなが」
瞬きもせずに脳裏の映像に集中する美瑠紀。
「みんなって…」
「ミルは何かが見えてるのか…」
武満はそう呟いて、美瑠紀の能力に気づいた西岸の仕業に違いないことを確信している。
非常事態である今、同時に美瑠紀に託す西岸の意思をも感じ取っていた。
「お父さん…何かが私たちを狙ってる」
「何だって…」
美瑠紀の真実めいた言葉には、裏打ちされた過去があった。
※五年前の出掛け先。
あるショッピングモール の屋上に設置された無重力観覧車を目の前にした美瑠紀が、急に乗りたくないと言い出した。
「どうしたんだミル?あんなに乗りたがってたじゃないか」
「エアタクシーがぶつかるよ」
「何言ってんだ?」
その時、俄かに周囲が騒ぎ立てた。
「おっオォイ!逃げろ!逃げろ!」
「キャア!」
「〇〇ちゃぁん!!」
前方二百メートル先、観覧車の予想だにしなかった光景が武蔵と美瑠紀の 目に映し出された。
有ろうことか後方の人工森林から木々の葉を散らしながら、エアタクシーが猛スピードで観覧車に衝動したのだ。
茫然とする武蔵。
※再び鯛我家。
「ミルそれは近くに」
「うん…ココに」
美瑠紀は表情を歪め地面を指差した。
すると、バックスが辺りを探る態勢を見せる。
(ウィィィンビゥン)
まさに目も眩むような瞬間だった。武蔵と美瑠紀の躯が宙に浮いていた。
(ドゥッキゥィィン!)
瞬時の出来事だった。 家は無数の破片になって飛び散る。
炎が空中高く舞い上がり、火の玉は次つぎに襲いかかってきた。
「お姉ちゃゃん!!」
「瞬!逃げて!」
「武蔵っ」
「逃げろ!!」
その間も辺りの数軒並ぶ家に火の粉が移る。
それらには端から誰も住んではいない。見せかけの…風景の一部に過ぎない。姿も見せない奴らは、明らかに鯛我家を狙っているのだ。
「いいか!あの岩陰にシェルタがある!そこまで…」
武満が言い終わらない間に、バックスが次の動きに出た。
「みんな隠れて」
「あっ…ばぁば」
「バックスが…喋った」
「もうすぐ奴らが来る」
「奴ら?」
「早く!」
バックスの背中から再びマジックハンドが四本飛び出し、それぞれを掴み上げるとシェルタに向かって走り出した。
「ウォォ」「ウワァッ」
「ばぁば凄ぉい!」
シェルタはまるで家族たちを待っていたかのように開き、ニョロリと伸びたバックスのマジックハンドを受け入れた。
「お前か!アンドロイドは!」
(プロファイリング)
バックスのAIが夥しい電気信号で溢れた時。
「どの程度の能力か…お手並み拝見だ」
黒づくめの男は囁くように告げると。
握っていた小形ナパーム銃の引き金を弾いた。
続く