アンドロイドばぁば | iware-8940さんのブログ

アンドロイドばぁば

第十話

※鯛我家。

バックスの腕の中で美瑠紀はぐったりしていた。

「ミル!」
「お姉ちゃん!」
「何をしたんだっ」

いっせいに駆け寄る家族たち。
それをよそに、美瑠紀は
バックスの腕の中で大あくびして起きる。

「あ、みんな…」

「ミル!お前…何ともないのか?」

「うんっ」

「驚かすなよ」

「カールの奴が何かしたのか」

「人聞き悪いこと言いなや…」

再び西岸がバックスの唇を動かす。

「嘘じゃないだろな」

「ホンマや」

バックスが美瑠紀を床に下ろすと、美瑠紀の瞳をフォーカスした。

「お祖父ちゃん、おじさんは何もしてないよ」

「……本当か?」

「ホントっ」

バックスはただ眺めているだけだ。

(ピッピッピッピッ)

「あっ……」

バックスの信号に美瑠紀は反応し、その瞬間西岸も送信を切った。

美瑠紀の脳裏に地面が揺れ動き、逃げ惑う人々が浮かんだ。

「あぁあ…」

突然怯える美瑠紀。

「どうしたんだっ」

「あぁあ…壊れてく」

「何がだっ…ミル」

「みんなが…みんなが」

瞬きもせずに脳裏の映像に集中する美瑠紀。

「みんなって…」

「ミルは何かが見えてるのか…」

武満はそう呟いて、美瑠紀の能力に気づいた西岸の仕業に違いないことを確信している。
非常事態である今、同時に美瑠紀に託す西岸の意思をも感じ取っていた。

「お父さん…何かが私たちを狙ってる」

「何だって…」

美瑠紀の真実めいた言葉には、裏打ちされた過去があった。

※五年前の出掛け先。

あるショッピングモール の屋上に設置された無重力観覧車を目の前にした美瑠紀が、急に乗りたくないと言い出した。

「どうしたんだミル?あんなに乗りたがってたじゃないか」

「エアタクシーがぶつかるよ」

「何言ってんだ?」

その時、俄かに周囲が騒ぎ立てた。

「おっオォイ!逃げろ!逃げろ!」
「キャア!」
「〇〇ちゃぁん!!」

前方二百メートル先、観覧車の予想だにしなかった光景が武蔵と美瑠紀の 目に映し出された。
有ろうことか後方の人工森林から木々の葉を散らしながら、エアタクシーが猛スピードで観覧車に衝動したのだ。

茫然とする武蔵。

※再び鯛我家。

「ミルそれは近くに」

「うん…ココに」

美瑠紀は表情を歪め地面を指差した。

すると、バックスが辺りを探る態勢を見せる。

(ウィィィンビゥン)

まさに目も眩むような瞬間だった。武蔵と美瑠紀の躯が宙に浮いていた。

(ドゥッキゥィィン!)

瞬時の出来事だった。 家は無数の破片になって飛び散る。
炎が空中高く舞い上がり、火の玉は次つぎに襲いかかってきた。

「お姉ちゃゃん!!」

「瞬!逃げて!」

「武蔵っ」

「逃げろ!!」

その間も辺りの数軒並ぶ家に火の粉が移る。
それらには端から誰も住んではいない。見せかけの…風景の一部に過ぎない。姿も見せない奴らは、明らかに鯛我家を狙っているのだ。

「いいか!あの岩陰にシェルタがある!そこまで…」

武満が言い終わらない間に、バックスが次の動きに出た。

「みんな隠れて」

「あっ…ばぁば」

「バックスが…喋った」

「もうすぐ奴らが来る」

「奴ら?」

「早く!」

バックスの背中から再びマジックハンドが四本飛び出し、それぞれを掴み上げるとシェルタに向かって走り出した。

「ウォォ」「ウワァッ」
「ばぁば凄ぉい!」

シェルタはまるで家族たちを待っていたかのように開き、ニョロリと伸びたバックスのマジックハンドを受け入れた。

「お前か!アンドロイドは!」

(プロファイリング)

バックスのAIが夥しい電気信号で溢れた時。

「どの程度の能力か…お手並み拝見だ」

黒づくめの男は囁くように告げると。
握っていた小形ナパーム銃の引き金を弾いた。





続く