月山の何がそんなに良いの?ただの山じゃないの?行くまでは半信半疑だった。

月山を含む出羽三山への巡礼は古くから行われていたようで、特に江戸時代は〝西の伊勢参りと東の出羽三山参り〟と言われるほど庶民の間にも広まっていたようだ。

今のように飛行機やクルマを乗り継いで身軽気ままに訪れることはできなかったはずなので、まさしく〝一生に一度〟の一大イベントであったと思う。

阿蘇を思わせるような高原に、尾瀬を思わせるような木板の歩道が伝う。

弥陀ヶ原と呼ばれるこの清々しい湿原は、天空の楽園といった感じだ。

弥陀ヶ原だけの散策ならゆっくり歩いて1時間くらい。ぐるっと一周できるようになっている。春から夏にかけては花が絶えることはないそうだ。

月山本宮の鳥居をくぐると、木歩道に替わって岩の足場になる。ガレ場というほどでもないけれど、靴はしっかりしたものでないと足を痛めると思う。

途中、きつい勾配が数カ所あって息切れしたけれど、振り返ればいつでも鳥海山がずっと見守ってくれている。個人的に、山を見て美しいだとか、女性的だとか、そんな風に感じたのはこの鳥海山が初めてかもしれない。

出羽三山への巡礼は〝生まれかわりの旅〟なんて称される。羽黒山を現世に、湯殿山を未来に、そして月山を過去に見立てて生きながらにして新たな魂として生まれかわるのだそうだ。

月山八合目まではクルマで行き、そこから頂上までの往復で5時間くらいかな。ただぼくは平均的な人より健脚の部類かもしれない。
因みに、頂上の月山本宮は9月15日で閉まってしまうので御朱印は頂けない。残念...





羽黒山までは月山八合目からクルマで40分くらい。随神門から杉並木五重塔を経て羽黒山山頂の三神合祭殿までは、ずっと上りだけど歩いて1時間くらい。
時間や体力に余裕がなければ、合祭殿〜随神門を車で移動すればいい。10分前後である。

参拝者を見下ろす黒いのは〝力士〟だそうだけどまるでガーゴイル。もっとも魔除けだと思うけど、小さな子が怖がっていた。

合祭殿とこの鐘楼の見事な萱葺屋根には圧倒される。個人的にはどこか縄文弥生を感じて違和感すら覚えた。

末社もいくつかあって、どれも立派なものだが、中でも一際目を引いたのがこの健角身神社
足の弱い人が下駄を供えて健脚を祈る風習だそうだ。下駄に囲まれた〝土足厳禁〟の注意書きは味がある。

苔生す岩の奥には国宝の五重塔が。杜の中に溶け込んでいながらも煌びやかではない荘厳さが漂う。

思っていた以上に見応えがあって、国宝と言われるだけのことはある。






朝早くに月山を登ったので、羽黒山を廻り終えたのは2時半くらいだった。

今回は湯殿山へ行くには日程的に厳しいのでまた次回。

羽黒山から酒田市へ向かう途中にある三川町の道の駅に寄ってみた。

物産館で食べた鴨そばはコシが強く、汁の味は濃いめ。地元野菜が入っている。白いツミレみたいなのはお団子状のお米。




この道の駅。
隣の敷地には温泉があるではないか。
この温泉、井戸水を沸かして天然温泉を謳う類いかと思いきや、塩化物強塩温泉で、日に1回、5分以上浸からないようにと注意書きがある、けっこう本格的な温泉ではないか。

しかも宿泊施設も併設されていて、素泊りであれば4千円前後、2食付きでも7千円前後となっている。

庄内空港、出羽三山、鶴岡、酒田へのアクセスもよく、次来るときに利用しない手はない。

山形県東田川郡三川町大字横山字堤206
0235-66-5300



月山から眺める黄金色の庄内平野は圧巻だったけれど、やっぱり田んぼの中に身を置いて、黄金色に四方を囲まれてみるのがいい。

田んぼの向こうに見えるのは鳥海山。
この山が見えるとホッとすると感じる県外者は、きっとぼくだけではないはずだ。




つづく