山形県2日目。

月山、羽黒山を廻り終えてまだ時間があったので、酒田市の市街地にある山居倉庫に行くことにした。

この倉庫は明治26年に旧藩主酒井家によって建造された米穀倉庫で、なんと現在も農業倉庫として使われているらしい。

ガス燈みたいな灯りでライトアップして、中をカフェだとか地産地消フレンチとかにすれば、小樽のような観光スポット&一大商業施設になるのにと安易に考えてしまったけれど、なるほど、現役ならそうもいかない。もっとも、人出が少ない方が趣があっていいのかもしれない。

裏の欅並木は倉庫の日除け風除けとして植えられたそうだ。
ちょっとした〝映えスポット〟になっていて、カメラを提げた人たちが暗黙の了解で不用意に歩かないようにしているのが微笑ましい。



まったく店がないかと言うとそうではなく、一画に軽食や土産品の店がある。中では〝おしん人形ギャラリー〟なるものが展示されていた。

そう、酒田市は〝おしん〟の舞台なのだ。

そう言えば、20年前にキューバへ行ったとき、おしんがキューバの国民的ドラマになっていたのには面喰らった。
日本人だとわかると OSHIN! OSHIN! うるさかった。はじめは言っている意味がわからなくて、スペ語辞書で OSHIN を引いたりもしたっけ。

お店は18時に閉まるので、そのくらいになるとかなり閑散とする。

山形県に限ったことではないのかもしれないけれど、観光地のお店って意外と閉まるのが早く、夜でも開いているお店ってあまりない。なので夕方からの時間を如何に有効に使うかが旅行のポイントの一つだと思う。

そしてもう一つ感じたのが、ご当地グルメの店はむしろ東京の方が多いということ。
きっと地元の人はわざわざご当地モノを外で食べる必要がないからだろう。

ぼくの場合、そんなときは決まって地元のスーパーなどでご当地っぽい惣菜なんかを買って地酒だとか地ビールなんかで部屋呑みをする。

この日はしそ巻き味噌玉こんにゃく山形産チーズをあてにどぶろくを堪能した。
どぶろくってもっと流行ってもいいと思う。





山形県3日目の最終日。

早々にホテルのチェックアウトを済ませて向かったのが最上川の河口にある日和山公園

奥の細道で有名な松尾芭蕉も訪れたところだ。
芭蕉と言えば、芭蕉=服部半蔵説がとても興味深い。

展望台からは昨日登った月山の全貌が。
ところで、月山は登山者の間で〝ガス山〟とあだ名をつけられるほど霞んでいることが多いのだとか。

ぼくは晴れることが最も多い日に生まれた根っからの晴れ男。昨日は当初、曇り時々雨の予報だったけれど、ほどよく真っ白い雲が青空に浮かぶ最高の秋晴れだった。今日はにわか雨だけど...

灯台の周りには桜の木が植えられているので、春はきっと大勢の人で賑わうのだろう。



山形には朝からラーメンを食べる習慣があるという。実際、朝からやっているラーメン店は少なくないようだ。日和山公園からほど近い酒田港でラーメンを食べようと思っていたら、朝9時で一旦店を閉めるとのこと。9時ごろ食べようと思っていたのに...

そこで再度、酒田ラーメンについて調べてみると、どうやら月系という一派があるらしく?その中でも三日月軒というお店が高評価なので、10時半の開店と同時に行ってみることにした。


酒田ラーメンの特徴は、しょうゆ味のスープ極薄ワンタンということで、チャーシューワンタン麺を注文。

あ、これ懐かしい。
典型的な中華そばっていうのかなぁ。ラーメンブームより前のラーメンってみんなこんな感じだったと思う、昭和的な。
ラーメンについては蘊蓄を垂れるほど詳しくないのでハッタリはやめておくけど、個人的にスタンダードなラーメンというのはこれ。美味しかった。


帰りの便まで時間があるけれど小雨が降っている。時間潰しと割り切って行ったのが土門拳記念館

もともと写真が好きなので土門拳の名前は知っていたが、どんな人物でどんな主義主張があったのか、そこまではよく知らなかった。
 
酒田市名誉市民第1号?
え、純然たる酒田市民ではなかったんかい...

酒田市で生まれ、6歳のときに一家で東京へ移住したそうだ。

時間潰しのつもりで訪れたけれど、この人の作品を見ているうちに、取留めのないことが次々と頭をよぎった。

(自分にも)違った生き方もあったなぁ... とか。
いや、決して写真家になりたかったとか、そういうことではない。
決して何かを後悔しているわけでもない。

ただ、人間の多才性というかポテンシャルの深さみたいなものに果てしなさを感じるのと、人類一人ひとりの生きざまを1ピクセルとした場合、77億画素って俯瞰したらどんな画像なのだろうかとか。

とにかく、作品一つひとつに、目から入って胸の辺りまで沁み渡るような、重みのある強烈なインパクトがあった。

そして、また写真やりたいなぁ、そんな気持ちになった。


かくして山形県2泊3日の旅行は終わったわけだけれど、初めに掲げた4つのテーマ(低予算、夕陽、軽登山、ご当地グルメ)はどれもカバーしたはず。

特に印象深かったのは、夕陽、月山、五重塔、土門拳、そして鳥海山。

あ、あとくぢら餅が絶品。鯨ではない。念のため。

飛行機、レンタカー、ホテル、飲食、土産などすべて含めて4万8千円。

これを高いと思うか安いと思うかはその人次第だけど、ぼくは大満足。

生まれかわりとまではいかなくとも、驚きや発見の多い、有意義な旅行であった。