仁はこういう奴だった。
そういえば、自分の方が慶よりかっこいいって言ったこともあったっけ…。だがしかし、納得するほどのイケメンぶりだ。何をしたって絵になる。
例えば、亜伊子を着飾るときに言った歯の浮くような言葉たち。義光に対する想い。時折り、俺に向けてくれた想い。そんなものにさえ、繊細な言葉で表現していた。
写真に口づけしている様を惚けるように見つめていると、印象的な緑の瞳はこちらを見た。
(ーーー好きだ…)
吸い込まれそう。そんな瞳に、心からそう思った。
ゆっくりと立ち上がると、義光のスウェットを着た仁は俺の前に立つ。
どちらとなく抱き合った。
会いたかった
会いたかった
会いたかった
仁の肩に鼻をこすりつけながら、こみ上げる想いがただ鼓動を早くする。
「会いたかった」
そう声に出したのは、仁だった。
「強く願いすぎたのかもしれない。
私は爆撃の中、敵陣から拠点へ帰るため奔走していた。帰らなければ、あとは囲まれて死ぬ他ないからな。
だがあの時、小型ミサイルが目の前で爆発してな。確実に粉々になると思った。
願えるのならばと、一度でいいからと、
………光也に会いたいと、願ってしまったんだ」
俺を抱きしめながら仁は淡々と語っていた。まるで懺悔をするかのように、言葉を紡ぐ。
そんなことしなくていい。だって俺は…。
「俺だって、会いたかったんだよ。なんでそんな謝るように言ってんだ」
そうだ、何度願ったことか。みんなをこの平穏な世界へ連れて帰りたいと。くやしくてくやしくて、泣き叫びたくてたまらなかったあの時。
そういうと、抱きしめていた腕を緩めて、仁は俺を見つめる。緑の瞳は、案じていた。
たぶん俺の行く末に、自分が加入することを。
「だから、ごめん、とか言うなよ?」
先に言ってやった。絶対、謝らせない。そう思ったから。
「…ばか…」
泣きそうな顔を隠すように、また俺を抱きしめて、仁は「離してやれないぞ」と言った。
その言葉だけでゆでダコのように赤くなった俺は俺で、それを隠すように仁を抱きしめる。
時計の針は、夕刻をとうにすぎていた。
