医療裁判の判決例や特許などを用いた、小川の講義や研究室配属での医療安全教育についての学会発表が、採択されました
〜医療の質・安全学会(11月24日〜25日、名古屋国際会議場)
(医学部大学等事件125)
<9月4日夜追記>
台風21号で死傷やその他のさまざまな被害が出ているようです。被災された方々に、お悔やみとお見舞いを申し上げます。
金沢大学では、午後の授業が中止になるとともに、至急の業務がない職員は早く帰宅するよう指示するメールが大学から配信されました(休暇届けは不要だとして帰宅を促すもの)。
石川県内のいくつかの電車やバスは、16時前後から運休しました。
<9月4日夜追記ここまで>
私が数年前から行っている、医療裁判の判決例や特許などを用いた講義や研究室配属での医療安全教育についての学会発表が、次の通り採択されました。
学会名:第13回 医療の質・安全学会 学術集会
会期: 2018年11月24日(土)〜25日(日)
場所: 名古屋国際会議場
小川の単独発表の演題
「医療裁判の判決例を用いた医学部低〜中学年における医療安全教育の有用性と課題」
この学会で、上記演題以外に、私が昨年から参加している医療安全関係のグループでの共同発表も予定しています。
採択された、私の単独発表の概要は下の通りであり、また、研究室配属授業の資料は、今年7月23日の本ブログの記事でアップしてあります。
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12392873605.html
医療裁判の判決例を用いた医学部低〜中学年における医療安全教育の有用性と課題
金沢大学・医学系 分子情報薬理学 小川和宏
<背景と目的>
演者は薬物治療や薬理学、創薬などの教育研究に携わるとともに、医療事故の分析や患者・遺族側への医学文献の提供・解説なども行っており、前回は後者について報告した。
医学部教育において医療安全は残念ながら「花形」とは言い難く、加えて「医療事故」という語さえタブー視する構成員もいて、学生に早期より医療事故を身近に感じさせることが重要である。そのため演者は数年前より、薬物治療領域の医療裁判判決例を用いた授業を行っており、今回はこうした教育の有用性や課題などを報告する。
<取り組みと結果>
2年生必修の「薬理学」の講義では、判決要旨あるいは判決文抜粋を配布し、国立大学法人やその部局長、国などとの訴訟で勝訴や勝訴的和解数件の経験を持つ演者が解説している。どういう注意不足が争点になったかに注目する学生が多く、授業後のアンケートで「なぜ危険かよくわかった」「身近な薬でも副作用は怖い」といった感想を、一定数以上の学生が書いてきた。
3年生数名の5週間ほどの研究室配属では、判決文の医学的な面を読み取るコツに加えて、近年数件の特許権を取得している演者が特許文献の読み方なども教え、薬の成分自体が持つ潜在的リスクや薬の使い方のミスなど、研究開発段階から使用までについて、学生1人1人が調べてまとめる方針で行なっている。開始前は少々難しいかもしれないとも考えていたが、配属学生(初年度4名、次年度7名)は一定以上の読解力や分析力を身につけ、中にはかなり高いレベルでできるようになった学生もいる。
<考按>
演者の授業で判決文を初めて見る学生も多く、また裁判にまで至った実例を判決文で読むと身近に感じやすく、受講学生が興味を持って医療事故やその原因などを学んでいる。こうした授業は、医療や薬の危険性と具体的な注意の必要性を実感させるとともに、患者への説明が医療安全や紛争防止に重要であるとの理解にとても役立っている。
一方、係争中の事件は内容が新しく重要であっても、授業で詳細は取り上げにくいという課題もある。今後は上記の実績を土台にして、進行中の裁判例などを適切に導入する方法を探りながら、判決例を用いたより効果的な教育方法へと発展させたい。