東京高裁での医療訴訟〜長野での一審から控訴審へ、初回弁論は5月17日(木)午後(医療事故43) | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

東京高裁での医療訴訟
〜長野での一審から控訴審へ、
  初回弁論は5月17日(木)午後1時30分
   (医療事故43)


 本日も前回記事へのコメントを頂戴していますので、まだの方は併せてご覧下さい。
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12370965364.html#cbox
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12370965364.html

 なお、コメントの仮処分の起訴命令の件ですが、金沢大学は、3月19日に、点数と大逆転させた成績を用いて進級判定会議を行い、その4日後の同月23日になってから「点数の提出」を求めて提訴しました。
 国の税金(文部科学省からの運営費交付金)と授業料を主な財源とする「大きな財布」から、この裁判にかかる費用を支出しているそうです(担当部署に確認しました)。
 初回弁論は5月10日(木)午後1時30分から、金沢地裁で行われます(公開、傍聴可)。

 さて今回は、長野での一審から東京高等裁判所の二審に移行した医療訴訟の、初回弁論のご案内と事案の概要などです。

事件番号:平成30年(ネ)第898号
原告:  A(患者だった当時50代の男性)
被告:  医師個人BおよびC、法人DおよびE
次回期日:平成30年5月17日(木)午後1時30分(公開、傍聴可)
場所:  東京高等裁判所 第511号法廷(霞ヶ関駅から徒歩すぐ)


<一審裁判経過(本ブログの昨年10月の記事2つ)>
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12319027574.html
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12320158841.html

<事案の概要など(関係者寄稿文より一部改変し引用)>

麻酔薬と血管収縮薬の誤使用で脳出血を発症し後遺症〜控訴審へ

●事案の概要

 原告Aは、2011年9月29日の、病院耳鼻科での鼻粘膜焼灼術(バイポーラ。以下、「施術」と言います)で脳出血を発症し、重い後遺障害が残存しています。そのため、2012年に病院や施術した医師などを提訴しました(長野地方裁判所松本支部 平成24年(ワ)第320号)。今年(2018年)1月に一審判決が出ましたが、誤認に誤認を積み重ねて退けられました。そのため東京高等裁判所に控訴し、5月17日に第一回口頭弁論が開かれます。

●高血圧では脳出血リスク増大で慎重投与が明記、しかし血圧測定せず投与

 そのままの施術では激痛を惹起するため局所麻酔薬を使用しますが、本件では、麻酔薬の作用時間延長を目的として、アドレナリンが薬効成分のボスミン外用液が用いられました。この薬剤は、添付文書(医療者向けの説明書)に、高血圧では、

2、慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(6) 高血圧の患者[本剤の血管収縮作用により、急激な血圧上昇があらわれる
おそれがある。


と記載されています。また、追加情報を記したインタビューフォームには、

(6) 高血圧の患者[本剤の血管収縮作用により、急激な血圧上昇があらわれるおそれがある。]
解説
(6)急激な血圧上昇の結果、脳出血等を起こすおそれがある。


と血圧上昇の危険、脳出血のリスクについての注意が明確に記載されています。
 当時より原告Aは高血圧であったことは一審の鑑定医3名の鑑定が一致しましたが、施術医は血圧を測定せず、降圧処置(血圧降下薬の点滴など)をせずにこのボスミン外用液を使用して、脳出血のリスクを増大させました。

●施術中に激痛も麻酔薬を追加せずに続行

 こうして脳出血のリスクを高めるボスミンを何の処置もなく投与した状態でバイポーラ施術が行われましたが、その途中で原告Aは大声で激痛を訴えました。バイポーラは鼻粘膜を電気で焼いて固めて出血しないようにする手術なので、麻酔薬が不十分だと激痛を惹起しますが、原告Aの場合、まさにこの麻酔薬不足の状態であり、その経過を記した陳述書を証拠提出しました。
 バイポーラ施術を行った被告のB医師も、被告本人尋問で、
「でもおそらく大きい声で痛いとおっしゃったと思います。」
と、バイポーラ処置中、原告がかなり痛がったことを証言しています(B被告本人尋問調書11ページ12行目)。
 即ち、バイポーラ施術中に、原告Aが激痛を感じたことについて、原告Aおよび施術者のB被告とで一致しています。しかし、B被告は、この後も麻酔薬を追加せずに施術を続行したため、原告Aは激痛を受け続けました。

 痛みで血圧が上昇することは、鑑定書においても一致しています。
 循環器内科医師の鑑定人は、回答書3枚目下で、
「バイポーラによる強い疼痛は、一般的に交感神経の緊張を介して血圧をさらに上昇させ、脳出血の危険性を増大させた可能性はある。」
と述べており、耳鼻咽喉科医師の鑑定人は、回答書2ページ下からで、
「鼻腔粘膜焼灼術を施行する前に、十分な麻酔が得られているか否かを確認し、不十分と判断される場合には追加の麻酔を施行すべきだったと考えます。用量が不足していたことではなく、麻酔が十分されているかの確認を施行しなかつたことが不適切と判断します。激痛があれば血圧上昇をきたすと考えられます。」
と明確に述べています。

<中略>

●結語

 このように、原告Aはずさんな薬物の使用や施術によって脳出血を発症し、かなりの後遺障害が残存している上、一審判決は、訂正前の誤った情報を用いた誤った鑑定を用いるなどして原告Aの請求を退けました。二審はこうした「誤認」を指摘して勝訴したいと切望しています。

 皆様には長野県まで遠路はるばる一審の傍聴に来てくださり、原告Aやその家族などはどんなに勇気づけられたかしれません。衷心より御礼申し上げます。控訴審においても何卒よろしくお願い申し上げます。

<関係者寄稿文より一部改変し引用ここまで>