長野医療裁判続報1:被告B医師尋問調書より〜血圧測定しなかったが高血圧とは考えなかった | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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長野医療裁判続報1:
被告B医師本人尋問調書より
〜血圧測定はしなかったが高血圧が持続しているとは考えなかった
 (医療事故35)


 前回に続き、長野県松本市の裁判所で争われている医療訴訟(今週木曜10月19日に弁論。血圧測定せずバイポーラ施術、3日後に脳出血と高血圧症を確認、後遺症残存)の訴訟文書です。

事件番号:長野地方裁判所松本支部 平成24年(ワ)第320号
原告:A(患者だった当時50歳代の男性)
被告:医師個人BおよびC、法人DおよびE
次回期日:平成29年10月19日(木)午後1時30分
担当:松山昇平裁判長、佐々木亮裁判官、中井裕美裁判官


 以下に、被告B医師本人尋問調書(裁判所作成)より一部を引用します。
(被告Bは原告Aに対してバイポーラを行なった医師)

●第14ページ
問い:B先生は、鼻出血患者に対して現在は血圧をはかるということをされていますか。
B被告:今はやっています。
問い:それは、どういった理由からですか。
B被告:C先生と同じですが、全然必要とは思わないんですけども、ただこういう件がありますと、やはり患者様のためということもありますけど、自分の潔白というか、証明する意味でもはかっておく必要があるかなという意味でやっています。

●第28〜30ページ
甲A第17号証(録音反訳書(写し))を示す
問い:12ページの18行目で先生自身が「まあ、はかっておけば一番安全だったと思うんだけど」というふうなことをおっしゃっていますよね。
B被告:はい。
問い:今考えればやっぱりはかっておくべきだったという気はするということですか。
B被告:はい、はかっておけばよかったなとは思っています。
問い:それから、先生はバイタルということについては、当然血圧のこともその部分集合として指すということはわかっていますね。
B被告:はい。
問い:それから、先生は今回Aさんを診察したときに高血圧に影響を受けた鼻出血ということは全く考えなかったんですか。
B被告:問診票になかったので、考えていませんでした。
問い:高血圧症という記載がない限り高血圧は疑わないということですか。
B被告:実際に出血していれば高血圧を疑ったと思うんですけれども、出血していなかったので、診察のときは疑いませんでした。
問い:一般的に中高年の男性の鼻出血は、高血圧を疑えというような文献が多数存在していることは御存じですか。
B被告:はい。
問い:今回の処置前にそういう文献を読んだことはありましたか。つまり今回の事件が起こる前、Aさんのことが起こる前に。
B被告:あったとは思います。
問い:いろんな素人の人に対するホームページなんかにもそういうのは書いているから、耳鼻科の専門医としては、そういう認識を持っていたということでいいですか。
B被告:はい。
問い:なぜAさんについては、高血圧を疑わなかったんですか。
B被告:まず、問診票に高血圧歴の記載がなかったことと常用薬がなかったということが1つと、あと出血していなかったということが主に自分がそう思った理由です。
問い:問診票にないからとおっしゃいますが、症状からお医者さんが推測すると、あるいは本人の症状から推測するというのがお医者さんの仕事じゃないんですか。
B被告:はい。
問い:患者さん自身が自分の病気を常に把握しているわけじゃないですよね。
B被告:はい。
問い:そうすると、症状と、それから少なくともわかる中高年、男性、そして鼻出血ということがあったらば、高血圧状態にあるとか、高血圧症が背後にあるとか、背後にある疾患にとしてそういうものを考えるというのが耳鼻科の先生としては、ごく常識的なレベルではないんでしょうか。
B被告:はい。

●第45ページ
甲B第9号証(耳の日Q&A)を示す
問い:これ先ほども示したんですが、非常に素人的にはわかりやすい文章なんで、示しますが、ここにかかりつけの内科医師に相談しましょうということも書いてあるんです。耳鼻科的にはと先生今おっしゃいましたけども、耳鼻科的に原因疾患を探るのが難しければ、必ず内科医に行ってくださいねというようなことをおっしゃいましたか。
B被告:Aさんには伝えませんでした。そういうお話はしませんでした。
問い:それはなぜですか。
B被告:血圧測定していなかったこともありますけれど、出血もしていなかったし、高血圧が現時点で持続しているとは思わなかったからです。
問い:だから、なぜ思わなかったんですか。はかっていないんでしょう。はかったならわかります。はかっていないわけだから。
B被告:はかったわけでなくて考えたんです。
問い:勝手に思い込んだと、そういうことですか。
B被告:はい。