シャンプーはやめておこうと思っていたが、黒猫ちゃんを撫でていて獣臭いと感じることがある。そこで最近は1日1回、日中に蒸しタオルで体を拭く。固く絞ったミニタオルを袋(スーパーで貰える半透明の)に入れてレンジでチン。その袋をポケットに入れて入室。一枚づつ取り出して荒熱を取り、顔、顎の下、頭、背中、お尻と拭いてゆく。まず毛の流れに逆らって拭いてから毛の流れにそって拭くとよいような気がする。気持ちがいいのかゴロゴロいいながら体を拭かせてくれる。嫌がらなければ腹や足先も拭く。
ただし、これは黒猫ちゃんが狩りのモードに入っていないときに限る。膝に乗って甘えてくるようなときがいい。
爪切りもしたいが、嫌がって暴れるだろう。30日に行くのを予定している動物病院で爪切りを頼んでみようと思う。
ますますエネルギッシュでランボーで暴れん坊な黒猫ちゃん。ご飯を一所懸命に食べ終えると必ず私の三角座りの脚の下へやってきて「ふあー、食った食った」と一息入れたら、なぜか猛然とトイレへダッシュする。前足で勢いよく猫砂を掘り、しかしふと自分の尻尾が目に入るのでついついじゃれついてしまい、気を取り直してまた猫砂をザクザクと掘る。これを何度か繰り返してやっと準備完了。トイレの最中はいつも真剣な表情である。済んだら匂いを嗅ぎ、前足で丁寧に猫砂をかけて後始末。
すると、たいていこの時点でアドレナリンが一気に体中を駆け巡り、テンションがマックスに達する。猫砂を盛大に蹴散らかしてトイレを飛び出ると専用部屋を走り回る。ズダダッ!と狭い場所へ滑り込み、シュバッ!と跳び出たかと思うと両手を広げて高くジャンプし、続いて背中と尻尾の毛を逆立てて体を高く上げバレリーナのように脚をぴんと伸ばしたまま斜め走りをする。丸椅子の上に跳び乗るわ、カゴへ跳び移ってひっかくわ、そこらへんじゅうに跳びついて爪を立てるわ、まるで見えない獲物を狙って捕獲しようと奮闘しているかのよう。また、ボールに襲いかかって激しく足蹴りし、そうかと思えば、トイレの猫砂の下に敷いてある新聞紙を噛みちぎり、細かい紙片にじゃれついたりもする。
こんな時、私は隅っこの床で三角座りをしてただ見守るだけ。下手に手を出すとこちらの身が危ない。黒猫ちゃんの変なダンスや乱暴狼藉を見物しながらゲラゲラ笑い、「好きやなー、紐が」とか「それはあんたの尻尾やで」などとツッコミを入れ、「オオッ!」とか「お見事ー!」などと感嘆の声を上げて楽しんでいる私である。
※ バレリーナっぽい斜め走りをする
(※ は、その日初めての確認事柄)
猫と一緒に暮らしているとわかってくることがある。黒猫ちゃんは日に何度も私の匂いを丹念に嗅ぐ。私がいつもの人かどうか確かめているみたいだ。猫は日によって外見が変わることはないが、人間は服を着替えたり上着を着たり脱いだりするからそのつど違う姿になる。服についた匂いも違っているのかもしれない。だから常に匂いでチェックするのだと思う。
というわけで、入室したらまず「はい、ご挨拶、ご挨拶」と言って黒猫ちゃんの前にしゃがんで手をそっと差し出し、気が済むまで匂いをかがせてあげることにしている。
※ 烈火のごとく怒る
この日最後の御飯の前にトイレ掃除をしているとき、急にドアが開いたと思ったら夫が入口でしゃがんで黒猫ちゃんの様子をじっと見ているではないか。びっくりした黒猫ちゃんは「おんどりゃー、どこの組のもんじゃ!それ以上近寄ったら血ぃ見るどー!」てな感じで、丸椅子の下で「シャーッ!フーッ!」と威嚇し、「ウワァーオーウー!」と長く大きな唸り声をあげる。頭を低くし、背中と尻尾の毛は逆立ち、般若のごとき形相で烈火のごとく怒っている。私はトイレ掃除をしながらも大笑いが止まらない。
そのうち夫はドアを閉めて去って行ったので幸い血を見ることはなかったが、夫と黒猫ちゃんは顔を合わせたことがほとんどないし、匂いをかがせたことなど一度もない。つまり「お控えなすって」の挨拶を交わしていないのだ。しかも夫は、怖がって丸椅子の下へ逃げた黒猫ちゃんを凝視したのである。そら黒猫ちゃん怒りますがな。怯えて怖がりな黒猫ちゃんが安心して暮らせるよう気をつけながら今日まで大事大事に育ててきたのに。ほんとに困った夫である。
それにしても、こんな迫力満点な黒猫ちゃん初めて見た。怒る姿や唸り声は大人猫と変わらない。まだまだ子猫ちゃんだと思っていたが、随分といっちょ前になったものである。
(※ は、その日初めての確認事柄)
今日は黒猫ちゃんを保護して21日目である。成長期だから当たり前だが、体がどんどん大きくなってきた。
フードの量と回数など与え方の基本は変えていないが、最近は朝一番のご飯に5グラムをプラスするようにしている。1日4回のご飯は、少し残すこともあり完食することもあり。ご飯のあとには必ず狩りのスイッチがオンになるので、猫じゃらしを使って20分ほど運動させてやる。安全のため猫じゃらしを片付けてボール1個と小さなダンボール箱だけ残して退室したあとも、しばらく独りで運動会をしていることが多い。
箱はちょうど黒猫ちゃんがすっぽり収まる大きさ。これを床に置いていると入ったり出たり齧ったりして普段から遊んでいる。この箱と料理用のスケールを使って黒猫ちゃんの体重測定をしてみると。
865グラム
保護した翌日に動物病院で測定した時は403グラムだったので、3週間で倍以上に増えている!
黒猫ちゃんの体重増加が順調かどうか私には判断できないが、近頃は身体能力もますます向上し、いつも元気いっぱいなので心配しなくていいと思う。
長らく懸案事項だった爪とぎ問題を解決すべく、丸椅子に改造を加えた。
4本の脚に被せていたフワフワのソックスはひっかかった爪が取れにくいので、代わりに幅広の綿テープをきつく巻きつけて釘留めした。さっそく匂いを嗅いで点検し、釘の匂いを嗅ぎ口を開けて変な顔をする黒猫ちゃん。一瞬だけ爪とぎの真似をしたが、すぐに止めてしまった。機会あるごとに「ほら、こうやって爪とぎしたらええんやで」とお手本を見せてやるのだが、まだバリバリと爪を研ぐには至らない。
懸案事項はもう一つあった。シャンプーをどうするかである。
保護した翌日に動物病院で診てもらったときは体にノミ・ダニがおらず被毛もさほど汚れてはいなかった。慣れてきたらシャンプーしてもよいと獣医師から伝えられていたが、特にその必要はなさそうだ。天然木と天然素材の毛でできたミニブラシ(ヌバックのバッグ用)で軽くグルーミングしてやるとゴロゴロいって喜び、ブラシを見ても怖がらない。被毛のお手入れはこれで充分という気がする。
何かにつけてシャーシャーと警戒していた黒猫ちゃんと仲良しになれた今、せっかく築き上げた良好な関係を水責めのトラウマで台無しにしたくはないから、シャンプーはやめておこうと思う。
食後は狩りのモードがスイッチオンになる黒猫ちゃん。猫じゃらしで遊んでやると夢中になって追いかけてエキサイトする。猫じゃらしは、小さなボールに長いゴム紐を結び付けて棒の先からたらしたもの。最初の頃はボールの行くところをずっと追いかけて走り回っていたのだが、最近は“待ち伏せ”という省エネ作戦を覚えた黒猫ちゃんである。そうすると運動量が少なくなるので工夫が必要になってきた。
※ 二段跳びができる
それは猫じゃらしで遊んでいるときのこと。
床 → カゴ → 丸椅子の座面
の順で跳び移った黒猫ちゃんがあまりにかっこよかったので、思わず「オオッ!!」と声を上げてしまった。黒猫ちゃんが三段跳びをする日も近いのではないか。
(※ は、その日初めての確認事柄)
その日最後のご飯のあとに黒猫ちゃんがオモチャで遊んで十分に運動したら、安全のために玩具は高いところにしまっておく。そうしておいて、私が静かに三角座りをしていると黒猫ちゃんは決まったように私の脚の三角の下にやってくる。そのタイミングで頭や背中を撫でてやるとゴロゴロとのどを鳴らして甘えたモードに入る黒猫ちゃんである。
そんなことを繰り返すうちに、数日前から私の膝の上でゴロゴロいいながら撫でてもらうのとカゴに入っていって前足をフミフミしながら私の目を見てニャーニャー鳴くのを交互に繰り返すようになった。
これは夜限定の行動だが、もしかして「こっちおいでーな。僕と一緒にここで寝ようや」と、誘ってくれてる?
「いやー、ほんまはそっち行きたいんやけど、カゴがちっちゃすぎるから無理やわ。ごめんねー」と、謝るしかない私である。こんな時は猫語が理解できたらいいのにとつくづく思う。
私の膝上とカゴの中を4・5回往復してお互いが眠たくなってきた頃、黒猫ちゃんがカゴの中に戻ったタイミングでよしよしといっぱい撫でてフリースをふんわりとかけてやってからお休みをいう。そうすると黒猫ちゃんはそのまま静かに眠りにつくのである。ひょっとして私は、子猫を寝かしつける天才じゃなかろうか。
たいていの子猫は、夜に独りにしておくとニャオニャオ鳴いて寂しがるものである。保護してからは寝不足を覚悟していた私だが、黒猫ちゃんがそんなふうに鳴いたのは最初の晩だけである。黒猫ちゃんってほんまにおりこうさんな子猫ちゃんやなあ!と感心しきりの私である。
ますます元気な黒猫ちゃん。運動能力は目に見えて向上している。
ご飯のあとに独り大運動会をすることもあるようだ。専用部屋からドスン、バタン、タタタタッ、ガリッ、ズズッという物音が聞こえてくる。しばらくすると静かになるのでやっと寝たなと思ったり。で、ご飯の時間になって入室すると、猫砂と喰いちぎられた新聞紙が床に散乱し、水入れはひっくり返り、プラカゴに被せていた毛糸編みのベストは引っ剥がされ...といった光景が目に飛び込んでくる。
ま、黒猫ちゃんが元気で何より。これしきのことは可愛いもんである。狩猟本能が満たされることが大事なのだ。
※ 丸椅子の上にピョンと跳び乗ることができる
(※ は、その日初めての確認事柄)