ベッドとして使っていたフリースを敷いた白いプラカゴに黒猫ちゃんを入れて動物病院へと向かった。雨模様だから自動車を使ったが、エンジンをかけた時と走っている途中で3回ほど鳴いたので「大丈夫よ」「もうすぐ病院だからね」などとと声をかけるとすぐに鳴き止んでおりこうさんにしていた。
待ち合わせていた里親さんと一緒に診察室へ入る。段ボールの蓋を取ると、黒猫ちゃんはプラカゴの中でフリースに頭だけ突っ込んで隠れたつもりになっていたので可笑しかった。検温などひととおりの診察と採血するときに激しく抵抗はしなかったが体は小さくブルブルと震えていた。猫エイズウィルス感染症の検査結果は陰性だった。よかった!
爪切り、寄生虫駆除剤の塗布などもしてもらう。何度か哀れな声で鳴いただけで暴れたり爪を立てたりすることなく、よく頑張ったと思う。なんておりこうさんな黒猫ちゃん!
里親さんが持参したキャリーの中に使っていたフリースとともに黒猫ちゃんを入れて、診察室を出る。
動物病院で里親さんと別れ、帰宅して玄関を開けたとたん寂しさがこみあげてきた。もうこの家に黒猫ちゃんはいないのだ。
ご飯はいつもお行儀よく座ってパクパクと食べていた黒猫ちゃん。食後はたまにしゃっくりが出ていたね。寝起きの時のご飯では、途中で体をぐーんと逆U字型に伸ばしたりもしていたね。
最初からトイレの使い方が完璧だった黒猫ちゃん。決して粗相をすることがなかったし、後始末もちゃんとできていたね。
床に散らばった猫砂を掃除していると、ミニほうき&チリトリにじゃれついて邪魔しにきた黒猫ちゃん。床掃除のワイパーにじゃれつくのも好きだったね。
私が一緒だといつも張り切って遊んでいた黒猫ちゃん。一番のお気に入りはボールが取れたあとのピンクのゴム紐で、興奮してどこまでも走って追いかけたり、待ち伏せしては可愛らしい前足で素早く捕まえていたね。ふわふわした大きなぬいぐるみに襲いかかって噛みついたり蹴ったりして遊んでいたね。マスキングテープの芯や毛糸のボールで独りサッカーを楽しんでいたね。空の箱の中にシュバッと飛び込んで遊んだりもしていたね。
私の膝に乗って撫でられ、気持ちよさそうにゴロゴロいいながら目をつぶっていた黒猫ちゃん。たまに深い溜め息をついていたね。膝から降ろしてお休みを言うと「えー、そんなあ...」という顔して私を見上げてニャーニャー鳴いて抗議していたね。でも、そのあとは独りで静かに寝ていたから、毎晩おりこうさんだったね。
黒猫ちゃん、私にたくさんの楽しい思い出を作ってくれてありがとう。里親さんのご家族さんや先住猫ちゃんと仲良くして、いつまでも幸せに暮らしてね。

私なら黒猫ちゃんの名前をサティにしていただろう。エリック・サティ(Erik Satie 1866~1925 フランス)は今私が一番好きな作曲家。彼は文学酒場「黒猫」(Chat Noir)でピアノ弾きのアルバイトをしていたのだ。
9月15日のレッスンで先生に花丸を貰っていた曲は、サティ作曲の Danses de travers (冷たい踊り)だった。三部構成の、しなやかにたゆたうような、ミステリアスで美しい曲。私がこれまで弾いたサティの曲の中でいちばんのお気に入り。
この曲を黒猫ちゃんに捧げて「黒猫ちゃん育児日記」を終えることにしよう。
YouTube / Erik Satie - "Pièces Froides - Danses de travers" (1910) - Giovanni Maria Varisco












