皆と別れ、一旦は北に向かった先生は、つと立ち止まった。
風に向かって髭を立てた。何かを感じているかのように、時折ぴくぴくと尻尾を動かしている。
「どうしました、先生。何か気になることでも」
油すましが、その大きな頭を傾げて先生を見詰める。
油すましとて妖しのもの、しかも仲間内では一番の頭脳を誇る。
危機察知能力も高く、逃げ足の速さは天下一品だ。
その油すましでさえ、この体勢を取った時の先生には叶わない。
敵が来る方角、距離、その数、持っている武器の種類までも正確に言い当ててしまうのだ。
「…豆腐小僧が命を落としました。仲間を守り、最後まで闘って。また一人、逝かせてしまった」
掛ける言葉が見つからず、俯く油すましの脛を優しく尻尾で撫で、先生は続けた。
「坂本様も十郎太さんも、見事に相手を倒したようです。残ったのは芹沢のみ」
「では何とかなりそうですな」
けれど先生の表情は厳しい。
「そうはいきませんね。天海の一味が残っている限り、四天王は替えが効きます。
何人でも創られてしまう。それと」
「それと?」
先生がゆっくりと振り向いた。髭が激しく反応す る。
「僧兵が動きだしました。止めねばなりません。予定変更です、我々は日ノ岡に向かいましょう」
言うが早いか、先生は走り出した。