「ねえ。彰宏のお父さんて器用だね」

太陽がそういうのも無理はない。
最終的に山崎が作り上げた動物は三十種類を超えている。
一つ作るのに要した時間は三十秒に満たない。が、彰宏は太陽の賞賛を柔らかく否定した。
「お父さんが器用?とんでもないよ、太陽君」

彰宏は朗らかに笑い、父を見つめた。尊敬し、愛おしむ眼差しである。
「日本を出る前さ、シャツにアイロンあてようとして穴を開けたんだよ。飛行機のタラップでつまずいて前にいるおばさんのスカートを脱がしちゃったし」

太陽は口をぽかん、と開けて呆れ顔だ。
「器用なんかじゃない。ただ、父さんは諦めないんだ。
どんなに難しくても、手に負えそうもないことも、やらずに諦めることがないんだよ。あのウィンナー細工も、三ヶ月掛かった。その間に、指を八回切ってる」

太陽は、もう一度山崎を見た。山崎は鼻歌を歌っていた。
息子にそんな話をされているとは露知らず、料理を続けている。

「なんでそんなに頑張れるの? 」

彰宏は黙り込んだ。少し考え、言葉を続ける。
「たぶん…それがお父さんの覚悟なんだと思う」
「覚悟?」
「そう。どんな仕事でも、どんな相手でも、絶対に手を抜かないっていう覚悟」