里美が、ぽかんと口を開けたまま、山崎を見つめた。
「お母さん、ハンドルハンドル! ぶつかるっ! 」

太陽に叱られて、里美は慌てて前を見た。間一髪、大木を避ける。

「ひゃあ、びっくりした。大丈夫でっか、池田はん」
「びっくりしたのはこっちです。今時の日本にも、山崎さんのような人が居たんですねぇ…」

きょとんとした顔つきの山崎は、ついでと言った口調で言った。
「そや、これ忘れてた。池田はんのお母さんから預かってきた手紙ですわ」

気にはなる里美であったが、これ以上運転を誤るわけにはいかない。
チラリと横目で見た手紙の表書きは確かに母の字であった。
村に着くまでの間、山崎は延々と喋り続けた。
里美は呆れると同時に、すっかりこの男に惚れ込んでしまった。
なんとも冴えない外見だが、内に宿る情熱は熱く、人に対する愛が深い。
惚れ込んだ相手は、とことん面倒を見たくなるのが里美の悪い癖である。
「それでですな、シェラレオネまではどないして行こうかっちゅうのが今んとこの悩みでしてな。なにせ、扱う旅行代理店ちゅなもんが一切ないんですわ。池田はん、なんぞ知恵はおませんか」
そう問いかける山崎に里美は満面の笑みを返した。