auoneブログ、とうとう終わりですか。
いつかは来るだろうなとは思ってましたが、意外と早かったですな。
さてどうしたもんかと悩んだのですが、二千以上の記事が消えてしまうのは、
どう考えても勿体ない。

ここでつくね乱蔵は育ててもらったのですから、やはりこのまま残したい。
seesaa、livedoor、どちらにするかは未定ですが、とりあえず移動します。
で、小説に関してはリライトしてまとめていこうと。
家族の話や猫の話などはそのまま残しておいて、日常編は他のブログで。

色々ありましたが、俺はこのauoneが好きでした。
皆さんからいただいたコメントも持っていきたいので、閉じていたコメント欄を
開放します。

それではあと少しですが、それまでよろしくお願いします。

ちなみに現時点でのアクセス数、50.040.000。
本当にありがとうございます。

朝八時半。あと少しで会社を出るという頃、娘からメールが入った。
急いで内容を確認。
嫌な予感が当たった。

『イブが死にました』

ああ。間に合わなかったか。
瞳が潤みそうになるのを必死で堪える。
正門を出た途端、涙があとからあとから湧いてきた。
駅までの道を大の男が嗚咽しながら歩く。

急いで歩いたから汗が出たのだという様を装い、
顔を拭いながら電車に乗った。

改札を抜け、自宅へ走る。
義母への挨拶もそこそこに先生の元へ。

娘が言ったとおり、目が開いたままだ。
痩せて、冷たくなっている。
あんなにふっくらとして暖かだったのに。

抱きしめて泣いた。
最後に会えなかったのを詫びながら泣いた。
頭を撫でながら泣いた。

ふと見ると、あれほど硬く見開いていた目が閉じられていた。

先生は素敵な猫でした。
美しい猫でした。
人懐こい猫でした。
誰からも愛された猫でした。
私たち家族の宝物でした。

それは今も変わりません。

今日、先生が愛した出窓を綺麗にしました。
いつも座っていた座布団も整理しました。
何もかも片付けたつもりでいたのに、食器が一つ残っていました。
それを見るとやはり思い出されます。
寝る時に寝室の扉を少しだけ開けておく癖も、なかなか治りません。
買い物に出た時は、キャットフードのコーナーに目が行ってしまいます。
先生は魂だけになって、より一層私たちに近づいたのかもしれません。

私たちはいつかまた猫を飼います。
先生も笑って許してくれると思います。
むしろ、一つでも多くの命を救うことを私たちに期待していると思います。






先生は、本当に素敵な猫だったんです。



今朝、先生は空に昇りました。
俺は仕事中で間に合いませんでしたが、娘が最後の瞬間を看取ってくれました。

愛してくれた皆さんにお礼申し上げます。

先生は本当に素敵な猫でした。








気持ちが落ち着いたら、報告します。

「おはようございますっ!」
寝ぼけた信吾の頭を元気な声が揺り動かした。声の主は、えっちゃん。
社員食堂で働いている女の子だ。
「おはようっ」
負けずに挨拶を返すと、今度は取っておきの笑顔が返ってきた。
これも負けずに笑顔を返す。
えっちゃんは毎朝、出会う皆と笑顔のラリーを交わしている。
よし、今日も一日頑張るか。
信吾は大きく背伸びすると、階段を駆け上った。

昼休憩のサイレンが鳴り響く。
ぞろぞろと社員食堂へ向かう人達の中で、信吾はただ一人俯いていた。
午前中に取り返しのつかないミスをしてしまったのだ。
食欲も湧かず、自然と箸も止まる。
「どないした、原田君。しょぼくれた顔して」
話しかけてきたのは、食堂の主と呼ばれる滝川さんだ。

「いや、何でもないです」
「仕事のミスは仕事でしか取り戻せんよ。ま、せいぜい頑張り」
「何で知ってんですか」
ふっふっふ、あたしゃ地獄耳でね。言いながら信吾の肩を一つ叩くと、滝川さんは洗い場へ向かった。
「あ、えっちゃん。ダスターはもっと固く絞りや」
「はいっ」
相変わらず元気な声だ。その声は、今の信吾には煩わしい。
なんであんなに元気なんだろ。悩みなんて無いんだろうな。

「ま。やらしい目ぇやな。えっちゃんに惚れたか、原田君」
「なに言ってんすか。って滝川さん、洗い場行ったんじゃないんすか」
「全部済ませた。さ、もうじき休憩終わりやで。頑張って仕事しいや、青少年」
「滝川さん」
「なんや」
「えっちゃんて、悩み無いでしょうね。いっつも明るいし、元気だし」
滝川さんが黙り込むのを見たのは初めてであった。信吾は長い沈黙に耐え切れず、咳払いを繰り返した。

「あんた、思い違いしてるで」
「は?」
「えっちゃんのことや。ええか、これはここだけの秘密や。えっちゃんはな、障害があるんや」
障害、という言葉と、えっちゃんの笑顔が結びつかず、信吾は間の抜けた返事しかできなかった。
記憶障害というらしい。
日常生活には困らないが、一週間以上、仕事を記憶しておけないという。
一週間毎に、一から覚えなおし、また忘れては覚えなおす。その繰り返しなのだ。

「そやけどな、あの子が絶対忘れへんことがある。おはようございます、いらっしゃいませ、ありがとうございます。この三つや。それだけは何があっても忘れへん」
そこまで一息に喋ると、滝川さんは信吾を優しく見つめた。
「あんた、大学でた学士さんやろ。頑張って勉強してきて、この会社に入ったんやろ。
いろんな事いっぱい詰まっとるんやろ、その頭ん中」
「は…はい」
「精々頑張らんかいな。そんで、行き詰ったら飯食いに来なはれ。えっちゃんのいらっしゃいませ、とありがとうございますを聞きなはれ」
「ありがとうございます!」
えっちゃんの声が響き渡る。
信吾は我慢できずに一粒だけ涙をこぼした。


翌朝。
「おはようございますっ!」
笑顔のラリー、先攻を取ったのは信吾の方であった。

長州藩の暴発組は、計画がどうあれ実行にあたるのは人間である。
であれば、同じ人間同士闘わせればよい。
蛤御門辺りがその戦場になるだろう、と先生は読んでいる。


が、今こちらに向かっている僧兵達は人ではない。
その怪物どもが、戦闘に紛れ込んだら、天海の思惑である天皇奪回は容易いものになってしまう。
それでは仲間達の奮闘が全て徒労に終わってしまう。
何よりも、豆腐小僧を犬死させるわけにはいかぬ。
先生の体毛が光を帯びてきた。

(わちゃあ、いかんな。毛並みが銀色になってきた。これは、わしも命をかけねばならんか)
油すましは覚悟を決めた。持っている徳利を改めて握り締め、念を込める。


油すましは元来、肉弾戦は得意としていない。
参謀として事にあたるのを旨としていた。唯一持っている技がある。
自由自在に油を操る技である。
それがこの徳利に秘められているのだ。念を込めるにつれ、徳利の中に、油が満ちてきた。
急激な油の増加は、命を削る羽目にもなりかねない。
それでも構わず、油すましは念を込め続けた。
未だかつて作ったことのない油が出来始めている。
粘度が高く、揮発性も高い、いわば戦闘用の油であった。