朝八時半。あと少しで会社を出るという頃、娘からメールが入った。
急いで内容を確認。
嫌な予感が当たった。

『イブが死にました』

ああ。間に合わなかったか。
瞳が潤みそうになるのを必死で堪える。
正門を出た途端、涙があとからあとから湧いてきた。
駅までの道を大の男が嗚咽しながら歩く。

急いで歩いたから汗が出たのだという様を装い、
顔を拭いながら電車に乗った。

改札を抜け、自宅へ走る。
義母への挨拶もそこそこに先生の元へ。

娘が言ったとおり、目が開いたままだ。
痩せて、冷たくなっている。
あんなにふっくらとして暖かだったのに。

抱きしめて泣いた。
最後に会えなかったのを詫びながら泣いた。
頭を撫でながら泣いた。

ふと見ると、あれほど硬く見開いていた目が閉じられていた。

先生は素敵な猫でした。
美しい猫でした。
人懐こい猫でした。
誰からも愛された猫でした。
私たち家族の宝物でした。

それは今も変わりません。

今日、先生が愛した出窓を綺麗にしました。
いつも座っていた座布団も整理しました。
何もかも片付けたつもりでいたのに、食器が一つ残っていました。
それを見るとやはり思い出されます。
寝る時に寝室の扉を少しだけ開けておく癖も、なかなか治りません。
買い物に出た時は、キャットフードのコーナーに目が行ってしまいます。
先生は魂だけになって、より一層私たちに近づいたのかもしれません。

私たちはいつかまた猫を飼います。
先生も笑って許してくれると思います。
むしろ、一つでも多くの命を救うことを私たちに期待していると思います。






先生は、本当に素敵な猫だったんです。