何だか、自分が以前から推しだった女優さんが主役をしている朝ドラの週間タイトルの様ですが、久しぶりに音楽の話です。
演奏活動その他で忙しく、暫く間が空いたのでサービス更新で自分の練習ノウハウの様なものを中心に書いてみます。
YouTubeで言えば「有料級」です(笑)
皆さん、暗譜はされてますか?
まあ、オーケストラや室内楽の場合は不要だと思いますが、ソロを演奏する場合、楽譜を見ないで弾くのはアマチュアにとってはハードルが高いですよね。
自分は師匠の門下生の発表会の演奏で暗譜を始めてこれまで、以下の曲を暗譜で演奏して来ました。
2021 アダージョとバリエーション(レスピーギ)
2022 親愛なる言葉(カサド)、ロマンス(フォーレ)
2023 ル・グラン・タンゴ(ピアソラ)
2024 ラフマニノフ チェロ・ソナタ(1楽章)
2025 ラフマニノフ チェロ・ソナタ(2楽章、3楽章)
各秋
この先の話の成果?として最初に書いておきますが、2023(フォーレ)2024(ル・グラン・タンゴ 開始から制限時間迄)2025(ラフマニノフ1楽章 開始から制限時間迄)の本番の演奏動画を全日本弦楽コンクールの動画審査へ出してますが、3年連続入選させて頂いてます。
※応募は前年秋から締切年の初冬の間となります。今年(2026)はラフマニノフの2楽章で応募予定。
コンクールのレベルはともかく、全く知らないプロの方から(それもチェロだけではなく他の楽器の方も含めて)忖度無しで評価を頂いて点数が付くものなのでそれなりの成果だと思ってます。
又、ブログの説明にもある様にチェロを始めたのが2013年で、50過ぎのレイトスターターの為、年齢の割にベテランと言う程でもありませんが、そのレイトスターターがコンクールで入選する程度までになるノウハウの様なものを少しここで書いてみたいと思います。
初めて暗譜で弾いたレスピーギはたまたま発表会が3ヶ月延期された為、頑張ったら暗譜できるんじゃないか?と思って挑戦してみたものです。
この時は、途中で暗譜が飛んだ所もありましたが、大きな事故も無く、その後も、ちょっとフィンガリングを間違えると言う様な事故はありましたが、大きな抜けも無く演奏出来ています。
10分以上ある曲を覚えるのは大変ですし、ル・グラン・タンゴ等は全体通して覚え難いフレーズも多かったり、ラフマニノフも転調等でC♭やH#等「いやそれHとかCで良いやろ」と言う様な場所等はやはり覚え難いのですが、これまでの経験から言えば、やはり暗譜するのは演奏にとってプラスです。
覚えているので、文字通り「目を瞑っても弾ける」訳で、とにかく演奏に集中できます 。
初めて暗譜した時のレスピーギ等は「目を開けると全てが消えてしまいそう」で目を開けるのも怖いくらいで、最初の数年間は他の人の演奏を聴いてると暗譜が飛んでしまいそうになるので、AppleのAirPodsのノイズキャンセリングを使って、他の音をシャットダウンしたりしてました(笑)
今では(今年は)演奏しながら(たまたま今回は外が見える会場)窓の外を眺めて、(最後の演奏でしたので既に夕方)「夕陽が綺麗だなぁ」とか思って弾く余裕も出てきましたが、後程、その方法も紹介します。
自分の場合、絶対音感が無くドレミ(固定ド)の音名で覚えますが、絶対音感がある人と違って頭に浮かんだ音高(Aなら442Hzの音)や鳴ってる音が何の音かわからないので、楽器を使ってその音が何の音だかを確認してその音に名前をつけて覚える必要があります。
その時に先のC♭やH#等が出てくると頭の中の音名ではド(でも♭があるけど)やシ(でも#がある)と覚え(歌い)ますが、実際の音はシでありドなので楽器で再現する時に混乱しそうになり、このズレが暗譜の大敵です。
以前、#や♭が付いた音を別の読み方にする方法を知って挑戦しましたが、それはそれで難しいので断念しました。
但し、ある程度暗譜してしまうと、楽器を弾かずに練習が出来るので便利 です。
例えば、夜、布団に入った寝る前、風呂に入ってる時等、頭の中で歌いながら「ここはもう少し長く」などとシュミレーションも出来る訳ですし、弓の使い方もこの時点である程度シミュレーション可能です。
自分のソロ以外にも普段、オケやアンサンブルもあり、どちらかと言うと普段、楽器を弾きながらの練習はそれらを中心にして、ソロは暗譜をする作業が中心になるとも言えます。
勿論、全く楽器を弾かない訳ではありませんし、次に述べる方法で練習をしますが、この時に、いわゆる「手癖」=身体では絶対に覚えない のがポイントで、頭の中に音名が浮かぶまで覚える様にします。
手癖で覚えてしまうと、もしフィンガリングを1つ間違うとその後の動きが止まってしまいますが、音名で覚えていれば、次の音は分かる為、調整可能でフィンガリングに縛られなくなります。
これは練習の時から楽譜をちゃんと音名で読みながら弾く事から始まるのですが、これとは別に曲をブロックに別ける 事も重要です。
1曲の中にも構成がありますので、再現部等があれば、そこは暗譜する必要がありませんし、例えば、ブロックに別けて、常に頭から弾くのではなく、途中のブロックから練習する。と言う事も良い練習ですし、場合によっては後ろのブロックから練習するのも良い方法です。
何よりこの作業で弾く曲の構造が理解できるので、単に頭から繰り返し弾く時間よりも有意義です。
練習の最初の時点では弾けるテンポ(音名が頭に浮かぶテンポ)でゆっくり弾く のも重要です。
オーケストラでもそうですが、弾けない場合、大抵楽譜をちゃんと音名で追えてない場合なので、ゆっくり練習する場合、身体(指が動く)よりも(頭で)「読める」方に重点を置いてます。
速くて弾けない部分があれば、小節単位やシフト単位で動きを停めて、次の小節や次のシフトを先に頭で読んで、そこから動かす と言う事も効果的です。
理由は、停まらずに続けて弾いていると、頭がついて行けなくなった時に身体の方が勝手に動いてしまう為、それを防ぐ為です。
但し、この「停める」と言う動き(動かないけどw)はやってみると難しく、特にシフト単位で停めるのは難しく、単なる身体の動き(惰性)で弾いてるのが良く分かります。
暗譜に戻りますが、最近やっているのは、出来るだけ「記憶の深い所に置く」 と言う作業です。
例えば、最初にスケール練習等でウォームアップした後は敢えて時間を開けて、楽器を弾かずに他の事をやり、その後、すぐに通して弾いてみたりします。
例えば、練習を敢えて中断してウォーキングへ行って、帰ってすぐに弾く等、身体が様々な状態で演奏してみると言うのもやってます。
その時、重要な事は、楽器を弾く前に「頭の中で一切歌わない」。要するに「一切思い出さない」 と言う事です。
で、楽器を構えた瞬間に深い所から一気に引き上げる様にして弾く訳です。
普段、一切思い出さないのに急に記憶から引っ張りだされる訳ですから脳も大変で、これを繰り返すと脳の方で勝手に練習内容を深い所へ入れてくれる様になります。
これをやる様になって、例えば、レッスンでいきなり通したりするのも楽になりますし、本番でも、暗譜を始めた最初の頃の様に他の人の音を一切聴かないと言う事をやらなくとも(自分の曲は記憶の深い所にあるので)、ステージに出て一気に引き上げる事が出来る訳です。
こう言うのはプロの歌手等は歌謡番組等で多くの人が歌ってる中で歌うと言う事も多いですし、持ち曲が沢山あるベテランの歌手の方等も似たようなものかもしれません。
「身体が様々な状態で演奏してみる」 と言うのは随分昔、亡くなられたセンチュリー交響楽団の首席コントラバス奏者だった奥田一夫さんに「演奏する時に緊張しなくするにはどうしたら良いんでしょうか?」と尋ねた時に教えて頂いた方法ですが、今は暗譜を深くする為に使ってます。
奥田さんが言われたのは「どんな状態でも弾ける様にすることで自信をつける」と言う事だったと思いますが、暗譜に関しても同様で、未だにユニークな方法だと思ってます。
何れにせよ、今では暗譜せずにソロを演奏する事は逆に至難の業だと思ってます。
何せ、目で楽譜を見る→音名を読む→音高を思い浮かべると言う演奏上本来不要な動作が必要で、僅かな時間でも音を出すことに集中できない過程が数多くあり、これをスムーズに出来る人はすごいと思います。
但し、自分は譜読みや初見は早い方だと思います。
特にオケの場合は暗譜しませんが、楽譜に書かれている音の高さはイメージできなくとも音名を読むのは比較的早いと思います。
それは普段から「ある訓練」をしているからです。
オケ等で演奏する場合に16分音符等の伴奏系を弾く場合は、一々音の高さをイメージするよりも、お経の様に音名だけを単純に読んで行きその音の場所を楽器で弾く 方が、音の高さをイメージする脳内処理が無い為、早いんです。
これは「クレ読み」と言って、フランスのコンセルバトワールで行われていたそうですが、敢えて音名だけをスラスラ読むという「訓練」は初見や練習時間があまり無い状態で演奏する場合に非常に役に立ちます。
その為、自宅の練習以外、オケの練習でも他のパートが指揮者に捉まってる時に頭の中で楽譜を見て難しい場所はお経の様に読んでますが(いや、マエストロの話聞けよw)、この場合、音の長さも無視して音の高さだけを読む様にしてますし、これは楽器を持たなくとも出来るので楽譜さへあれば電車の中やカフェでも何処でも可能です。
暗譜に話を戻しますが、暗譜していれば、音名と同時に音高を思い浮かべるところからスタートするので、出た音へ集中しイメージと違ったら即修正出来ます が、楽譜を見ていると直ぐに次の音符を読まないといけないので出た音まで配慮も行かず「音程は出た音に聴いてくれ」と非常に音程に関して無責任な演奏になってしまいます。
結果的に「単に楽譜を追っているだけの演奏」となるのが良くあるアマチュアの演奏ですが、弦楽器で音程を良くする為には自分の音を聴いて合ってなければ修正すると言う作業が必要で、最初に押さえた場所が正確で修正も早いのがプロです。
アマチュアの場合「合ってるかどうか?」を判断するのも修正するのも普段のスケール練習でやるのが一番です。
たまにオーケストラの練習場のうるさい所でパラパラとスケール練習をされている人を見ますが、あれは何の意味もないと思いますし、スケールが速く弾ける事も全く無意味で、スケールの意味を全く理解していない無駄な努力だと思います。
速く弾く為の練習は既に幾つか書きましたが、全く別の方法で行うのが効率的ですし、そもそも、普段やっているスケールのフィンガリングが、弾いている曲で要求されるフィンガリングと同一で良いとは限りません。
もし、練習前にウォームアップするなら自分も良くやってる「コスマン」が一番良い と思います。
幾つかある中で、全ての指の全てのパターン(Extensionは含まない1434,1424.1323)をA線のEに1の指を置いて始めて、半音位置をズラしながらそれをC線の開放まで満遍なくやるものがあり、自分は自宅含めてチェロを弾くウォームアップの時に必ずやってます。
最初は最後まで行く体力が無いと思いますが(自分もそうでした)、日々やっていると左手のスタミナも付いてきます。
又、これ以外に、自宅含めて、普段からこれをやっていると、初めて弾くホールや練習場へ行った時に、普段とどう違って聴こえるかも全ての弦で確認出来るメリットも あります。
話が逸れましたが、スケール練習は自分の耳を鍛える為にやる のであって、静かな場所で自分の出した音に集中してゆっくりやるのが一番だと思います。
ChatGPTと以前スケールに関してディスカッションをした時にこんな事を言ってましたのでちょっと紹介します。
以下ChatGPT
「Play scales to learn to listen」──スケールは“聴くために”弾く
この言葉は、主にハンガリー出身の名チェリスト ヤーノシュ・シュタルケル(János Starker) が、学生へのレッスンで繰り返し語っていた考え方です。
彼は「スケールは指を動かすためではなく、音程・響き・バランスを耳で聴き取るために弾くもの」と説いていました。
“Play scales to learn to listen, not to move your fingers.”
(スケールは指を動かすためでなく、耳を育てるために弾きなさい。)
つまり、スケールを通じて次の3点を鍛える:
1 音程感(ピッチの正確さ)
2 音の方向性(フレーズの流れ・調性感)
3 倍音の響き(楽器が共鳴しているか)
同じ思想は、フルニエやイッサーリスのレッスンにも見られます。
彼らも「音を合わせる練習ではなく、響きを感じる練習」としてスケールを扱っていました。
特にイッサーリスは、ハ長調のスケール1つでも「各音の意味(調性の中での役割)」を耳で感じながら弾くよう指導しています。
以上ChatGPT
これらの出典その他は確認してませんが、全く同感です。
何故、スケールが訓練の様に為される様になったかの理由は自分は推測してますが、今回は省略します。
スケール練習の重要性に関して別の時にディスカッションした内容も紹介します。
スケール練習を重要と位置づけたジュリアード音楽院のドロシー・ディレイに関する話です。
以下ChatGPT
ドロシー・ディレイ(Dorothy DeLay)がハイフェッツやガラミアンらの伝統をどう受け継ぎ、「音階=すべての基礎」と考えたかを整理します。
🎻 ディレイの背景と系譜
師匠筋
ディレイは イワン・ガラミアン(Ivan Galamian) のアシスタントとしてジュリアードで長く教えていました。
彼女自身の教え方は、ガラミアンの方法論をベースに、心理的なサポートや生徒に合わせた柔軟さを加えたもの。
ガラミアン → ハイフェッツの系譜
ガラミアンはパリ音楽院でルシアン・カペーに師事し、その後アメリカで指導者として大成。
ハイフェッツも直接の弟子ではないですが、**「スケールこそ音楽の土台」**という価値観を共有していました。
→ つまり「演奏の質=スケールの質」という思想がディレイにも引き継がれていたのです。
🎼 ディレイが重視した「音階はすべての基礎」
1. スケール=技術の総合練習
ディレイはスケール練習を単なる音程練習と捉えず、以下の要素を同時に鍛える「オールインワンの練習」と位置づけていました:
音程感覚(正確な intonation)
ボウイング(弓の速さ・圧力・接点のコントロール)
音色の統一(ポジションごとの音質を均質に)
シフトの滑らかさ
リズムと安定感
彼女は「音階練習さえ正しく行えば、他の練習の多くが不要になる」とまで述べています。
2. スケール=演奏の「診断ツール」
ディレイは生徒の演奏を聴くとき、まずスケールを弾かせて「どこに弱点があるか」を診断したそうです。
音程が不安定 → 耳や左手の問題
音色が粗い → ボウイングの使い方
音のつながりが悪い → シフトや左手の準備不足
つまり、スケールの中に問題点がすべて現れると考えていたわけです。
3. ガラミアン方式とのつながり
ガラミアンは「スケールとアルペジオはヴァイオリニストの字引(dictionary)」と言いました。
彼の著書 Principles of Violin Playing and Teaching にも、音階が基本であると明記されています。
ディレイはその思想を踏襲しつつ、心理的な言葉がけや生徒に合わせた順序を加えて、より柔らかく指導しました。
4. ハイフェッツの影響
ハイフェッツ自身が「スケールを毎日欠かさなかった」という事実はよく知られています。
ディレイもこの姿勢を理想として、「どれだけの名手でも、スケールを怠れば崩れる」という意識を生徒に伝えていました。
✨ まとめ
ディレイは ガラミアンの「スケール=辞書」思想を受け継ぎ、「音階はすべての音楽の基礎」として徹底的に指導した。
スケールは単なる指の運動ではなく、音程・音色・弓使い・リズム・シフトをすべて含む「総合練習」。
生徒の弱点もスケールから見抜けるため、診断ツールとしても活用。
この伝統は、五嶋みどりさんを含む多くのディレイ門下生に受け継がれている。
以上ChatGPT
自分がやってる実際のスケールの練習方法は今回はテーマとは異なりますし、それも有料級(笑)ですので省略します。
極端に言えば楽譜を暗譜してスケール練習をやっていれば曲の練習を極限まで減らせる 訳で、忙しいアマチュアにこそ有効だと思いますし、それ以前にスケール練習は全てにおいて重要だと思います。
仮に暗譜が落ちたとしてもプロと違って収入に影響する事も何もありませんし、何よりステージの上へ楽器1本持って出て行くってカッコいいですよ(笑)
以上この中で1つでも参考になれば幸いです。