反政府派の即時退陣の要求に対して
ムバラク大統領はそれを拒否したと伝えられています。
ムバラク氏の主張する理由は、
「国外退去すれば、政治も経済も混乱に陥るリスクが高いから」
戌渡も同感です。
ムバラク氏を支持する、しないではなく、
民主主義的な政権が誕生して欲しいです。
混乱によって、社会の基本機能すら失われることは、 避けて欲しい。
現在の興奮と混乱に乗じて、極端な主義主張を持つ政党や宗教団体が
権力を握るようなことは、国民のためにならないから。
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ところで、日本のメディアの報道ではニュアンスなどは
消えてしまって、ムバラク大統領がどのような戦術・戦略で
この事態に対応しているかは、よく伝わってこないのですが。。。
反政府派の主張に対して、
大統領は小幅の譲歩を繰り返しているように見えます。
意見の対立のあるグループ間での交渉で、
要求に対して、要求内容を値切るような
やり方は (つまり、小幅な譲歩は)、
交渉術としては、「下の下」の策です。
それでは、どのような交渉法があるのでしょうか?
それは 「次元を変える」 のです。
この次元という考え方は、日常やビジネスにも使えるので
覚えておくと良いかもしれません。
先日のブログで、反政府側の要求は
表面的には 「大統領の退陣」 だが
本来的には 「生活水準の向上」 だと解説しました。
http://ameblo.jp/inuwatari/entry-10787558382.html
これが次元の一例です。
「大統領の退陣」 は 大統領が退陣という 「一つの行動」 を要求しています。
しかし、
「生活水準の向上」 は 大統領かどうかにかかわらず 「望ましい状態」 の要求です。
さらに言えば、
「大統領が退陣」 しても、生活水準がさらに悪い状況になったら
デモ参加者にとって、今回のデモは失敗です。
デモというリスクを犯して、さらに悪い状況を引き起こした、
と言うことになるのですから、失敗以外になんと呼ぶのでしょう?
誰でも良いから、 「生活水準の向上」 を実現してくれるなら、
大統領の留任にも反対はしない
というデモ参加者も多数いるはず。
「次元」 という感覚、納得していただけたでしょうか?
当然、次期大統領を狙っている、政治的な意図のある人は、
民衆の生活が現職大統領の下で改善してもらっては困るので。
「大統領の退陣」を強固に主張することになります。
とはいえ、自然発生的なデモでは、参加者のほとんどは、
政治的な目的を持たないはずですので、
ムバラク大統領が、正しい交渉術を使って、
「正しい次元での提案」 と
「いくつかのアメ対策の実行」
を行えば、デモ隊の勢いは失われるはず。
ムバラク氏はそのような戦術を理解しているでしょうか?
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戌渡は、特にエジプトの政治に詳しいわけではありませんが、
オイルショックなどについて調べた際に、
20世紀のアラブの歴史も本で読みましたので、
ムスリム同胞団についても若干の理解があります。
イスラム法に従った国家の運営を目指す政治組織ですが、
イスラム原理主義の中核的存在のようですが、必ずしも過激派ばかりでもなさそうです。
過去のイスラエルとの戦争や、米国との関係において
イスラム法の解釈や、現実の社会との対応について、
大きく揺れ動いていたようです。
また、中東アラブ各国に同じような名前の組織がありますが、
国により主義主張が異なり、横のつながりは必ずしも
強くは無いようです。
ついでに、アラブ諸国が中東と北アフリカに広がっていますが、
これらを総称して、MENA (ミドル イースト、ノース アフリカ そのままですが。。(笑))
と略称することもあります。
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また、日本の2009年の総選挙後を考えてみると、
あれだけ盛り上がった選挙ですが、
「政権交代」にかけた当時の民主党支持者は、
その後の民主党の迷走と、景気に対する期待はずれな政策。
これだけを見ても、行動が失敗でした。
それは、リーマンショック後の景気のひどい状況を、
「誰でも良いから現状を何とかしてくれ!」と
デモを行ったようなもの。
しかし、具体的な 「何とかしてくれる誰か」 として
民主党しかいなかったので、民主党に投票した。
しかし、そのしてくれた 「何とか」 は、
とても、良い方向への 「何とか」 ではなかった。
残念ながら、似たことは、このような状況のときには、世界中でよく見られることです。
次回はそんな分析もしてみたいと思います。