反政府派の即時退陣の要求に対して

ムバラク大統領はそれを拒否したと伝えられています。


ムバラク氏の主張する理由は、


「国外退去すれば、政治も経済も混乱に陥るリスクが高いから」



戌渡も同感です。

ムバラク氏を支持する、しないではなく、


民主主義的な政権が誕生して欲しいです。


混乱によって、社会の基本機能すら失われることは、 避けて欲しい。


現在の興奮と混乱に乗じて、極端な主義主張を持つ政党や宗教団体が

権力を握るようなことは、国民のためにならないから。


***


ところで、日本のメディアの報道ではニュアンスなどは

消えてしまって、ムバラク大統領がどのような戦術・戦略で

この事態に対応しているかは、よく伝わってこないのですが。。。


反政府派の主張に対して、

大統領は小幅の譲歩を繰り返しているように見えます。




意見の対立のあるグループ間での交渉で、

要求に対して、要求内容を値切るような

やり方は (つまり、小幅な譲歩は)、


交渉術としては、「下の下」の策です。


それでは、どのような交渉法があるのでしょうか?



それは 「次元を変える」 のです。


この次元という考え方は、日常やビジネスにも使えるので

覚えておくと良いかもしれません。


先日のブログで、反政府側の要求は

表面的には  「大統領の退陣」  だが

本来的には  「生活水準の向上」  だと解説しました。

http://ameblo.jp/inuwatari/entry-10787558382.html


これが次元の一例です。


「大統領の退陣」 は 大統領が退陣という 「一つの行動」 を要求しています。

しかし、

「生活水準の向上」 は 大統領かどうかにかかわらず 「望ましい状態」 の要求です。



さらに言えば、

「大統領が退陣」 しても、生活水準がさらに悪い状況になったら

デモ参加者にとって、今回のデモは失敗です。


デモというリスクを犯して、さらに悪い状況を引き起こした、

と言うことになるのですから、失敗以外になんと呼ぶのでしょう?


誰でも良いから、 「生活水準の向上」 を実現してくれるなら、

大統領の留任にも反対はしない


というデモ参加者も多数いるはず。



「次元」 という感覚、納得していただけたでしょうか?



当然、次期大統領を狙っている、政治的な意図のある人は、

民衆の生活が現職大統領の下で改善してもらっては困るので。


「大統領の退陣」を強固に主張することになります。


とはいえ、自然発生的なデモでは、参加者のほとんどは、

政治的な目的を持たないはずですので、


ムバラク大統領が、正しい交渉術を使って、


「正しい次元での提案」 と 

「いくつかのアメ対策の実行」


を行えば、デモ隊の勢いは失われるはず。


ムバラク氏はそのような戦術を理解しているでしょうか?


***


戌渡は、特にエジプトの政治に詳しいわけではありませんが、


オイルショックなどについて調べた際に、

20世紀のアラブの歴史も本で読みましたので、

ムスリム同胞団についても若干の理解があります。


イスラム法に従った国家の運営を目指す政治組織ですが、

イスラム原理主義の中核的存在のようですが、必ずしも過激派ばかりでもなさそうです。


過去のイスラエルとの戦争や、米国との関係において

イスラム法の解釈や、現実の社会との対応について、

大きく揺れ動いていたようです。


また、中東アラブ各国に同じような名前の組織がありますが、

国により主義主張が異なり、横のつながりは必ずしも

強くは無いようです。



ついでに、アラブ諸国が中東と北アフリカに広がっていますが、

これらを総称して、MENA (ミドル イースト、ノース アフリカ そのままですが。。(笑))

と略称することもあります。



***


また、日本の2009年の総選挙後を考えてみると、

あれだけ盛り上がった選挙ですが、

「政権交代」にかけた当時の民主党支持者は、


その後の民主党の迷走と、景気に対する期待はずれな政策。

これだけを見ても、行動が失敗でした。


それは、リーマンショック後の景気のひどい状況を、

「誰でも良いから現状を何とかしてくれ!」と

デモを行ったようなもの。


しかし、具体的な 「何とかしてくれる誰か」 として

民主党しかいなかったので、民主党に投票した。


しかし、そのしてくれた 「何とか」 は、

とても、良い方向への 「何とか」 ではなかった。


残念ながら、似たことは、このような状況のときには、世界中でよく見られることです。


次回はそんな分析もしてみたいと思います。


これは戌渡が、


「国債って何?」 と聞かれたときの


回答です。




「えええっ!!」   

「それはちがうでしょ!」



はい、すいません。  皆さんのご批判は承知の上です。


しかしですね。

新聞やテレビであれだけ、日本の国債は大変だ!

と、騒いでいるのに、そこで


「国債とは何か」


と言う質問をする人は、


本当に知らないか、

あるいは、知っていてわざと質問しているか


のどちらかですよね。



それでなくても、国債は危ないとか

誰も買わないとか、

いろいろな情報が乱れ飛んでいます。


ですから、以下のように答えてみました。


皆さんなら、どう答えますか?



***


「国債とは何ですか?」


「銀行預金のようなものです。」



。。。というと驚くかもしれませんね。 しかし、ある意味本当です。


国民にとっては、銀行預金のようにお金を国に預けます。
毎年(普通は2回)利子をもらえます。
満期には元本と最後の利子が戻ってきます。

そういう意味では、銀行預金と同じです。



その裏にあるのは。。。


国はいろいろな仕事をして、お金を使います。
そのために税金を徴収します。

そのときに足りない分を金利を約束して国債を発行します。

そのほとんどは、銀行(など)が買います。預金の金利を支払うためです。


つまり、我々の預金で、銀行は国債を買って、

受け取った利息の一部を預金金利として我々に支払います。


そう意味では、我々は銀行預金を通じて国債を買っているわけです。



***


この答えを聞いた人は、納得したでしょうか?


久々の国債シリーズ続く。。

エジプトでのデモの動きは、

大統領への退陣要求と

暴走気味の衝突で、混乱した状況にあります。


衝突が起きると、さらにエスカレートする人達と、

平和的な運動を志向する人達と、

方針の違いが表面化するのかもしれません。


米国などは政権の即時退陣をコメントとして出していますが、

果たしてこれが、米国にとって、本当にプラスになるか

戌渡には若干疑問です。


その話はまた次にでも。


**


先日、チュニジアやエジプトは、貧富の差が激しく国民の不満が

蓄積していたのだろうと書きました。

http://ameblo.jp/inuwatari/entry-10786616852.html


そして現在、反政府デモの不安定な動きが伝えられている国は、

イエメンやヨルダンなど石油資源が無く、貧しい国々です。



そして、この地域で不安定化のリスクのあるもう一つの国をご存知ですか?



それはサウジアラビアです。


サウジアラビアは、原油の埋蔵量も生産量も世界一です。

先日カタールやクウェートでは、国民がオイルマネーの恩恵を受けているので

反政府の動きになることはないだろうと予測しましたが、


なぜ、産油量一位のサウジで、不安定化のリスクが生じるのでしょうか?


それは、サウジの人口と広大な面積にあります。

カタールやクウェートが日本で言えば県程度の面積と数百万人の人口なのに対して、

サウジは日本の6倍の土地に2500万の人口を抱えています。


そして、遊牧民として草地を求めてらくだや羊を追って生きる生活から

近代的な生活を求めて町に定着するようになったものの、

仕事が得られない失業者も多く、潜在的な不満の火種はくすぶっています。


サウジ政府が、石油(ガス)化学コンビナートに続いて

自動車産業の誘致に躍起になっているのも


「石油枯渇後の将来」を見越して産業基盤を作りたい

と言う狙い以外に、

「目先の失業を減らしたい」 と言う切実な願いがあるのです。


アルカイダの指導者ビン・ラディンが

サウジの出身と言うのも有名な話です。




さらに中東各国では、国王と人民の微妙な関係が実はあります。

私も中東地域の歴史を詳しくは知らないのですが、

国民と国王はほとんどのケースで部族が違うらしいのです。


ちょうど、歴代の中国の皇帝は、侵略してきた他の部族の主だったように、

また、中世のヨーロッパでも、各国の王族や貴族は、

王族間、貴族間の親戚関係があり、

他の国で生まれ育ったものも少なくなかったように、


中東各国でも現在の国王達は、その国民達とは

血縁などではつながりの薄い「過去の侵略者の子孫」

だと言うのです。


そのあたりは、正式な苗字には何代もの祖先の名前をつなげて

長々となるアラブの伝統がありますから、

正式な苗字を聞くと一目瞭然になるわけです。



イスラム教や、アラブと言う、我々にとっては、

縁の薄かった国や、地域ですが、

キリスト教文明の国(=現在の先進国)の

勢いが低下してきた今、


これからの世界を理解するには、無視できない存在です。



この週末 「アラビアのロレンス」 などを借りてきて

改めて見てみるのはいかがでしょうか?

「もし、国債が暴落するなら、どのようにリスクヘッジするか?」



こんなことを考えている方もいるかもしれません。



これに対する戌渡の答えは


「日本株式を買いましょう」


です。



その理由は分かりますか?


***


1. 単純な理由:


日本国債と日本株式の収益には負の相関関係があります。


つまり、日本国債の投資収益がマイナス(低迷)になるときは、

日本株式の収益がプラス(良好)になる傾向があるのです。

この統計はプロの投資家の間では常識です。



2. 少し深い理由:


テレビなどで、債券ディーラーが日本国債の「暴落リスク」 について話すのを聞いたことがありますか?

良く思い出してください。 ほとんどのケースで、景気回復により金利の上昇があると

「国債が暴落する」と言ってます。


つまり、景気がようやく持ち直してきた現在のような局面では、

金利が徐々に上昇し始める。 そうすると、国債の利回りが上昇して

国債の価格が下落するのです。


つまり、景気回復が、国債下落のきっかけです。

そうであれば、株式は価格上昇につながります。



3. もう少し深い理由:


テレビなどでは、20xx年に、日本国債残高が国内金融資産残高を越えることなどと

脅かしますが、経済理論から言って、それが起こることはありえません。

その様なことを言う人は経済のシロウトと思って良いです。


テレビに出演する経済学の教授などもそのくらいは知っているのですが、

そういう発言をすると嫌われて次から出演できなくなるので、ニコニコして黙っています

タレントさんですから。(笑)


(次にそのような番組に「教授」が出ていたら、よーく聞いてください。

教授自身が言う言葉はせいぜい「残高が増えると信用の問題です」 ぐらいで

「誰も買わなくなってしまうから暴落する」などとは言わないはずです。

まあ、黙ってニコニコ聞いているだけでも本当は同罪ですが!)


なぜでしょう? 国内の金融資産残高の中には当然、国債が含まれています。
考えて見ましょう。国債と金融資産の統計があります。現在はそれぞれ800兆円と1400兆円です。
国債がどんどん増えて1500兆円になったとします。
そのときの金融資産の合計はどうなっているでしょう?おそらく2000兆円を越えています。
これは、なぜなら国債はそこに含まれているからです。


もう少し本格的に議論するならば、ISバランス、国際資本収支、資金循環で考えると

明らかです。


改めてまとめますと、


 ・ 国債は破綻しません。
 ・ 景気が回復すると金利は上昇します。
 ・ そして、デフレからの脱却と、景気回復があると、それをきっかけに

   金利が上昇し、景気をさらに押し上げます。
 ・ そのときに国債価格は下落します。とはいっても破綻するような暴落ではなく、
   1-3割程度の価格下落ですが、購入時の利息はちゃんと支払われます。

   (ちなみにこの価格下落は短期で売買する債券ディーラーにとっては、「大暴落」ですが

    満期まで持つなら、我々にとっては損失にはなりません)
 ・ そして、デフレ脱却と、景気回復で、日本株は上昇します。
 ・ 2011年後半にはその兆しが見えるのではないかと期待しています。



久々の国債シリーズ続く。。







エジプトのデモ騒ぎは、

鎮静化を図って、


ムバラク大統領は次期大統領選への不出馬を表明したようです。


しかし、現状を見ると、それだけで事態を沈静化するのは

困難でしょう。



ここまでの対応も含めて、これは、典型的な失敗パターンです。

少しずつ繰り出す対策は、

デモ参加者をかえって、勢いづかせてしまうでしょう。

それはなぜでしょうか?



外交でも何でも、交渉ごとには提案と要求があります。


デモ参加者(以下参加者)の要求は表面的には「大統領の退陣」ですが、

本来的な要求は「生活水準の向上」です。


そして、参加者の提案は「デモをやめる」「平常時に戻る」ことです。


(ここで戌渡が分析しているのは、ある意味心理レベルでの話なので

 参加者達が必ずしも意識していないかもしれませんが。)




一方、ムバラク大統領の提案は「9月には退陣する」

そして、「現政権の(9月までの)安定」を要求しています。


大統領の提案は、実質的に参加者の要求には「すぐには何も答えない」と言っているようなもの。

そして、デモは拡大したものの、

実質的にまだ始ったばかりなので、エネルギーはまだまだ十分あります。


大統領が、すでに内閣退陣などを行って譲歩していること。

さらに、不出馬という小さな(十分に大きいのかもしれませんが) 譲歩をしめたことで、


不満を募らせていた参加者達は、要求すれば受け入れられると感じています。

そうなると、「リスクが無い」限りは、要求をエスカレートさせるでしょう。


ここで軍が「国民に銃を向けない」と声明を出したことは非常に大きいです。

大統領が軍を掌握できなかったのはなぜなのか、疑問が残ります。


ムバラク大統領が過去にどの程度弾圧的だったかは、戌渡は知りませんが、

このままだと、遅かれ早かれ、混乱の中を退陣という流れは避けられないでしょう。



さて、ここから何を学べるでしょうか?

**将来的に独裁政権を樹立して

         民衆と戦うことになった場合の

               民衆の要求をかわすレッスン**


そんな可能性のある人はあまりいないと思いますが。。。(笑)

  ムバラク氏はどのように対応すればよかったのか?

    外交や歴史を見ているとレッスンはどこにでも転がっています。


チュニジアでもそうですが、

今回のエジプトのデモでは、目立った指導者はいないようです。

どちらかと言うと、デモが発生したので、それに便乗しているように見えます。


このような自然発生的なデモは、経済的な(生活面の)不満が蓄積した

ことが背景と考えられます。


組織化していないので、うまく対応していれば、要求をかわすのは簡単です!!!


それは、参加者が混乱すると、結果的にデモの勢いは失われます。

例えば、穏健派と急進派、民主派と強いリーダー待望派、宗教派と現実派など。


混乱させるには、どうすればよいのか?


それは、いろいろな玉を投げるのです。

そして対話を行うのです。


どのように?


まず民衆に呼びかけます。


「国民のみんな、君達が苦しんでいるのはよく分かっている。


デモが行われている間、経済は止まり、家畜や作物は放置され、

観光客も、海外企業も、エジプトから逃げ出している。


これでは、暮らしはよくならない。


みんなの要求を聞こう。

直接対話をしよう。


みんなの暮らしをよくするために

何ができるか一緒に考えよう。


一人一人の意見を聞きたいが、100万人の話を聞くには、10年かかる

みんなの中から代表者を1人選んでくれ。


あるいは何人でも良い。

(1-2週間後の)X月X日に、君達の代表者と話をしたい。

そして、すぐにできる要求にはさっそく応えよう。

時間のかかる要求は、みんなで実現してゆこう」



これで十分です。

これを呼びかけるのです。


するとどうなるでしょうか。

大部分の参加者は、生活が楽になるなら

デモに参加する必要はない

どうやら良い方向に向かいそうだと、エネルギーが抜けます。

(ガス抜き効果ですね。)


そして本気の人間達は、代表者1人を立てようとしますが、

すぐには決まらない。

そして参加者間の意見の対立が生じる。


そうすると政権打倒でまとまっていたデモ参加者のエネルギーが、

意見の異なるグループ間の主張に費やされ、

混乱が始まります。


そして、もう一つ玉を投げましょう。


「国民のみんなよ。生活が苦しいだろう。

仕事を休んで大変なものもいるだろう。

食料品の価格を20%引き下げよう。

ガソリンの価格を下げよう。

臨時の公共工事にXX万人を雇おう。」


あめ玉政策です。

できるだけ具体的なものが良いです。

デモ参加者の村に

大統領の名前の入った食料品を

配布しましょう。


そして、X月X日の対話では、やさしい、物分りの良い指導者を演じる。


代表者(達)の方向性には理解を示しつつ、

具体策の欠点を指摘、

具体策で甘い提案をたくさん出して、

民衆に、もしかすると現在の指導者の方がましかもと思わせる。


対話の終わりに

「それでは一緒に改革を進めよう」


とちゃっかりと、改革を実施するのは自分だとアピール。

新政権への影響力を確保する。


代表者(達)は、各派の調整にエネルギーが奪われるので、

自然に政権打倒に向けた勢いが失われる。



今の流れを見る限りこんなことは起きないと思いますが。



。。。エジプトの話はさらに続く。。。




**********


我々にとって本当に重要なポイントは?


ここまでは戌渡の気楽な話です。

(それなりにまじめな話ではありますが)


それでは、我々日本人にとって、このエジプトの動きから学べるポイントは無いでしょうか。


ある意味、つい最近、日本でも起きていたのですよ!


このエジプトの退陣要求と同じことが。


2009年夏の日本の衆議院選挙を振り返ってみましょう。

20年にわたる景気の悪化で苦しむ国民の積もり積もった不満。

目に見えない講義の声が

「政権打倒」の一点に集中して、民主党の呼びかけにまとまりました。


(その結果、民主党は自民政権を打倒しましたが、

政権政党になった民主党のその後のひどさは

我々みんな知ってのとおり)


さらに言えば、


戌渡が上で書いたような「レッスン」と同じことを、

うまくやったのが

2005年の当時の小泉首相だったのです。

民主党の「政権打倒」に対して


「どれどれ、提案は何だ?」

「それは良い、さっそくやろう」

「どうせ君達にはできないだろう」


と、頼りない民主党の主張を、次々に実施に移す。


国民の間に「民主党はなんだか頼りないし、小泉さんならもっとうまくやってくれそう」


と言うムードが広がり、自民党の大勝利につながりました。




それでは、


なぜ、自民党は2005年に成功したことが、

2009年にはできなかったのか?


そして、現在の民主党への不満にもかかわらず、

なぜ、自民党はそれを政権打倒につなげることができないのか。


その話も、続く。。。