エジプトのデモがエスカレートしているようです。
この影響はどうなるでしょうか?
戦後の一時期、エジプトはアラブの盟主などと呼ばれていたのをご存知でしょうか?
我々日本人にとって、現在のエジプトはアラブの一部と言う印象は薄く、
歴史の国、ピラミッドの国としての印象が強いように思えます。
そして経済について言えば、人口も多く、ナイル川の両岸に広がる
肥沃な(と言われる)土地での農業などのわりに、経済的には全く振るわない状態が続いています。
ついでに、農業もアスワンダムの建設でナイル川の洪水が無くなり、
養分を含んだ土の供給が止まり、土地がやせてきていると言う話も聞きます。
例えば経済ですが、エジプトの物価の安さに驚きます。
ナイル川の渡し舟に乗ってみたのですが、現地人だと約5円、外人料金でも20円程度です。
首都のカイロですらインフラ整備が整っていなくて、都心部の片側3車線道路に信号機が
1キロもの間無くて、常にひどい渋滞などと言うのがあたり前です。
一方、アラブ諸国でもUAEやクウェートなど中東の産油国は経済発展が著しく、
恩恵が多くの国民にまで行き渡っています。
カタール国民の平均年収は2000万円以上で、その辺の役所の窓口や、
銀行の事務員でも高級取りです。(その分タクシー運転手などの労働者はインド人やフィリピン人などですが。)
チュニジアやエジプトは、そのようなアラブの中での貧富の差に、国民の不満が
たまっていたものが、爆発したと言えるでしょう。
さらに言えば、数年前の食料価格の高騰による危機意識も見逃せない要因ではないかと思います。
アラブ諸国は、乾燥した地域で遊牧民をルーツとしているので、
オアシスでの農業や沿岸での漁業程度で、大した産業も無かったのが、
せいぜい50年程度の間に油田開発のおかげで王族などが豊かになり
国家の形を整えたものの、政治システムや民主主義などが発達しておらず、
法律や政治も発展段階といえます。
そのため、アラブの中でも、国民の間の格差が大きい国、貧しい国、
国民に恩恵が届いていない国では飛び火するリスクは十分に現実的です。
原油価格への影響では、エジプトの産油量は大したことないので、
エジプトだけなら影響は小さいです。
しかし、デモ・政情不安が拡大して、さらに暴動として支配者の
経済的な地位を脅かそうという状況にまでなると、原油の生産・運搬・輸出などの
妨害・破壊につながるリスクも残ります。
政治的・宗教的な背景が無さそうなので、おそらくそこまでの拡大は無いとは思いますが。
政治的な背景が無いのであれば(推測ではありますが)
生活不安の解消や、経済的な恩恵、失業の低下などがあれば、
暴動のような形にまで発展することは避けれるのではないでしょうか。
原油価格に焦点を絞ると、エジプトの騒ぎがあっても、
WTIで90ドル前後で大きな動きはありませんが、
もし上記のような「リスクを折込み始める」と、2007年の高値を越える
局面があるかもしれません。
ただし、あくまでも「リスクを織り込む」
= 市場参加者の不安心理が大きくなると、という話です。
さらに、中長期の需給も、原油価格の上昇要因ではないかと思います。
先進国がいまだにリーマンショック後から立ち直っていないにもかかわらず、
WTIは90ドルぐらいの高値水準にあります。
その背景は、新興国を中心に消費が伸びていることと、
原油生産が世界的にほとんどピークに達していることが上げられます。
そして、今後予想される消費の伸びに対して、供給体制は必ずしも
十分でないため、構造的に原油価格は上昇せざるを得ないと思われます。
おそらく、原油価格は現状の80ドル以上の水準程度で下がりにくい、
というか、何らかの材料が場合よると上昇方向を見込んでおく
必要があるのではないでしょうか。