エジプトのデモ騒ぎは、

鎮静化を図って、


ムバラク大統領は次期大統領選への不出馬を表明したようです。


しかし、現状を見ると、それだけで事態を沈静化するのは

困難でしょう。



ここまでの対応も含めて、これは、典型的な失敗パターンです。

少しずつ繰り出す対策は、

デモ参加者をかえって、勢いづかせてしまうでしょう。

それはなぜでしょうか?



外交でも何でも、交渉ごとには提案と要求があります。


デモ参加者(以下参加者)の要求は表面的には「大統領の退陣」ですが、

本来的な要求は「生活水準の向上」です。


そして、参加者の提案は「デモをやめる」「平常時に戻る」ことです。


(ここで戌渡が分析しているのは、ある意味心理レベルでの話なので

 参加者達が必ずしも意識していないかもしれませんが。)




一方、ムバラク大統領の提案は「9月には退陣する」

そして、「現政権の(9月までの)安定」を要求しています。


大統領の提案は、実質的に参加者の要求には「すぐには何も答えない」と言っているようなもの。

そして、デモは拡大したものの、

実質的にまだ始ったばかりなので、エネルギーはまだまだ十分あります。


大統領が、すでに内閣退陣などを行って譲歩していること。

さらに、不出馬という小さな(十分に大きいのかもしれませんが) 譲歩をしめたことで、


不満を募らせていた参加者達は、要求すれば受け入れられると感じています。

そうなると、「リスクが無い」限りは、要求をエスカレートさせるでしょう。


ここで軍が「国民に銃を向けない」と声明を出したことは非常に大きいです。

大統領が軍を掌握できなかったのはなぜなのか、疑問が残ります。


ムバラク大統領が過去にどの程度弾圧的だったかは、戌渡は知りませんが、

このままだと、遅かれ早かれ、混乱の中を退陣という流れは避けられないでしょう。



さて、ここから何を学べるでしょうか?

**将来的に独裁政権を樹立して

         民衆と戦うことになった場合の

               民衆の要求をかわすレッスン**


そんな可能性のある人はあまりいないと思いますが。。。(笑)

  ムバラク氏はどのように対応すればよかったのか?

    外交や歴史を見ているとレッスンはどこにでも転がっています。


チュニジアでもそうですが、

今回のエジプトのデモでは、目立った指導者はいないようです。

どちらかと言うと、デモが発生したので、それに便乗しているように見えます。


このような自然発生的なデモは、経済的な(生活面の)不満が蓄積した

ことが背景と考えられます。


組織化していないので、うまく対応していれば、要求をかわすのは簡単です!!!


それは、参加者が混乱すると、結果的にデモの勢いは失われます。

例えば、穏健派と急進派、民主派と強いリーダー待望派、宗教派と現実派など。


混乱させるには、どうすればよいのか?


それは、いろいろな玉を投げるのです。

そして対話を行うのです。


どのように?


まず民衆に呼びかけます。


「国民のみんな、君達が苦しんでいるのはよく分かっている。


デモが行われている間、経済は止まり、家畜や作物は放置され、

観光客も、海外企業も、エジプトから逃げ出している。


これでは、暮らしはよくならない。


みんなの要求を聞こう。

直接対話をしよう。


みんなの暮らしをよくするために

何ができるか一緒に考えよう。


一人一人の意見を聞きたいが、100万人の話を聞くには、10年かかる

みんなの中から代表者を1人選んでくれ。


あるいは何人でも良い。

(1-2週間後の)X月X日に、君達の代表者と話をしたい。

そして、すぐにできる要求にはさっそく応えよう。

時間のかかる要求は、みんなで実現してゆこう」



これで十分です。

これを呼びかけるのです。


するとどうなるでしょうか。

大部分の参加者は、生活が楽になるなら

デモに参加する必要はない

どうやら良い方向に向かいそうだと、エネルギーが抜けます。

(ガス抜き効果ですね。)


そして本気の人間達は、代表者1人を立てようとしますが、

すぐには決まらない。

そして参加者間の意見の対立が生じる。


そうすると政権打倒でまとまっていたデモ参加者のエネルギーが、

意見の異なるグループ間の主張に費やされ、

混乱が始まります。


そして、もう一つ玉を投げましょう。


「国民のみんなよ。生活が苦しいだろう。

仕事を休んで大変なものもいるだろう。

食料品の価格を20%引き下げよう。

ガソリンの価格を下げよう。

臨時の公共工事にXX万人を雇おう。」


あめ玉政策です。

できるだけ具体的なものが良いです。

デモ参加者の村に

大統領の名前の入った食料品を

配布しましょう。


そして、X月X日の対話では、やさしい、物分りの良い指導者を演じる。


代表者(達)の方向性には理解を示しつつ、

具体策の欠点を指摘、

具体策で甘い提案をたくさん出して、

民衆に、もしかすると現在の指導者の方がましかもと思わせる。


対話の終わりに

「それでは一緒に改革を進めよう」


とちゃっかりと、改革を実施するのは自分だとアピール。

新政権への影響力を確保する。


代表者(達)は、各派の調整にエネルギーが奪われるので、

自然に政権打倒に向けた勢いが失われる。



今の流れを見る限りこんなことは起きないと思いますが。



。。。エジプトの話はさらに続く。。。




**********


我々にとって本当に重要なポイントは?


ここまでは戌渡の気楽な話です。

(それなりにまじめな話ではありますが)


それでは、我々日本人にとって、このエジプトの動きから学べるポイントは無いでしょうか。


ある意味、つい最近、日本でも起きていたのですよ!


このエジプトの退陣要求と同じことが。


2009年夏の日本の衆議院選挙を振り返ってみましょう。

20年にわたる景気の悪化で苦しむ国民の積もり積もった不満。

目に見えない講義の声が

「政権打倒」の一点に集中して、民主党の呼びかけにまとまりました。


(その結果、民主党は自民政権を打倒しましたが、

政権政党になった民主党のその後のひどさは

我々みんな知ってのとおり)


さらに言えば、


戌渡が上で書いたような「レッスン」と同じことを、

うまくやったのが

2005年の当時の小泉首相だったのです。

民主党の「政権打倒」に対して


「どれどれ、提案は何だ?」

「それは良い、さっそくやろう」

「どうせ君達にはできないだろう」


と、頼りない民主党の主張を、次々に実施に移す。


国民の間に「民主党はなんだか頼りないし、小泉さんならもっとうまくやってくれそう」


と言うムードが広がり、自民党の大勝利につながりました。




それでは、


なぜ、自民党は2005年に成功したことが、

2009年にはできなかったのか?


そして、現在の民主党への不満にもかかわらず、

なぜ、自民党はそれを政権打倒につなげることができないのか。


その話も、続く。。。