70th Berlinale 2020 - 第70回 ベルリン国際映画祭 2020
Feb 20- Mar 1, 2020(11days)Official site:https://www.berlinale.de/滞在期間:全日鑑賞作品:計25本毎年2月という極寒の時期、ドイツ最大の都市ベルリンで開催される世界三大映画祭の一つであるベルリン国際映画祭。ベルリナーレとも呼ばれ今年で第70回目を迎えた。カンヌやベネチア映画祭と比べると、派手さよりもメッセージ性の強い社会派作品が多い。コンペティション部門は18作品中13作品を鑑賞することができた。ベネチアでは残念ながら落胆することの方が多かったが、今回の滞在はとても充実していた。コンペ作品の中には、たとえ金熊賞を受賞しても一般公開できるのかと心配するほどの社会派作品もあったが、そんなことは構わずに選出している本映画祭の心意気にすっかり魅了された。◆ 鑑賞した作品一覧(以下25本、★は受賞)*コンペティション部門El prófugo /The Intruder(アルゼンチン、メキシコ)Volevo nascondermi /Hidden Away(イタリア)★銀熊賞(男優賞)Le sel des larmes /The Salt of Tears(フランス、スイス)Todos os mortos /All the Dead Ones(ブラジル、フランス)Effacer l’historique /Delete History(フランス、ベルギー)★銀熊賞(70周年ベルリナーレ賞)Siberia(イタリア、ドイツ、メキシコ)Domangchin yeoja /The Woman Who Ran(韓国)★銀熊賞(監督賞)Favolacce /Bad Tales(イタリア、スイス)★銀熊賞(脚本賞)Never Rarely Sometimes Always(アメリカ)★銀熊賞(審査員賞)The Roads Not Taken(イギリス)DAU. Natasha(ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア)★銀熊賞(芸術貢献賞)Rizi /Days(台湾)Sheytan vojud nadarad /There Is No Evil(ドイツ、チェコ、イラン)★金熊賞*オープニング作品My Salinger Year /マイ・サリンジャー・イヤー(カナダ)*ベルリナーレスペシャルPolice /Night Shift(フランス)*エンカウンターズ部門Služobníci /Servants(スロバキア、ルーマニア、チェコ、アイルランド)*パノラマ部門Cidade Pássaro /Shine Your Eyes(ブラジル、フランス)Otac /Father(セルビア、フランス、ドイツ、クロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルチェゴビナ)★観客賞Las Mil y Una /One in a Thousand(アルゼンチン、ドイツ)Exil /Exile(ドイツ、ベルギー、コソボ)The Assistant(アメリカ)Minyan(アメリカ)Håp /Hope(ノルウェー)*フォーラム部門Gorod usnul /In Deep Sleep(ロシア)*パースペクティヴ・ドイツ映画部門Ein Fisch, der auf dem Rücken schwimmt /A Fish Swimming Upside Downーーー今回、5本のコンペ作品のチケットがとれずに鑑賞を断念。しかし結果的に女優賞を受賞した『Undine(ドイツ、フランス)』以外の受賞作品をすべて鑑賞することができた。また多数のドキュメンタリー作品が上映されていたが、今回は観たいフィクション作品が十分にあったためドキュメンタリーはお休み。ちなみに、想田和弘監督によるドキュメンタリー映画『精神0』がフォーラム部門でエキュメニカル審査員賞を受賞。◆ チケット購入についてチケットは上映日の3日前の朝10時から、オンラインとチケットボックスにて発売開始。コンペ作品の初日(監督・出演者登壇)のチケットはほぼ取れず、一般販売の枚数もかなり限られているよう。しかし現地スタッフによれば、オンラインで売り切れでもチケットボックスでは残っていることもあるとの話。しかし、会場が多い上に場所もそれぞれ離れているため、期間中に何度もチケットボックスまで足を運ぶのは効率が悪い。そこでおすすめははやりオンライン購入。数百本もある作品の中、どれをどの場所で鑑賞するというスケジューリングには、公式サイトのお気に入り登録機能が万能だった。お気に入りに登録すれば、自分のスケジュールが一目でわかり、チケットの発売状況も一目でわかる。さらに発売日に完売し諦めていた作品が、前日の夕方に突然『発売中』に変わったりするので、このお気に入りに登録した作品をこまめにチェックするだけで、ほぼ希望の鑑賞スケジュールを組むことができた。チケットのステータスが確認できる。ちなみにチケットは通常13〜16ユーロと、他の映画祭に比べて高めの設定。全体のスケジュールも一目瞭然。出品部門によって色分けされている。◆ 英語字幕について私たち外国人にとっては重要な問題である英語字幕。カンヌ、ベネチアではスクリーン内側に地元言語(2行)、そして画面外の下部に英語字幕(2行)だったため、映像との距離がある分通常よりも目が疲れるし、前の人の頭で字幕が見切れないよう席選びはかなり重要だった。しかしこのベルリン映画祭、画面内1行目に英語字幕、そして2行目にドイツ語字幕という外国人フレンドリーな字幕表示だった。何より衝撃だったのはドイツ語字幕がつくのはコンペのドイツ国外作品のみ。それ以外の数百本の国外作品は英語字幕のみ。これにはかなり驚いた。もちろん観客のほとんどがドイツ国民。フランス・イタリアとの英語力の差が顕著に表れていた。◆ ベルリンの天気今回かなり心配だったのは2月という冬本番の時期ということ。いい席を取るには早くから会場外で並ぶ必要があり、さらに世界で新型コロナウィルスが蔓延している状況下。体調は崩したくない。しかしそんな漠とした不安はすぐに解消され、体感は温暖でとても快適だった。◆ 番外編 ーベルリンの映画館ー空いた時間に一般の映画館にも足を運び、観たかった作品2本を鑑賞した。ドイツの映画館は、英語字幕、ドイツ語字幕、字幕なしオリジナル、吹き替えの4パタンがある。更に人気の作品(当時は『パラサイト』)はモノクロ版で上映するミニシアターもあり、映画文化が栄えている証しだと感じた。そして意外にも観客たちは上映中にポップコーン食べるしビールも飲む。日本に置き換えるとシネコンの客層がミニシアターに来ている印象。つまりはガチ勢でない人たち皆んなが、様々なジャンルの映画を楽しむ文化なんだと推測する。なんとも素敵。◆ まとめ他の2つの映画祭(カンヌ、ベネチア)と比べ、冬本番という悪条件だったにも関わらず、心残る数々の作品と出会え、過去一番の映画祭となった。一生に一度でも世界三大映画祭を訪問したいという夢が今回で3つ全てが叶い、大満足のエンディングとなった。それなのに、ベネチアでは皆無だった翌年への再訪問の意欲が、ベルリンでは3日目にはすでに湧いていた。最高に大満足の映画祭、来年も必ず行きたい。