第274回 「医食同源をグローバルに」
12月16日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます!
コロナ禍で、人の命と健康を守る「食の価値」が一変しました。日本には、世界に誇れる古来からの「医食同源」が人々の健康を守ってきた食文化があります。「オールジャパンで、世界に展開する機会だ」と考えています。
「医食同源をグローバルに」
新型コロナウイルスの流行を受けて食生活が変わった。
リモートワークをしながら、オンライン会議などの合間にフードデリバリーのアプリでランチを注文し、届くのを待ちながら仕事をする機会が増えた。こんなワークスタイルはデジタルネイティブの若者や海外での話と思っていたが、まさか自分もそうなるとは思いも寄らなかった。
一方で、夕食は手間をかけて調理したバランスの良い健康的な料理を家族とゆっくり食べるようになった。
食は命の源だ。コロナ禍で、おいしいだけでなく、安全で健康に良い食事を日常的に食べるようになり、ウェルビーイングな時間が増えた。
世界のコロナウイルス感染者のうち、安価な加工食品を多用する食生活で肥満や糖尿病などの生活習慣病を抱える人は、重症化率や死亡率が高いと言われている。
「フードデザート」と呼ばれる、生鮮食品店へのアクセスが困難であったり、貧困や社会的孤立による食糧真の供給体制の崩壊でまっとうな食事を摂れない人々ほど健康被害が多いとされ、社会課題になっている。
日本には、昔から「医食同源」という言葉がある。
日頃からバランスの取れた食事を摂り病気を代ボブすることが、治療することと源は同じとの考え方だ。
日本の各地域には豊富な食材や調理技術を融合させた季節の伝統料理が数多く存在する。自然と調和した食べ合わせや、食べるタイミングなどを含めて、健康になるノウハウが詰まっている郷土料理だ。
和食には、日本が持つ気候、地形、地域文化がもたらす多種多様な食材や調理方法、保存方法がある。おいしさと健康を進化させ、地元の食材を活かした持続可能な食文化や技術は、全国の地域に挙げきれないほど存在する。
WHOの発表によると、日本は男女合わせた平均寿命が84.2歳と世界一の長寿国だ。自然と調和した伝統料理の種類や調理法(生、焼く、煮る、蒸す、炒める、漬けるなど)は多彩で、世界で最も進んだ医食同源の食文化が人々の健康を守ってきたと私は考えている。
日本にはこうした豊かな食文化ある一方、世界では生活習慣病がコロナの重症化率や死亡率を高めることが明らかになってきたため、健康的な食生活への関心は一段と高まっている。
昨年、人工肉で知ら得るスタートアップのビヨンド・ミートが米ナスダック市場に上場し、時価総額は一時、日本円で1兆4000億円となった。コロナ禍で健康と環境に配慮した「新しい食」への期待が高まった現れだ。
食の価値が一変する中、日本には世界に誇れる医食同源の食文化がある。
全国各地の食材と調理ノウハウを活かすことで、オールジャパンでフードイノベーションを起こす時だ。
第273回 「障がい者は人材の宝庫」
11月04日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます!
少子高齢化で人材不足に悩む日本にとって、障がい者は非常に貴重な人材です。
ココルポートでは障がい者の就労移行支援のサービスを提供し、就労機会を創っています。
障がい者の雇用が増えることで日本企業のダイバーシティ化の推進につながるのでないでしょうか。
「障がい者は人材の宝庫」
「障がいのある人たちの就労移行支援の仕事をすることにしました」。
数年前、佐原敦矢さんの訪問を受けた時の言葉だ。
佐原さんはリクルートで人材ビジネスのキャリアを積み、当時は同社幹部を務めていた。
転職の理由を訊ねると、「障がいのある在宅者は毎年増えているのに、
就労している人は4%に満たないと知り、雇用を支援したいと思った」とのことだった。
(2018年の厚生労働省の発表によると、体や心などに障害を持つ人の推計が約936万人、
日本の全人口に対する割合で約7.4%に増大している。)
佐原さんは17年にスタートアップのココルポートへ転職。18年に社長へ就任した。
同社は12年の創業で首都圏を中心に48拠点の事業所を展開し、
地域の様々な会社と連携を取りながら就労移行支援を進めている。
今年4月には新たなサービスとして、
青年期の障がい者向けに自立に向けた様々な知識や経験を積む学の場「ココルポートカレッジ」を開設した。
「若いうちに生活面の基礎や対人スキルなどを身につければスムーズに働ける」との考えからだ。
これまで培ってきたノウハウを生かして、
就労移行支援する前に、生活面や対人関係での自立を支援するカレッジだ。
「生活スキルと職能スキルを習得することで、一人でも多くの障がい者の就労機会を創りたい」という佐原さんの経営理念に共感し、当社も投資を通して支援している。
日本は今「一億総活躍社会」の実現に取り組んでいる。
少子高齢化で急速に進む人材不足は、国としても最優先の課題だ。
働き方の効率化やAI活用も進んでいるが、生産年齢人口(15~65歳未満)は減少傾向にある。
高齢者が増え続ける日本は、現役世代の負担が高まっている。
コンビニやファストフード店で高齢者や外国人の店員をよく見かけるようになった。
一方で障がい者の雇用は増えているものの、実雇用率はわずか4%台だ。
人手不足の日本にあって障がいを持つ人たちは、日本の埋もれた「人材の宝庫」ではないだろうか。
障がい者を戦力にしている企業には、障がい者一人ひとりの特性や能力を深く理解し、
業務を細分化して仕事に就いてもらっているケースが多い。
経営層が義務として障がい者の雇用を果たすスタンスではなく、
生産性向上や組織のダイバーシティに直結する効果が高いとして積極的に採用している。
ココルポートの現場スタッフが、
「私たちは障がい者一人ひとりに寄り添いながら、その人に適した個別支援をしています。
『どうしてできないのか』ではなく、『どうしたらできるのか』にこだわっています」と話すのはとても印象的だ。
障がい者たちが、生き生きと働くダイバーシティ経営が、日本経済の持続的成長につながると信じたい。
第272回 「生かせ、シニアの経験値」
9月25日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
コロナ禍で企業価値が一変したからこそ、経験豊富なシニア人材の必要な時代となっています。
そうして、ダイバーシティやインクルージョン(受容)が生まれることで、
持続的成長に繋げるスタートアップ企業が増えています。
「生かせ、シニアの経験値」
月曜の朝、当社のエントランスに車椅子が停まるようになって11年になる。
持ち主は77歳のエグゼクティブアドバイザー、合志綱恭さんだ。
日本マクドナルドの取締役営業本部長やCOOなど要職を歴任され、
その後サンフレックス永谷園の社長に転じたプロ経営者だ。
数年前からフットワーク軽く活動され、元日本マクドナルド取締役人事本部長の新井昭彦さんとともに、
豊富な経験知を活かして当社の経営に助言をいただいている。
新型コロナウイルスによるパンデミックは、産業の事業環境を劇的に変え多くの企業が脅威にさらされている。
これまでも、バブル崩壊、阪神・淡路大震災、米同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災と数々の難局があった。
成長期には1つの勝ちパターンとも言える戦略と組織マネジメントで構わないが、
脅威を乗り越え成長していくには、多様な勝ち筋と組織変革が必要だ。
予期しない環境下で成長している企業には、
大手や上場企業で実績を残したシニア人材の経験知やスキル、ノウハウを取り入れているケースが多い。
そこからダイバーシティ(多様性)や受容を意味するインクルージョンが生まれ、持続的成長いつなげる原動力にしている。経験豊富なシニア人材とエネルギー溢れるメンバーが互いを認め合う一体化した組織が、変化に対し大きな役割を果たしているのだ。
2011年にスタートした再生可能エネルギー事業の自然電力グループでも、
様々な業界から参加したシニア人材の活躍が目立つ。
現在、栃木県に建設しているメガソーラーを手掛けるjuwi(ユーイ)自然電力では、70代の経験豊富な元工事会社幹部が、多くの太陽光発電所プロジェクトの品質管理を統括。次世代に技術を伝承しながら「人と事業」の成長を支える組織作りに大きく貢献している。
(写真提供:自然電力株式会社)
また、長野県の小布施町に流れる松川の水源を活用した「小布施松川小水力発電所」では、
71歳の元JFEエンジニアリングのプロジェクトマネージャーが、企画開発から設計・工事を監督し、運営を担っている。
この発電所は町の10%の世帯に供給できる能力を持つ。
地産地消の発電所を通して各地域での「エネルギーの分散化と脱炭素化」を目指す取り組みだ。
スタートアップの中には、社会課題を解決する革新的なサービスや製品に挑戦している有望な企業が多いが、コロナ禍で企業価値が一変した。
資金調達が困難になり、厳しい状況へ追い込まれ、事業モデルを転換する動きも出ている。
経験豊富なシニア人材には、難問に取り組み修羅場を乗り越えたベテランが多い。シニア人材が呼び起こすダイバーシティやインキュベーションをスタートアップも取り込めば、持続的成長につながる可能性が広がる。
第271回 「オンライン講座、試行錯誤」
8月21日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
コロナ禍の影響で、多くの大学でキャンパスが閉鎖しました。
当社の「21期イントレプレナー塾」をオンラインに切り替え、スタッフの頑張りで7月3日に無事スタートしました。
私も試行錯誤しながらオンライン講義に取り組み、
チャットやスラック・挙手・アンケート投票機能駆使した2ウェーコミュニケーションは利点も多く、
デジタル世代の塾生は、オンラインでの会話に慣れており手応えを感じました。
少人数のブレイクアウトルームでは、移動時間や、机、椅子がなくても、
バーチャルな部屋割りでのワークショップが展開でき、場の制約がなくなったことで、
国内外の何処にいてもオンラインによって参加できます。
オンライン版イントレプレナー塾を通じて、ニューノーマルを地域企業の社内起業が誕生する機会に繋げ、
少しでも貢献できればと期待しています!!
「オンライン講座、試行錯誤」
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、多くの大学がキャンパスを閉鎖した。
当社が運営している企業内の起業家育成塾でもある「イントレプレナー塾」も開催方法の見直しを余儀なくされ、オンラインへの切り替えを決めた。
私は試行錯誤しながらオンライン講義に取り組むなかで、利点が多いことに気づいた。
チャット、挙手、アンケート投票といった機能を使えば、塾生の反応をリアルタイムに映し出すことができる。
2ウェーコミュニケーションが実現するのだ。
デジタル世代の塾生はオンラインでの会話に慣れており、講義がこれまでより活発になった面があった。
「ブレイクアウトルーム」という機能では少人数のバーチャルな部屋割りができる。
机や椅子がなくても、グループに分かれてワークショップが展開できる。
また、講義を収録することで参加できなかった塾生も動画で学ぶことができ、繰り返し利用できるメリットもある。
そして何よりも「場」に参加する制約がなくなり、国内外どこからでも参加できる。
定着すれば日本全国で社内起業の機会が増え、地方創生に貢献できる。
一方、課題も明確になった。講師のオンライン講義の経験値や塾生の通信環境など個人に起因する問題がある。
さらに塾生一人ひとりと目線を合わせ、近づきながら対話ができないことで、意思疎通が十分図れない。
講師や塾生同士のホットな会話の場は消失してしまう。インタラクティブなコミュニケーションが難しいのだ。
こうした課題に対し、当社では講師陣と徹底したシミュレーションを繰り返したほか、
塾生の通信環境の改善を細かくフォローした。
「全員参加型」をコンセプトとし、5分程度の早いテンポで質問・回答、アンケート投票などを行い、
緊張感を持ちつつ互いの関心をひき付け合う工夫をした。
オンラインで集中可能な時間は2時間30分と想定。
講義時間は短くし回数を増やした。ワークショップでの発言を高められるようにしたほか、
多様なコミュニケーションの仕組みや機能を導入した。
7月3日、「オンライン版イントレプレナー塾」がスタートした。
開講日「起業家とは時代を洞察し『何のために存在するのか』考えながら、
自ら事業を創り出し、退路を断つ覚悟でしつこくやり遂げる人だ」と塾生にメッセージを送った。
イントレプレナー塾は今年で21期目となり、企業からの参加者が累計1,400人を超え、多くの事業が誕生している。
コロナ禍で産業の構造変化が加速し、新たなビジネス機会が生まれている。
いつの時代も、新しい試みはたった一人の「熱狂」から始まる。
来るべきニューノーマルを起業家が誕生する絶好の機会にしていきたい。
第270回 「地方移住、いずれ新常態に」
7月8日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
新型コロナウイルス感染拡大によるテレワーク化によって、故郷へUターン移住をした、親しい起業家のアプリ開発とデータ分析を手掛けるフラー渋谷さんについて書きました。ニューノーマル(新常態)により、働き方やライフスタイルが大きく変わり始めました!! 参考になれば、幸いです。
「地方移住、いずれ新常態に」
「故郷の新潟にUターンし移住することにしました」。新型コロナウイルス感染拡大の渦中、支援先の起業家から連絡があった。
千葉県柏市に本社を構え、アプリ開発とデータ分析を手掛けるフラーの社長、渋谷修太さんからだった。同社は100人規模のスタートアップ企業で、千葉以外に新潟、韓国に拠点を持っている。
移住の理由を訊ねると、「コロナの影響でアポが激減し、仕事もフルリモートになった。最初の頃は不便さを感じたが、ウェブ会議中心のワークスタイルになってから、以前よりも仕事の効率が上がった。しかも、打ち合わせのために移動していた時間も疲労もなくなった。今までなぜあんな生活をしていたのか、もう以前の生活には戻れない」とのことだった。
渋谷さんによると、「一度洗濯機を使ってしまったら、手洗いには戻れないのと一緒の感覚なのだ」という。ウェブ会議が急速に普及したことで、今までのように“とりあえず会う”アポはなくなり、“これは対面にした方が良いな”という選択になる。
どこに住んでも仕事に支障がないなら、わざわざ東京に住む必要もないので、大好きな自然あふれる故郷の新潟に移り住んで仕事をしようと決めたのだ。新潟にいると「必要としてもらえている」とモチベーションが上がるのだという。
「自分たちのようなIT企業は圧倒的に少なく、経営者としても役に立てることがたくさんある。せっかくなら、自分の存在価値を一番実感できる場所が良いと思った」と移住を決断したそうだ。
在宅やリモートワークが普及し働き方は変わった。通勤時間はなくなり、どこに住んでいても仕事ができるスタイルは、子育て世代の支援につながる。
都会から地方の戸建てを求めて移住する人が増えていると聞く。日本は他の先進国に比べデジタル・トランスフォーメーション(DX)が遅れている。特に地方は顕著でコロナ禍をきっかけに、地方でもデジタル化を進める好機をいえる。
以前紹介したオンラインの医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」は、その後、参加する医師が270人を超え、コロナ禍もあり成長している、365日24時間スマホで医師に相談できるサービスは日本のどこに住んでいても利用できる。この結果、都市と地方の医療格差がない世界が生まれた。
コロナ禍に伴うニューノーマル(新常態)では産業のDXだけでなく、フラーの渋谷さんのように地方に移住し、新たな挑戦をする働き方やライフスタイルを選ぶ人が増えてくるのかもしれない。先行きが見通せない経済状況のなか、生活様式や働き方の意識の変化が、「地方回帰」の流れを生み出し、それがいずれニューノーマルになるだろう。









