前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田は前田からコロッケの
レシピを学ぶ理由を聞かれ、
以前知り合ったお店の店長の話を
例に話していました。
第193話:作業コストが上がる
あるお店の店長と
エリアマネージャーとの対立は
「取り皿点数を上げろ」という
命令から発生したものでした。
エリアマネージャーは
簡単に売上UP出来ると言い放ち
頑張れば達成できると言います。
しかし結果的には売上は
下がってしまいました。
報告会議でエリアマネージャーから
その店長に
「やる気が無いから達成できない」
と責められる始末でした。
会議では素直に反省して
改善努力を約束しましたが、
お店に帰って来てその店長の
怒りは頂点に達していました。
「ふざけるな、あのバカ上司」
機嫌の悪い店長にスタッフが
気を使います。
「店長どうかしたんですか?」
「あんなバカ上司には
もうついて行けん!」
そんな怒号がお店に響いていました。
しかし、その店長の怒りは
そのうちに収まり
会社を辞める訳でもなく
日々仕事が続いていきます。
仕事を辞めても経済的に苦しくなる
だけだし負けた様で嫌なので
その時の事は我慢して店長は
仕事を続けて行くのです。
当然仕事は楽しくも無いですし
上司に対しては不信感と
嫌悪感を持ちながら
表面上は普通に接します。
するとそのお店は条件的には
好物件のはずが業績が
下がっていきました。
飲食店の様にサービス業は
人の精神が業績を左右する仕事で
その成果は大きく違いが生まれます。
この事例の問題点は、
上司が業績の責任を部下のせいにし
改善策や相談・アドバイスを
しなかった事です。
エリアマネージャーと言う役職は
店長よりも上にあるので
店長の能力が低くても上司が
歩み寄らないといけない場合も
あると言う事です。
前田
「話が良く見えないんですが
何でケンカしてたんですか?
それに何で売上は下がっちゃった
のでしょうか?」
前田の質問に本田はこう答えました。
店長とエリアマネージャーの対立の
理由は、
・現場の意見との食い違い
・物理的な問題
・お互いの歩み寄り
・フォロー
この様に挙げられます。
まず「取り皿点数を上げる」
という指令が問題の原因ですが
この事によって発生する、
・作業コストが上がる
・在庫管理が増える
という問題が出てきます。
エリアマネージャーは現場経験無く
頭で物を考えるので施策は
理論で話していきます。
確かに
理論上は儲かる算段なのですが
そこに人の意識や物理的なロスを
考えて発言していなかったのです。
そしてモノの言い方にも
問題がありました。
取り皿点数を上げる施策では
低価格にしたメニュー数が倍増し
仕込みや食材の在庫数、食器や
設備が比例して増えます。
作業コストが上がる事は
それだけ人手が必要になるのです。
実際に普段から人件費を気にして
作業効率化を工夫しているお店なら
単純に商品数を増やしてしまうと
これ以上の効率化が限界なので
料理遅れや在庫ロスやミスが重なり
お客様に迷惑をかける結果に
なってしますのです。
だからこそ飲食店には昔から
ある鉄則があると本田は
前田に説明したのでした。
つづく
前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
今回は部下の前田と共にあるお店で
料理のリサーチを行っていました。
第192話:取り皿点数を増やす
本田承太郎と前田は名古屋にある
創作料理のお店の看板メニュー
クリームコロッケのリサーチを
行っていました。
前田は料理長を呼び出して
レシピの説明を詳しく聞く本田が
なぜそんな事を聞くのか
質問しました。
本田
「うちの会社でお店を出した場合
店長や料理長を採用して料理や
メニューを開発して貰う事に
なるよな?」
前田
「そうですね」
「でもその時に知識の無い
人間の意見を聞こうとはあまり
思わないだろう?」
「そうかも知れませんけど
私たちが直ぐに長年修行してきた
料理人の様になれるとは
思えませんけど」
「確かに技術は長年の修行と
知識・経験が必要になるが
携わる以上必要な知識を
持っていないと迂闊に指示も
出来ないだろう?」
「まあそうですね」
「それに味覚や感性を料理人と
はりあう訳じゃあない」
「どう言う事ですか?」
「自分のポジションに合った
知識を身に付ければ良いと
俺は思っているんだよ」
「ポジション?」
「以前知り合った飲食店の
店長から聞いたのだが、
チェーン店などで
店長を管轄するエリアの
マネージャーが料理音痴で
衝突する事が良くあるらしい」
本田の言う事例は
この様な物でした。
フランチャイズチェーン店の
あるお店で調理歴が長い店長が
上司のエリアマネージャーと
対立しています。
理由は、
エリアマネージャーから
お店の生産性を高めろと
指示が出ていて
お客様の
取り皿点数を増やす施策を
行う様に指導がありました。
取り皿点数とは
お客様が1回の食事で注文する
商品の個数を指しています。
例えば、
ハンバーガーショップなら
セットで580円
商品は
ポテト・チーズバーガー
ドリンク
となっていました。
取り皿点数を増やすと言う事は
追加で何か注文させて客単価を
上げると言う事になります。
この時お店はどうすれば
商品を追加で買って
貰えるのでしょうか?
ハンバーガーショップなら
「セットにナゲット追加で
50円引き」
「追加ハンバーガー100円」
など割引施策を行ったりすると
普段はセットだけの人も
追加でオーダーが取れる
可能性が上がります。
お客様の平均単価が上がると
お店の売り上げは必然的に
上がるので取り組み易い
施策となります。
先ほどのチェーン店の上司も
店長にそのような指示を
出していました。
しかし、
お店は商品数が100種類で
現実的に割引をする事が
出来ませんでした。
そこで上司の指示した対策は、
「1品の商品価格と量を下げて
注文数を増やす」
と言う作戦です。
「今まで300円の商品が
平均5品注文で1人当たりの
お会計が1500円なら、
もう一品欲しいという量に
商品のボリュームを下げて
価格を一皿280円に設定し
6皿注文して貰えば
売上は1人1680円になって
簡単に
売上UP出来るだろう」
上司はこの様に話しています。
しかしこれには
ある問題があったのです。
つづく
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
今回は部下の前田と共にあるお店で
料理のリサーチを行っていました。
第192話:取り皿点数を増やす
本田承太郎と前田は名古屋にある
創作料理のお店の看板メニュー
クリームコロッケのリサーチを
行っていました。
前田は料理長を呼び出して
レシピの説明を詳しく聞く本田が
なぜそんな事を聞くのか
質問しました。
本田
「うちの会社でお店を出した場合
店長や料理長を採用して料理や
メニューを開発して貰う事に
なるよな?」
前田
「そうですね」
「でもその時に知識の無い
人間の意見を聞こうとはあまり
思わないだろう?」
「そうかも知れませんけど
私たちが直ぐに長年修行してきた
料理人の様になれるとは
思えませんけど」
「確かに技術は長年の修行と
知識・経験が必要になるが
携わる以上必要な知識を
持っていないと迂闊に指示も
出来ないだろう?」
「まあそうですね」
「それに味覚や感性を料理人と
はりあう訳じゃあない」
「どう言う事ですか?」
「自分のポジションに合った
知識を身に付ければ良いと
俺は思っているんだよ」
「ポジション?」
「以前知り合った飲食店の
店長から聞いたのだが、
チェーン店などで
店長を管轄するエリアの
マネージャーが料理音痴で
衝突する事が良くあるらしい」
本田の言う事例は
この様な物でした。
フランチャイズチェーン店の
あるお店で調理歴が長い店長が
上司のエリアマネージャーと
対立しています。
理由は、
エリアマネージャーから
お店の生産性を高めろと
指示が出ていて
お客様の
取り皿点数を増やす施策を
行う様に指導がありました。
取り皿点数とは
お客様が1回の食事で注文する
商品の個数を指しています。
例えば、
ハンバーガーショップなら
セットで580円
商品は
ポテト・チーズバーガー
ドリンク
となっていました。
取り皿点数を増やすと言う事は
追加で何か注文させて客単価を
上げると言う事になります。
この時お店はどうすれば
商品を追加で買って
貰えるのでしょうか?
ハンバーガーショップなら
「セットにナゲット追加で
50円引き」
「追加ハンバーガー100円」
など割引施策を行ったりすると
普段はセットだけの人も
追加でオーダーが取れる
可能性が上がります。
お客様の平均単価が上がると
お店の売り上げは必然的に
上がるので取り組み易い
施策となります。
先ほどのチェーン店の上司も
店長にそのような指示を
出していました。
しかし、
お店は商品数が100種類で
現実的に割引をする事が
出来ませんでした。
そこで上司の指示した対策は、
「1品の商品価格と量を下げて
注文数を増やす」
と言う作戦です。
「今まで300円の商品が
平均5品注文で1人当たりの
お会計が1500円なら、
もう一品欲しいという量に
商品のボリュームを下げて
価格を一皿280円に設定し
6皿注文して貰えば
売上は1人1680円になって
簡単に
売上UP出来るだろう」
上司はこの様に話しています。
しかしこれには
ある問題があったのです。
つづく
前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
今回は部下の前田と共にあるお店で
料理のリサーチを行っていました。
第191話:ベシャメルソース
本田承太郎は部下の前田と共に
クリームコロッケが美味しいお店に
視察にやってきていました。
そのお店で得た情報を元に本田は
クリームコロッケのレシピと
作り方を学んだのでした。
一般的なクリームコロッケは
そうやって作るかご存知でしょうか?
クリームコロッケのクリームは
ホワイトソースと呼ばれる
ミルク・バター・小麦粉ベースの
ソースでまろやかな味わいが
特徴です。
フレンチでベシャメルソースとも
呼ばれていますね。
プロが作るベシャメルソースは
お店で出すソースの分量を考えると
相当な労力が必要な体力の要る
仕込みだそうです。
ホワイトソースを作る前の段階
「ホワイトルー」と言う
バターと小麦粉を練り合わせ
加熱処理した物を作ります。
ホワイトルーには月桂樹の様に
爽やかな風味の香辛料を加え
オーブン加熱で焦げない様に
焼き上げます。
このルーの素にミルクやバターを
加えながら乳化させて加熱する事で
粘りのある生地になっていきます。
この工程では絶対に
焦がしていけません。
焦げ易い事が特徴で焦がすと
その時点で匂いが生地全体に移り
全て失敗になります。
そして生地の味わいと口触りに
重要なのが「グルテン」と呼ばれる
タンパク質組織を形成させる事で
強力な粘りと弾力性を生地に
生み出させる事が出来ます。
工程としては、
鍋にバターを溶かしホワイトルーを
少しずつ加えながら馴染ませます。
次にミルクを少しずつ加え、
生地になじませる為に木べらで
練り混ぜて行きます。
少量のミルクが生地に馴染んだら
また同じ事を繰り返して
少しずつ弱火で加熱しながら
生地とミルクを練り混ぜて
馴染ませていきます。
ある程度ミルクを混ぜて
生地がまとまりだしたら、
次はグルテンを形成させる
「練り」を行っていきます。
グルテンは小麦粉などに含まれる
たんぱく質を練る事で作る事が
出来ますのでここでしっかり
生地を練らないと
生地がまとまらず
コロッケにする事は
出来なくなります。
パンやピザ生地ケーキや
シュークリームなども
このグルテンの作用を利用して
生地を作っています。
ミルクを加えながら生地を
弱火で加熱し木べらで
叩くように練っていきます。
レストランの様に仕込む量が
多ければ多いほどこの作業は
重労働になるので
シェフは飛び散ったソースで
火傷が絶えないそうです。
最近では機械で練り上げる事も
出来るのですが本田達が訪れた
このお店ではシェフが
手作りにこだわって
3時間かけて仕上げている
そうです。
コロッケのホワイトソースを
作る段階でここまでの苦労があり
しかもプロでも失敗する事がる
焦げ易い仕上げにも
3時間も掛けている事に
驚きました。
前田
「あのう、そもそもなんで
クリームコロッケのレシピを
知らなくちゃいけないんですか?」
前田はふと疑問に思い
本田に質問しました。
つづく
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
今回は部下の前田と共にあるお店で
料理のリサーチを行っていました。
第191話:ベシャメルソース
本田承太郎は部下の前田と共に
クリームコロッケが美味しいお店に
視察にやってきていました。
そのお店で得た情報を元に本田は
クリームコロッケのレシピと
作り方を学んだのでした。
一般的なクリームコロッケは
そうやって作るかご存知でしょうか?
クリームコロッケのクリームは
ホワイトソースと呼ばれる
ミルク・バター・小麦粉ベースの
ソースでまろやかな味わいが
特徴です。
フレンチでベシャメルソースとも
呼ばれていますね。
プロが作るベシャメルソースは
お店で出すソースの分量を考えると
相当な労力が必要な体力の要る
仕込みだそうです。
ホワイトソースを作る前の段階
「ホワイトルー」と言う
バターと小麦粉を練り合わせ
加熱処理した物を作ります。
ホワイトルーには月桂樹の様に
爽やかな風味の香辛料を加え
オーブン加熱で焦げない様に
焼き上げます。
このルーの素にミルクやバターを
加えながら乳化させて加熱する事で
粘りのある生地になっていきます。
この工程では絶対に
焦がしていけません。
焦げ易い事が特徴で焦がすと
その時点で匂いが生地全体に移り
全て失敗になります。
そして生地の味わいと口触りに
重要なのが「グルテン」と呼ばれる
タンパク質組織を形成させる事で
強力な粘りと弾力性を生地に
生み出させる事が出来ます。
工程としては、
鍋にバターを溶かしホワイトルーを
少しずつ加えながら馴染ませます。
次にミルクを少しずつ加え、
生地になじませる為に木べらで
練り混ぜて行きます。
少量のミルクが生地に馴染んだら
また同じ事を繰り返して
少しずつ弱火で加熱しながら
生地とミルクを練り混ぜて
馴染ませていきます。
ある程度ミルクを混ぜて
生地がまとまりだしたら、
次はグルテンを形成させる
「練り」を行っていきます。
グルテンは小麦粉などに含まれる
たんぱく質を練る事で作る事が
出来ますのでここでしっかり
生地を練らないと
生地がまとまらず
コロッケにする事は
出来なくなります。
パンやピザ生地ケーキや
シュークリームなども
このグルテンの作用を利用して
生地を作っています。
ミルクを加えながら生地を
弱火で加熱し木べらで
叩くように練っていきます。
レストランの様に仕込む量が
多ければ多いほどこの作業は
重労働になるので
シェフは飛び散ったソースで
火傷が絶えないそうです。
最近では機械で練り上げる事も
出来るのですが本田達が訪れた
このお店ではシェフが
手作りにこだわって
3時間かけて仕上げている
そうです。
コロッケのホワイトソースを
作る段階でここまでの苦労があり
しかもプロでも失敗する事がる
焦げ易い仕上げにも
3時間も掛けている事に
驚きました。
前田
「あのう、そもそもなんで
クリームコロッケのレシピを
知らなくちゃいけないんですか?」
前田はふと疑問に思い
本田に質問しました。
つづく