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本田承太郎

飲食店開業を目指す為に学ぶべき知識。
スキルと資金・経験を積んで
自分の城を持つ為にやるべき10の事。

前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田達はプロジェクトを今後
進めて行く為に必要な人員補充の
話をしていました。


第199話:渡辺創一郎

本田承太郎が働いている藤堂物産は

現社長の渡辺社長と実弟でもある
専務の実の父、

渡辺創一郎と言う人物が一代で
創業した会社でした。

そして会社を受け継いだ二人の息子が
取締役となり、渡辺創一郎は
会長職に就いた為

この会社は典型的な「一族経営」
企業となったのです。

渡辺総一郎の後の代に3人社長を
歴任した人物もいますが
現在は職を離れています。

10億の年商と言えば
儲かっている様に聞こえますが
この会社も組織としては
まだ未熟な部類で
数字ほど盤石な会社では
ありませんでした。

トップが親族構成なので
まとまりがあるのは事実ですが
ワンマン経営とも言えます。

当然その発言権や権力は絶大で
会長の「鶴の一声」というものも
度々会社を揺るがす事態となるのです。

そんな中、
会長が今期のプロジェクトとして
「鶴の一声」を放ったのが
飲食事業参入と言う
プロジェクトなのです。

本田の所属する部署で
事業の立案を任されているのですが

この部長の責任者
藤森部長と言う男はどうやら
会長の遠い血縁にあると言う事が
解ったのでした。


つづく

前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田の部下前田は
美味しいクリームコロッケの作り方を
聞いていました。


第198話:履歴書では解らないのが料理人

本田の部下である前田は
人気店の看板メニューである
海老クリームコロッケの作り方を
本田が学んだ事から指示を受けて
後日再現レシピを完成させました。

本田
「本格的にお店を管理するなら
裏方の流通や開発、販売促進等の
企画部も必要になってくるな」

前田
「そうですね。

でも流通ルートや
商品開発に携わる人は専門的な
技術を持っている人を新しく
採用しないといけませんよね?」

「そうなるな。
現場に入る店長や調理スタッフに加え
出店計画を進めて行ける専門職も
必要になると思う」

「会社はどう言っているんですか?」

「今回は必要な企画書と稟議を
プレゼンすれば通るはずだが」

「必要な人員も選別する
役割なんですか?」

「もちろん企画を練る段階で
色々なツテを当たっているが
こればかりは少し難航しそうだな」

「なかなか良い人は
見つかりませんよね~

だって料理人なら自分で
お店持ちますし有能な管理職なら
よその会社でそういうポストに
就いてますもんね」


本田達が話していた様に
チェーン店等の調理マニュアルを
作成する役割は現場経験のある店長や
専門的な技術のある人を引き抜いて
そのポジションを任せたりします。

注意点としては、
この役割を担っている人は
「つなぎ役」でなければいけません。

つなぎ役とは、
現場と会社をつなぐ役割です。

店長や調理担当者にメニュー開発や
メニューのマニュアルを作成させると
偏った物が出来上がります。

外部に依頼したり現場にいない者が
同様の役割を担うと完成度が
低いものが出来上がり易くなります。


つまりどちらにしてもバランスは
悪いと言う事です。


社長が味見をしてOKを出せば
メニューに載るというスタイルの
お店だとしても、

「社長がOKを出す様な商品」
偏って行きますので

社長がそれを意図して
OKを出しているなら構いませんが
一人の判断によって左右されるのは
非常に危険です。


調理マニュアルや作業工程、
什器等のオペレーション管理を
考案するのは現場店長から参考にして
意見を聞き、

開発やレシピは専門の技術職の
職人が作成する方が良いでしょう。

内部の経験者でも構いませんが
何十年も調理修行をした職人に
勝てる店長などそうはいません。

しかし、

調理業界はその実力を
実際に体験しないと解らない事
問題なのです。

普通の企業と同じように人材を
広告で募集して普通に面接をしても

会社が本当に知りたいと思っている
本人の実力は経歴詐称出来て、
都合の良い様にアピールできる事が
飲食業の良くない所です。

つまり
履歴書では解らないのが料理人
なのです。

そうなると、
実際に料理の腕前を体験するか
噂を聞いて引き抜くかと言う事が
良い人材の発掘方法となるのです。


本田承太郎はそういう意味でも
募集して集まった人材に
今回の様な重要な役割を
与えるつもりはありませんでした。



つづく

前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田の部下前田は
美味しいクリームコロッケの作り方を
聞いていました。


第197話:意図しない味の当たりレシピ

前田は本田が学んだ
クリームコロッケのコツと注意点が
ここまで細かい事に驚いていました。


コロッケの作り方は解ったので
次はソースについてになります。

クリームコロッケのソースには
賛否両論あって

タルタルソース
ウスターソース
トマトソース
オリジナルソース


と言う様にお店の提供の仕方から
個人の好みも様々なのでは
無いでしょうか。

人によっては、
「クリームコロッケは
中身がソースだし」


と言う人もいます。

そのままでも美味しいのですが
プロの腕の見せ所でもある
「調理」と言うものが味わえるので
お店ではその店の味を楽しむのが
ベストと言えます。

本田達が来店したお店の
クリームコロッケもトマトソースで
あしらえていましたが、

イタリアンの定番である
サルサ・ポモドーロの様な
酸味のあるソースでは無く
オリジナルの風味です。

一般的にトマトソースと言えば
パスタをイメージしますが

辛みのあるアラビアータソースや
ペスカトーレ、ボンゴレロッソ等の
人気がある魚介系のソースと

ケッパーやオレガノメインの
香辛料で作る特殊なソースも
存在します。

このお店のトマトソースは
独特のコクがあり酸味は抑えられ
クリームコロッケの味によく合う
マイルドな味わいです。

ベースになっているのは
ビーフグレービーとデミグラスで
トマトをペーストしたベースに
合わせる事でまろやかに旨味と
コクが出るそうです。

バルサミコ酢や塩・バターで
味を調えて作られたソースは
普通のトマトソースと違い
独特のとろみとクリーミーな
感じがしました。

前田
「こういう感じのまろやかな
トマトソースって初めてです」


前田が言うとおり、
このソースのメインの部分が
生クリームを入れる事で
その風味とまろやかさが
出ているのでした。

シェフによるとあくまでも
クリームコロッケの味をメインに
考えているので添える程度に
あしらえて

引き立てる様な味わいに
仕上げた物が意外と成功して
美味しく出来上がったそうです。


料理をされている方に聞くと
プロでも偶然出来上がる
奇跡の逸品
というものが
あるそうです。

それは経験に裏打ちされた
確かな技術と経験則による調節や
鍛えられた味覚などがあって
初めて、

「意図しない味」
偶然の様に生まれるのであって
全くの素人が本当に偶然できる
と言う訳ではありません。


長く調理をしていると
そうやって研究の末に生まれた
「当たりのレシピ」
出てくるそうです。

前田
「このトマトソースもその
当たりレシピだったんですか?」


本田
「そうらしい。
そのおかげで今はお店の
人気メニューのベースとなって
他のロールキャベツやオムレツ等に
幅広く使われているそうだよ」


「へ~。

意図しない味の当たりレシピって
面白いですね」

そう言うと前田は
改めてお店のトマトソースを使った
人気メニューを注文して
食べたのでした。

つづく