前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田の部下前田は
美味しいクリームコロッケの作り方を
聞いていました。
第197話:意図しない味の当たりレシピ
前田は本田が学んだ
クリームコロッケのコツと注意点が
ここまで細かい事に驚いていました。
コロッケの作り方は解ったので
次はソースについてになります。
クリームコロッケのソースには
賛否両論あって
タルタルソース
ウスターソース
トマトソース
オリジナルソース
と言う様にお店の提供の仕方から
個人の好みも様々なのでは
無いでしょうか。
人によっては、
「クリームコロッケは
中身がソースだし」
と言う人もいます。
そのままでも美味しいのですが
プロの腕の見せ所でもある
「調理」と言うものが味わえるので
お店ではその店の味を楽しむのが
ベストと言えます。
本田達が来店したお店の
クリームコロッケもトマトソースで
あしらえていましたが、
イタリアンの定番である
サルサ・ポモドーロの様な
酸味のあるソースでは無く
オリジナルの風味です。
一般的にトマトソースと言えば
パスタをイメージしますが
辛みのあるアラビアータソースや
ペスカトーレ、ボンゴレロッソ等の
人気がある魚介系のソースと
ケッパーやオレガノメインの
香辛料で作る特殊なソースも
存在します。
このお店のトマトソースは
独特のコクがあり酸味は抑えられ
クリームコロッケの味によく合う
マイルドな味わいです。
ベースになっているのは
ビーフグレービーとデミグラスで
トマトをペーストしたベースに
合わせる事でまろやかに旨味と
コクが出るそうです。
バルサミコ酢や塩・バターで
味を調えて作られたソースは
普通のトマトソースと違い
独特のとろみとクリーミーな
感じがしました。
前田
「こういう感じのまろやかな
トマトソースって初めてです」
前田が言うとおり、
このソースのメインの部分が
生クリームを入れる事で
その風味とまろやかさが
出ているのでした。
シェフによるとあくまでも
クリームコロッケの味をメインに
考えているので添える程度に
あしらえて
引き立てる様な味わいに
仕上げた物が意外と成功して
美味しく出来上がったそうです。
料理をされている方に聞くと
プロでも偶然出来上がる
奇跡の逸品というものが
あるそうです。
それは経験に裏打ちされた
確かな技術と経験則による調節や
鍛えられた味覚などがあって
初めて、
「意図しない味」が
偶然の様に生まれるのであって
全くの素人が本当に偶然できる
と言う訳ではありません。
長く調理をしていると
そうやって研究の末に生まれた
「当たりのレシピ」も
出てくるそうです。
前田
「このトマトソースもその
当たりレシピだったんですか?」
本田
「そうらしい。
そのおかげで今はお店の
人気メニューのベースとなって
他のロールキャベツやオムレツ等に
幅広く使われているそうだよ」
「へ~。
意図しない味の当たりレシピって
面白いですね」
そう言うと前田は
改めてお店のトマトソースを使った
人気メニューを注文して
食べたのでした。
つづく