「PDSD?」健三は医師に向かって聞きなれない言葉を復唱した。
「ええっ?心的外傷というのでしょうかね?余程の事故の時の恐怖が襲いかかってくるように、病室で叫んでいるようです」
「えっ?娘が叫んでいたんですか?叫ぶほど声が出ていたというのですか?」健三は思わず反問した。
「声が出ていたとしても声帯を痛めていますのでね、できるなら、少しずつ音をだしていきたいので、余計に悪くしなきゃいいなと心配しているのですよ!」
「・・・でも声が出たんですね」
「ええっ。喜んでいいのかわからないのですが、慎重に治療しなくてはいけないのですが・・それよりも、かなりトラウマになっているようですので、そちらの心的ケアがリハビリと一緒に大切になっていくのかもしれません!」
「ええっ、それは少しずつ家族でケアをしていくつもりです。命が助かっただけでも本当に感謝の何者でもありません。精神的なフォローは私もそうですが、娘の婚約者とも協力してやっていくつもりです」健三はかしこまりながらいった。
「・・はぁ、もう1人はお宅のお嬢さんは強運ですな。こんな大惨事な事故に巻き込まれても生き延びてこれて。でもよく聞くんですよね。いろんな事故でも生き延びた人が抱く罪悪感みたいなものを感じてしまうというんですよね。お嬢さんもトラウマもそうですが、なんていうか自分が生き延びたということに罪悪感を感じたり、うしろめたく感じたりしないで欲しいんですよね」医師は健三を諭すようにいった。
「はい、娘には一度は死んだはずの命がまた再生できるチャンスを与えてくださったので、娘にはしっかり生きていくように伝えたい。亡くなった人の分も・・・」健三の言葉に医師は深くうなづいた。
「ある意味でこんな言い方したらあれですが、<余生>みたいなものだと思うんですよ。一度は亡くなったはずの命だったと思えば、もっと自由に生きてもらいたいものだ。若いんだから、せっかく助かったんだから」医師はやんわりとした口調でいった。
p.s 悲しみの雨、、更新しました。
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「第2章 雨の中の告白」です。
今日は荻窪に諸用でおり、帰りに揚げたての揚げドーナツを食べたら、とっても幸せな気持ちになりました。ふんわりした帰り道です。