経営者のための債権管理の目的や方法などについてご紹介します。

 

  売上債権の残高管理  

 

 商品等の販売では、代金の回収が重要です。

代金の回収状況が悪いと、すぐに資金繰りに影響します。

売上債権の残高は、得意先ごとにいくらの売上と回収があったかを管理します。

販売代金を回収しないかぎり、経費の支払いを続けるのは不可能であるため、

営業活動を継続していくことが困難になります。

 売上債権の残高を管理するためには、「売掛金管理台帳」などの帳簿を作成し、

得意先ごとに売上債権の残高を確認していくことが有効です。

それぞれの得意先に対して、

いつ、なにを、 どれだけ、いくらで販売したのかを確認します。

 

   請求書の発行と入金確認

 

  売上債権管理の前提として、納入した商品すべてについて売上計上されて、

請求書が発行されていなければなりません。

当然のことながら、 請求書の発行が遅れれば入金の遅れにつながります。

  入金確認作業では、請求した金額が回収期 日までに入金されたかを確認します。

これを「消し込み作業」と呼びます。

消し込み作業は重要な仕事です。

忘れたり間違えたりすると、その後の取引先への誤請求の原因となります。

消し込み作業の際に、回収遅れや請求金額と入金金 額に差異を発見した場合には、

担当者はその差異の内容を把握し、得意先に問い合わせを行い、

入金予定日を確認します。

 

   期末の債権残高確認 

 

 売上債権の残高管理は、期中において、社内で定期的に確認を行うのは

もちろんのこと、期末には得意先ごとに「残高明細書」を作成・発行し、

各得意先に対して売上債権の残高が合っているか確認することで、

社内の不正防止に役立てることもできます。 

 

  与信管理の実施 

 

 与信管理とは、得意先を評価し(与信限度額を設定し)、

与信限度額を基準とした売上債権残高の管理をすることをいいます。

与信限度額は、取引を開始したときだけではなく、たとえば、社内でルールを

決め、半年や1年のサイクルで定期的に見直すとよいでしょう。

  取引先の管理は、営業担当者だけでなく、全社一丸で取り組むと効果的です。

たとえば、取引先から支払条件変更の打診があった場合や、取引金額に急激な

変化が生じた場合、財務状況 が著しく悪化した場合など、状況が突然変化する

ことがあります。

こうしたときに、その異変に最初に気づくのが経理担当者です。

これらの問題が発生した場合には、営業担当者と経理担当者とが連携しながら、

その原因を調べて、取引可能金額を変更していくことになります。  

 

営業活動を継続する上で、販売代金の回収、 すなわち、債権残高の管理は非常に

重要です。 

しっかりともれなく管理していきましょう。

 

 キャッシュポジションというのは、ある時点における現金+流動性預金(+短期の有価証券)の合計額を言います。

 企業は通常業務を継続的に行って行くにあたり、人件費などの経費の支払や、買掛金など取引先への支払が絶えず必要であり、それが少しでも滞ってしまうと事業の継続が危ぶまれたり、信用の失墜に繋がったりします。例えば、売上先の急な倒産や売上代金の遅延などによる資金ショートを未然に防ぐためにも、このキャッシュポジションの管理は重要なのです。また、キャッシュポジションは「手元流動性比率」として短期的な安全性の指標として使われているのです。

 

 では、ある時点でのキャッシュポジションはどの程度あればよいのかということなのですが、一般的には月商(年間売上高÷12か月)の2か月分以上、より安全性を重視するなら3か月以上あることが望ましいとされています。

 

 このキャッシュポジションの感覚なのですが、平時の時は上記のような考え方で十分なのですが、そうではない時、例えば会社の業績が悪化して通年での赤字が慢性化してきたときなどは別な考え方が必要となります。

 

 例えば、急激に業績が悪化した以下のA社のようなケースを考えて見ましょう。以下のA社の実績表を見て、この後A社がどのようになったのかを予想してみてください。また、A社はどのようなミスを犯しているのかもお考え下さい。

 

 

結局A社はリスケ後2年の間に自己破産を申請する道を選んだのでした。

 

 「リスケ」とは、リスケジュールの略語で、銀行融資における返済計画や返済額の見直しなど、契約時の借り入れ条件の変更という意味で使われています。銀行融資で用いるリスケは、借り入れ条件を緩和するときに使うのが一般的です。「当初の返済計画では返済が間に合わなくなった」「返済額を減らしたい(又は返済を止めたい)」といった場合に、リスケをすることが多くなります。

 

 注目ポイントは現預金残高と借入金残高の推移です。

 

 

 これを見ると業績の悪化と同時にA社のキャッシュポジションも大きく減少(悪化)しています。では、A社のキャッシュポジションが悪化した原因は業績悪化だけでしょうか。

 A社がキャッシュポジションを悪化させた最大の原因は業績悪化にもかかわらず銀行への返済を進めてしまったことなのです。そして、現預金が底をつきかけて初めてリスケを決断したことが分かります。決断が遅すぎたわけです。

 

 それでは、より以前にリスケを開始するといったことを行った場合を見てみましょう。

 もし、A社が業績の悪化を早めに予見し、資金繰りの悪化を防ぐために、前期の開始時点から金融機関と相談してリスケを行っていれば、大切な資金を借入の返済に回すことなく、当期末においても30百万円の資金を手元に残せていたはずです。

 もし、A社がこのような措置を早く行っていれば、もう数年は会社再建という道を探れたかもしれません。資金繰りは弾が切れたらおしまいです。資金繰りに苦しむ中小企業は,数百万~数千万円をめぐる銀行との交渉でつぶれたり、生き返ったりするのです。

 『手元資金とキャッシュフローに対する認識の甘さ』が会社の生死を分けると言っても過言ではないと思います。

 「経営とは、お金の出と入りの真剣勝負」だと言われます。

 

 特に非常時のキャッシュポジションは、たとえ借金してでも多めに確保しておくことが大切です。『弾が切れたらおしまい』ということを経営者は肝に銘じることだと思います。

 ここに、時価額1億円の収益物件(賃貸不動産)があるとします。この物件をある社長さんが、自己資金3千万円、金融機関からの借入金7千万円で購入しようとしているとします。この収益物件が年間稼ぐお金は、管理費や固定資産税を差引いて3.5百万円だとします。また、借入金7千万円は20年返済で年償還額は手取り収入と同じ3.5百万円だとしましょう。

 まず、キャッシュフロー経営の観点からは、入ってくるお金をそのまま借入金の返済として使うので、全くお金を生まない投資案件のように思えます。

 また、B/S(バランスシート)を見ると、借入金が増加するので、自己資本比率が大きく減少してしまいます。

 こんな不動産に投資する社長は財務を知らない社長だ。などと思ったりしませんか。でも、このような不動産に投資する社長さんは意外と多いのです。

 そりゃー、不動産屋に騙されているのだと思ってもらっても困ります。このような不動産を借金をしてでも買う意義はあるのです。では、このような不動産が生み出す効果を探って見てみましょう。

 

 まず、この投資案件で重要なのは、投資不動産を時価で見るか、簿価で見るかという観点が大きく関わってきます。

 そのことにポイントを置いて、話を進めてみましょう。

 会社が好調な営業成績を続けていることを好機に、金融機関から融資を受けで、上記不動産を購入したとします。自社の調子が良い時では、金融機関はこのような融資案件には飛びつくかのように乗ってくれます。

 そして、借入金を約定通りにコツコツと返していきます。年間の借入金の返済額は3.5百万円です。10年経てば借入金額の半分の3.5千万円の返済が済み、借入金の残額は3.5千万円となっています。

 

 さて、購入した収益不動産のPM(プロパティ・マネジメント)の成果もよく、10年経ってもこの不動産の時価が購入時と同じ1億円だったとした場合、どのようなことが起きているかを見て見ましょう。

 この収益不動産だけのB/S(バランスシート)でその変化を考えて見ます。まず、最初は自己資金3千万円と借入7千万円で、資産1億円を購入します。そして10年後、借入金は3.5千万円、そして資産の時価は1億円のままです。

 さて、何が変わったのでしょうか? そうです!自己資本が6.5千万円に増えているのです(1億円-3.5千万円)。

 不動産投資の目的は二つあり、ひとつはインカムゲインと言って、毎月々の賃貸収入を狙うもの、もう一つはキャピタルゲインと言って、値上がり益を狙うものです。しかし、この投資は毎月の賃料は借入金の返済に消えていきますし、収益物件は値上がりしているわけでもありません。

 

 少し財務に明るい社長さんでしたら、この建物の減価償却費は✖✖万円で、償却後の簿価で見ると.....。なんて考えがちですが、このように投資を行っている社長さんたちは、絶えず時価で物件価格を把握しているのです。

 

 でも、自社の景気が良い時に、社長さんがこのような不動産に投資をしていたら、そして、10年後に予期せぬ不景気が訪れたとしたら。

 社長さんは、この物件を売却して6.5千万円のキャッシュを得ることもできるだろうし、または、この物件の増加した担保余力を利用して、金融機関に新たな融資を申し込むことだってできることでしょう。

 不景気何するものぞ、という経営ができるようになるのです。

 

何のキャッシュフローも生まない収益不動産投資の裏には、万が一の時に対処するための社長さんの大きな秘策があるのです。