3月決算の申告も終わり、今度は社長が銀行等にわが社の決算内容を説明するシーズンとなっています。この時、銀行員が決算書の中で一番気にする数字について、社長が熱く語ることによって、その後の銀行員が社長を見る目が変わってしまうかもしれない、という数字の数々と、語るべき内容についてお話しします。
まず、B/S(貸借対照表)科目です。
・ 【現預金】:会社が立ちいかなることを倒産と言います。この最大の原因はお金が無くなることです。ですから、会社の現預金額はとても大切な数字だと言えます。この現預金額を社長が正確に把握していることが大切なのですが、この金額をある尺度を使って語ることでより効果が出るのです。その尺度とは「月商の何カ月分」というものです。『現在の現預金は“月商の2か月分”なんですが、これを何とか3か月にしたいと考えているんです』とかと表現します。銀行員からすると「この社長、なかなか分かっているな」となります。
・【自己資本(額)】:銀行員が決算書の中で気にする数字のひとつは自己資本です。ここがマイナスだと“債務超過”といって、銀行員は嫌がります。会社が成長するということは、この自己資本額が増えて行く状態です。自己資本比率ではありません。社長が今の自己資本が幾らで、これを『〇〇円まで大きくすることが経営目標なんですよ』と語ることが大切だということです。銀行員が、自分たちが気にしている数字を社長も同じく気にしているんだな、と思わせることも大事なのです。
・【売掛金・在庫】:この数字が過去5年間を比べて見て大きく増えた場合は要注意です。必ず銀行員は質問してきます。社長としては、なぜ増えたのか、理由を即答できるようにしておくことが大切です。売掛金や在庫が大きく増えた場合、銀行員は必ずと言っていいほど“粉飾決算”を疑って来るからです。
・【貸付金】:銀行員が一番嫌いな科目です。銀行が会社に貸したお金を社長や他の第三者に又貸ししているのではないかと疑われる原因にもなります。この科目についてはきちっと説明できること、そしてどのように減少させるのかの道筋をしっかりと示す必要があります。
つづいて、P/L(損益計算書)科目です。
・【5段階利益】:P/L上の利益には5つの利益があります。「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前利益」「当期利益」の5つです。銀行員との会話の中で、今どの利益について話しているのかが双方で一致しないと、話がかみ合いませんし、うまく伝わりません。また、話がおかしな方向に行ってしまいます。利益の中でも大切な利益と言えば「営業利益」であり、この利益のことを『本業での儲け』と言いますので、覚えておいてください。
・【減価償却費】:減価償却費というのはお金の出て行かないコストですので、資金繰り上は利益にプラスして考えることができるのです。過剰な設備投資などのケースを除けば、「減価償却費が多くて利益が少ない状態」は減価償却費が利益を押下げている状態なので、資金繰り上は懸念材料とはなりませんが、「減価償却費が少なくて、尚且つ利益も少ない」状態だと、銀行員には『大丈夫なのかな』と思われたりもします。社長としては、今年の減価償却費は一体いくらなのか。さらに来年はいくらの減価償却費が計上できるのかを知っておくべきだと思います。
・ 【実質経常利益】:保険金収入や補助金収入を「経常利益」の前にある収益科目である雑収入金額に参入して、「経常利益」を大きくして、さも儲かっているように見せる決算書も見受けられます。それらは本来の会社の実力ではありませんから、「経常利益」から除いて考えるべきなのです。社長としては、当期のイレギュラー(非経常的)な利益を除いてのわが社の実力をきちんと把握して、報告すべきなのです。
・【債務償還年数】:現在の有利子負債(借入金)を現在のキャッシュフローで返すと何年かかるかの指標です。ここを語れる社長は、絶対に銀行員から一目置かれる存在となります。ここで言うところの有利子負債とは厳密に言うと、正常運転資金(売掛債務+在庫-買入債務)を差引いた金額となることに注意が必要です。さらにここから現預金残高を刺し行く場合もあります。また、キャッシュフローは簡易計算で当期利益+減価償却費で求めることも可能です。
これを算式にすると、
さて、皆さん方は自社の決算書のなかでいくつの数字を理解し、説明できるか考えたことがありますか。もっもっと自社の決算書を身近なものと感じて、上手く説明でき、より熱く語れるようになれるように努力してみてください。