『お父さん、買い物をするんだったら明日にしてね。ポイント2倍なんだから。』と、妻からよく言われます。

 日本では「ポイント」が溢れ返っていますよね。コンビニでは毎回のように「ポイントカードは?」と尋ねられます。

 しかし、ポイントを2倍にするために、一日待つことの経済合理性はどこにあるのでしょうか?と思いながらいつも『わかった。』と答えてしまいます。

 

 「割引」と「ポイント還元」のお話で、良く語られているのが、

 ☞10%の割引と、10%のポイント還元ではどちらがお得?

 と、いうものです。みなさん両者の違いがわかりますか。

 

何だか計算するのが面倒ですよね。でしたら、次の場合ではどうでしょうか?

 ☞100%割引と、ポイント還元100%ではどちらがお得?

 

話を分かりやすくするために、100%割引を考えて見ましょう。

割引の場合は、その商品の値段はタダ(無料)になります。お財布からはお金は出て行きません。一方ポイント還元100%の方は将来の買い物券が100円分貰うのと同じ効果ですので、200円の商品を100円で買うのと同じだと考えることができます。割引率は50%となってしまいます。

 

 お店屋さんでよくやる「ポイント還元セール」ですが、割引サービスとは全く違うことがわかりましたか?

 

 『現金値引きよりポイント値引きの方がお店側に有利!』ということですね。

お客様の錯覚を狙ったサービスかも知れません。

 

 日本人は何かを貯めることが好きな人種です。「ポイント」もその一つなのでしょう。消費者の立場で考えると、ポイントは即座に使ってしまうことが消費者利益の最大化に繋がります。現金値引きの方が有利なのです。上の表を見れば一目瞭然ですね。

 

 ポイントは「積み立てる」のではなくて、「使う」ことが大切なのです。

 

 「ポイント2倍ディー」調子に乗って買いすぎたりはしないでくださいね。

 

 

 前回はオフ・バランス資産(バランスシートに載らない資産)を重視した経営の重要性について書きました。

 この考え方は、今から10年前くらいから経産省の肝入りで進められている中小企業の新たな経営スタイルである「知的資産経営」に織り込まれています。

 今回はこの「知的資産経営」について少し書いてみたいと思います。

 

 「知的資産経営」を語る上で、時折り引用される名言がありますのでご紹介しておきます。

 

 『財を残すは下、業を残すは中、人を残すは上』というものです。これは、明治時代の医師であり政治家であった後藤新平の言葉として言い伝えられているものです。

 また、2009年プロ野球監督を辞められる野村克也監督が最後のインタビューでこう語りました。

『人間何を残すか。人を残すのが一番。少しは野球界に貢献できたかな....。』

 

 人とは唯一お客さんに価値を提供するものを作り上げることができる“資産”である、ということでしよう。名君、人を残す....。何となくわかるような気がします。

 

前置きはここまでとして、「知的資産経営」の話を続けましょう。

 

 「知的資産経営マニュアル」によれば、知的資産をこう説明しています。

 

~≪以下引用≫

知的資産とは「従来のバランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、財務諸表には表われてこない目に見えにくい経営資源の総称」を指す。

≪引用終り≫~

 

 知的資産を三つに分類すると、「人的資産」「構造資産」「関係資産」に分けることができます。

 さらに、中小企業の場合、この三つの資産の構成割合は、人的資産=80、構造資産=10、関係資産=10なんだそうです。人が利益の中心となっている形態が中小企業の実態だと言えます。

 

 

 つまり、経験や技、スキルを持った人が職場を離れる(退職する)と、その企業の知的資産が激減してしまい、収益を上げられなくなってしまうという事態に追い込まれる。

 こういったことを防ぐ手段が、資産の大半(80)を占める人的資産を構造資産化して行くことだと言われています。

 

 まず、自社の技やノウハウ、過去の経験など全て棚卸ししてみてください。きっと、自社の強みが見えてくるはずです。それと同時に、様々な気づき(発掘)も有るかもしれません。自社の強みの見える化を行うのです。

 

 そして、それを基に、「営業・経営マニュアル」「教育システム」「人的資産の評価・報償規程」「営業秘密」「データベース構築」などの作成に落とし込んでいきます。

 さらにこれを、世代を超えて企業を存続させる力となる「構造資産」へと変化・成長させていくのです。知恵と工夫の蓄積だと言えます。

 こうして「人的資産」から作られた「構造資産」が、その後自社に新たな「関係資産」の構築をもたらしてくれるかもしれません。それに、その新たに構築された「関係資産」が、将来の「人的資産」の確保・育成に貢献してくれるようになればしめたものです。知的資産経営の成功スパイラルの出来上がりです。

 

 知的資産の三つの分類で、自社のそれぞれの資産の構成要素を変化(人的資産への比率を減少)させることができれば、その会社は永遠に存続する可能性が生まれます(100年企業)。

 

 知的資産という目には見えない資産を目に見える化して体系づけて行き、将来を見据えた経営を行うことが知的資産経営の目的なのです。

 

 最後に、「財を残すは下、業を残すは中、人を残すは上」には、以下のような続きがあることも書き添えておきます。

 

 『されど、財なさずんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し※』

 

※良い人材を残すには、良い事業が必要であり、事業を継続するには金が要るのですよ。

 

 平成31年から金融庁は「金融検査マニュアル」の廃止を決めました。現在金融機関は「事業性評価に基づく融資」とやらに傾注して行くようです。

 

 この背景としては、

 

―――「企業の経営改善や事業再生を促進する観点から、金融機関が企業の財務面だけでなく、企業の持続可能性を含む事業性を重視した融資や、関係者の連携による融資先の経営改善・生産性向上・体質強化支援等の取組が十分なされるよう、金融機関自らが今後の企業の本業支援や産業の再生支援等に必要な機能や態勢及び経営体力の一層の強化を図るよう努めるとともに、当局は監督方針や金融モニタリング基本方針等の適切な運用を図る」

   ~「日本再興戦略 改訂2014-未来への挑戦」より~

 

―――「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の 内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる」

   ~金融庁「金融モニタリング基本方針」より~

 

 の二つの国策の変更表明が揚げられます。

 

 今回は、銀行が今後行ってくるであろう企業評価手法である「事業性評価」について書いてみたいと思います。取り敢えずこれからは担保や保証なんて役に立たないみたいです。今後の金融機関との関わり合いがどのように変化するのかを知っておくべきだと思います。

 

 

「事業性評価」をとてもうまく表現したものをご紹介しますと、中小機構HPにあります特定非営利活動法人日本動産鑑定会長の森 俊彦氏の資料がとても参考になるといます最終ページP16

 具体的にご紹介すると、こうです。

 

 

ここに「流行っているスーパー」と「流行っていないスーパー」があるとします。この二つの店舗のビジネスモデルとしての「差」を考えて見ましょう。

 

 

 「差」を求めるのですから引き算ですね。「流行っているスーパー」から「流行っていないスーパー」を差し引くと残るのは、バランスシートに載っている資産(オン・バランス資産)では『たな卸資産』が、バランスシートに載っていない資産(オフ・バランス資産)では『知的財産・資産』が残るのだそうです。

 

 両方の店舗のバランスシートを見ると、現金預金・売掛金・建物・備品・買掛金・未払金・借入金に資本金、同じようなものが金額の差異はあるものの並んでいると思います。ですから引き算ではそれらはみな消えてしまいます、しかし、画期的に「差」が生ずる事業性資産があります。それが「たな卸資産」というわけです。まず、売る商品が違うのです。

 

 さらに、この引き算では大きな「差」が答えとして現れます。それが見えない資産(バランスシートには乗らない資産)です。

 

 ・社長の経営力(ヤル気)の「差」

 ・会社の組織力(チーム)の「差」

 ・仕入ネットワークの「差」
・立地の優位性の「差」

 ・ブラントやノウハウの「差」等

 

 これらの「差」が、ビジネスにおいて「営業キャッシュフローの差」として現れて、「流行っている・いない」という分かれ道に繋がるのです。まさにこれこそが「事業性資産」であり、「事業性評価」(企業の事業価値の見極め)の重要性に繋がるのだというのです。

 

 すごくわかりやすい説明だとは思います。今後、金融機関による企業評価はこの「事業性評価」が中心となります。会社のバランスシートに載っていないオフ・バランス資産を金融機関にどのように見せるか、評価してもらうかが融資のカギとなります。

 「事業内容の見える化」から一歩進んで、「事業内容の見せる化」に努めなくてはならないと思います。

 

 オフ・バランスを重視した経営も必要となる時代なのです。