平成31年から金融庁は「金融検査マニュアル」の廃止を決めました。現在金融機関は「事業性評価に基づく融資」とやらに傾注して行くようです。

 

 この背景としては、

 

―――「企業の経営改善や事業再生を促進する観点から、金融機関が企業の財務面だけでなく、企業の持続可能性を含む事業性を重視した融資や、関係者の連携による融資先の経営改善・生産性向上・体質強化支援等の取組が十分なされるよう、金融機関自らが今後の企業の本業支援や産業の再生支援等に必要な機能や態勢及び経営体力の一層の強化を図るよう努めるとともに、当局は監督方針や金融モニタリング基本方針等の適切な運用を図る」

   ~「日本再興戦略 改訂2014-未来への挑戦」より~

 

―――「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の 内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる」

   ~金融庁「金融モニタリング基本方針」より~

 

 の二つの国策の変更表明が揚げられます。

 

 今回は、銀行が今後行ってくるであろう企業評価手法である「事業性評価」について書いてみたいと思います。取り敢えずこれからは担保や保証なんて役に立たないみたいです。今後の金融機関との関わり合いがどのように変化するのかを知っておくべきだと思います。

 

 

「事業性評価」をとてもうまく表現したものをご紹介しますと、中小機構HPにあります特定非営利活動法人日本動産鑑定会長の森 俊彦氏の資料がとても参考になるといます最終ページP16

 具体的にご紹介すると、こうです。

 

 

ここに「流行っているスーパー」と「流行っていないスーパー」があるとします。この二つの店舗のビジネスモデルとしての「差」を考えて見ましょう。

 

 

 「差」を求めるのですから引き算ですね。「流行っているスーパー」から「流行っていないスーパー」を差し引くと残るのは、バランスシートに載っている資産(オン・バランス資産)では『たな卸資産』が、バランスシートに載っていない資産(オフ・バランス資産)では『知的財産・資産』が残るのだそうです。

 

 両方の店舗のバランスシートを見ると、現金預金・売掛金・建物・備品・買掛金・未払金・借入金に資本金、同じようなものが金額の差異はあるものの並んでいると思います。ですから引き算ではそれらはみな消えてしまいます、しかし、画期的に「差」が生ずる事業性資産があります。それが「たな卸資産」というわけです。まず、売る商品が違うのです。

 

 さらに、この引き算では大きな「差」が答えとして現れます。それが見えない資産(バランスシートには乗らない資産)です。

 

 ・社長の経営力(ヤル気)の「差」

 ・会社の組織力(チーム)の「差」

 ・仕入ネットワークの「差」
・立地の優位性の「差」

 ・ブラントやノウハウの「差」等

 

 これらの「差」が、ビジネスにおいて「営業キャッシュフローの差」として現れて、「流行っている・いない」という分かれ道に繋がるのです。まさにこれこそが「事業性資産」であり、「事業性評価」(企業の事業価値の見極め)の重要性に繋がるのだというのです。

 

 すごくわかりやすい説明だとは思います。今後、金融機関による企業評価はこの「事業性評価」が中心となります。会社のバランスシートに載っていないオフ・バランス資産を金融機関にどのように見せるか、評価してもらうかが融資のカギとなります。

 「事業内容の見える化」から一歩進んで、「事業内容の見せる化」に努めなくてはならないと思います。

 

 オフ・バランスを重視した経営も必要となる時代なのです。