中国経済の変調が言われ始めた。例えば、▽4~6月の実質GDP成長率は前年同期比6.3%となった。1年前は上海でロックダウンが行われていたため反動で高めとなったが、1〜3月比では0.8%と伸び率は鈍化。▽1~6月の固定資産投資は、不動産開発投資が前年同期比7.9%減と減少幅が拡大、インフラ投資は7.2%増だが伸び幅が縮小。

 

 ▽1~6月の社会消費品小売総額は前年同期比8.2%増だが、商品の消費とサービス消費の伸びがともに減速。小売売上は4月に18.4%増となったが、これも前年に上海市ロックダウンなどがあった反動。▽6月の都市部失業率は5.2%。大卒者を含む16~24歳の失業率は21.3%となり、3カ月連続で過去最高を更新(就職難で職探しをしていない若者を含めると5割近いとの試算もある)。

 

 ▽7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%下落し、2年5カ月ぶりにマイナスとなった。不動産不況や輸出入の減少などで中国経済が減速する中、デフレ圧力が強まっているとの懸念も漂う。7月の生産者物価指数(PPI)は前年比4.4%下落し、10カ月連続のマイナス。▽7月の輸出は前年同月比14.5%の大幅減で、マイナス幅は3年5カ月ぶりの大きさ。輸入も12.4%減と大きく落ち込んだ。

 

 ▽6月の不動産販売は前年同月比28.1%減と大幅な減少。不動産投資は1兆2849億元で前年比20.6%減少。6月の新築住宅価格は前月比横ばい。1〜6月の新規着工(床面積ベース)は24.3%減。不動産デベロッパーが1〜6月に調達した資金は9.8%減少した。不動産は中国経済の2〜3割を占めるとされ、不動産の不調は中国経済に大きく影響する。

 

 中国が発表する統計数字には、どこまで実態を正確に反映しているのかと信憑性に疑念があり、共産党が独裁する状況で政治的に「正しい」数字に操作されて発表されているのではないかとの疑念もつきまとう。そうした中で、楽観的な数字を発表できず経済の減速を示唆する数字を発表せざるを得なくなっているのは、実態が相当に痛んでいることを糊塗できなくなっていることを示すか。

 

 中国は外資を呼び込んで欧米などへの輸出基地になることで経済成長を続けてきたが、国内では不動産開発を野放図に許し、投機目的のマネーが大量に流入していた。実需を遥かに上回る高層住宅などが全国で建設され続けていたが、政府が不動産企業への融資や住宅ローン融資の規制に転じ、大手の恒大グループなど資金不足でデフォルトする企業が続出し、不動産バブルは崩壊した。

 

 中国は日本のバブルを研究しているから、不動産バブルに適切に対応できるなどというコメントも以前散見されたが、日本のかつてのバブルを上回る規模の中国のバブルに政府がどこまで適切に対応できるのか未知数だ。加えて中国の地方政府は土地の使用権を売って財源としてきたが、その収入が大幅に減り、過去に発行した債券の返済ができずデフォルトになるとの不安も出てきた。

 

 バブルの高揚感に浮かれていた中国は、不動産バブルの後始末に直面している。地方政府は疲弊しているので、リーマンショック後の経済対策のように大半を地方政府に委ねるわけにはいかず、中央政府が出て来ざるを得ないだろうが、バブルの後始末についてはマルクスの理論は役立たない。社会主義市場経済なるもので、社会主義と市場経済の弱点が重なるとどのような状況になるのかを中国は世界に見せている。