日本では、連日のように最高気温が40度近くになる地点が全国各地で続出するなど、猛暑の夏となり、熱中症への警戒がマスメディアで頻繁に呼びかけられている。本州よりも涼しいはずの北海道も今年は各地で最高気温が30度台前半の日が続き、熱帯夜の日も続出して、涼を求めてきた本州などからの観光客を落胆させている。
猛暑は日本ばかりではなく、北半球の多くの地域でも記録的な高温が観測されている。こうした高温は地域により様々な要因が複合して起きているのだろうが、指摘されることが多いのが偏西風の蛇行とエルニーニョ現象だ。2023年のエルニーニョ現象は規模が大きいとされ、気象庁は「春からエルニーニョ現象が続いている。冬にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)」とする。
気象庁は「7月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は、6月から大きく上昇して+1.8℃」となり、「太平洋赤道域の海面水温は東部を中心にほぼ全域で平年より高かった」とし、「大気海洋結合モデルは、太平洋赤道域の中部から東部にかけて海洋表層の暖水をさらに強め、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差が大きく」なり、冬にかけて「基準値より高い値で推移する可能性が高い」と予測する。
偏西風は、地球の中緯度の上空を西から東に向かって流れる気流で、冬は低緯度側に広がり、夏は高緯度に縮小する。偏西風が生じるのは①北極・南極に近づくほど寒く、赤道付近に近づくほど暖かいために起こる温度差により生じる気圧差、②地球の自転ーによるとされる。偏西風は波長が数千kmの波の性質を持ち、南北に蛇行して流れる(蛇行することにより南から北へ暖気を、また、北から南へ寒気を運ぶ)。
この夏、日本では偏西風が北側に偏って流れ、太平洋高気圧などからの暖かい空気を呼び込んだことで北海道を含めて日本列島は猛暑の夏となった。台風6号の動きが遅く、西へ東へと迷走したのも偏西風が北側に偏っていたことの影響とされる。自力で動く力が弱い台風は日本付近では偏西風に流されて東に向きを変えて移動するのだが、台風6号は偏西風の影響を受けずに迷走して北上した。
偏西風の蛇行は気象に大きな影響を与える。この夏のように偏西風が北側に偏って南から暖気を引き込むと猛暑になり、偏西風が南側に偏って寒気を引き込むと冷夏になる。冬には偏西風が北側に蛇行すると暖冬になり、南側に蛇行すると北極付近の寒気の南下をもたらし、日本列島に厳しい寒波をもたらす。
偏西風の蛇行を事前に正確に予想できれば天気予報の精度は格段に上がるのだろうが、そうした事前予想は簡単ではないらしい。だから人々は猛暑に見舞われてから偏西風の蛇行という気象庁などの説明を目にして、そうかと納得するしかない。偏西風の蛇行を正確に予想するためには過去の多くのデータを集めて分析することが基礎となろうが、複雑な要因が絡んで様々な偏西風の蛇行が現れるのだろうから分析は簡単ではないか。