こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はBloodからで、大細胞型リンパ腫の3ライン以降の救援療法として、CAR T細胞療法と二重特異性抗体を比較したメタ解析結果となります。
Kim J et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023023419
【要旨】
今回のメタ解析は、再発難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(R/R DLBCL)に対するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法と二重特異性抗体の有効性と安全性を評価した。
我々は、2023年7月までのMEDLINE、EmbaseとCochrane data baseを検索し、CAR T細胞療法とCD20×CD3二重特異性抗体をR/R DLBCLに対して3ライン以降の治療として実施した臨床試験を抽出した。関連する共変量を修正するメタ回帰分析を用い、ランダム効果モデルにより完全寛解(CR)率と二次的アウトカムを推定した。1347患者からなる16の臨床試験がプール解析に含まれた。
二重特異性抗体の統合CR率は0.36(95% CI 0.29-0.43)、対してCAR T細胞療法は0.51(95% CI 0.46-0.56)であった(P < 0.01)。この優越性は二重特異性抗体群のうちのCAR T細胞療法ナイーブの患者と比較しても同様で、CR率は0.37だった(95% CI 0.32-0.43)。多変量メタ回帰分析でも、ダブルヒットリンパ腫の割合を調整した上でCAR T細胞療法の有効性が優れていることが分かった。統合1年無増悪生存率はこれらの結果を反映するものだった(0.32[95% CI 0.26-0.38] vs 0.44[95% CI 0.41-0.48];P < 0.01)。グレード3以上の有害事象に関しては、二重特異性抗体のサイトカイン放出症候群の発症率は0.02(95% CI 0.01-0.04)、神経毒性が0.01(95% CI 0.00-0.01)、感染症が0.10(95% CI 0.03-0.16)だった。同様にCAR T細胞療法はそれぞれ0.08(95% CI 0.03-0.12)、0.11(95% CI 0.06-0.17)、0.17(95% CI 0.11-0.22)で、前2者で有意差を認めた。
結論として、高いCR率達成においてCAR T細胞療法が二重特異性抗体を上回ったが、重篤な有害事象が増加した。
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昨今の悪性リンパ腫業界で猛威を振るっているCAR T細胞療法と二重特異性抗体ですが、治療の性質上、直接比較というのは難しいので、今回のようなメタ解析は重要だと思います。非常にざっくり言うと、3ライン以降の再発難治性DLBCLにおいてはCAR T細胞療法のほうが高い有効性(=CR率)をもたらすという結果になりました。一方で安全性に関しては、高グレードサイトカイン放出症候群や神経毒性に関して二重特異性抗体に軍配があがるようです。皆がそうだろうなと思っていたであろう結果に落ち着きました。
両者の使い分けについてですが、副作用に耐えられるフィットな患者で、どちらの治療にも等しくアクセス出来るのであれば、やはり高い効果を狙ってCAR T細胞療法がいいのかなと思います。逆に高齢・アンフィットであったり、CAR T細胞療法にアクセス困難な場合は、合併症の少なさやアクセスの容易さから二重特異性抗体がお勧めでしょう。と言うわけで、今後の治療指針に参考になりました。
おそらく二重特異性抗体は、治療の簡便さを活かして今後はより早い治療ラインでの併用療法や自家移植に絡めた戦略へ移行していくでしょうから(推測)、もう少し研究が進んで両者の立ち位置が明確になると良いなと思います。
おまけ
大阪シリーズの続きで、こちらも説明不要の例の看板です。雨の上に人混みがすごすぎて、このくらいの距離感が限界でした・・・