【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はLancet Haematologyから、多発性骨髄腫に対する新規の四剤併用化学療法に関する第Ⅱ相試験結果をご紹介いたします。

 

Isatuximab, carfilzomib, lenalidomide, and dexamethasone in patients with newly diagnosed, transplantation-eligible multiple myeloma (SKylaRk): a single-arm, phase 2 trial

E O'Donnell et al, Lancet Haematol 2024, doi: 10.1016/S2352-3026(24)00070-X

 

【背景】

イサツキシマブは再発難治性多発性骨髄腫に対し承認された抗CD38モノクローナル抗体である。我々は、新規診断移植適応の多発性骨髄腫患者における週1回のカルフィルゾミブ(K)、レナリドミド(R)、デキサメサゾン(d)にイサツキシマブを追加したIsa-KRd療法、および染色体リスクにより層別化された維持療法の評価を目的に臨床試験を行った。

 

【方法】

今回の単群第Ⅱ相試験は、ボストン(米国マサチューセッツ州)の3つのがんセンター(2つの病院と1つのがん研究所)で実施された。18歳以上の移植適応の新規診断多発性骨髄腫患者で、ECOG PS 2以下が適格とされた。

 

患者は28日を1サイクルとしたIsa-KRd療法を4サイクル受けた。内容は以下の通り。経静脈的イサツキシマブ 10mg/kgを週1回ごとに8週間、次に隔週で16週、その後は4週ごと;経静脈的カルフィルゾミブ 56mg/m2をday 1、8、15(サイクル1のday 1は20mg/m2);経口レナリドミド 25mgをday 1-21;経口デキサメサゾン 20mgを全てのカルフィルゾミブとイサツキシマブの投与日と翌日。地固め療法はアップフロントの造血幹細胞移植(HSCT)にIsa-KRd療法 2サイクル追加、もしくはHSCTを延期して4サイクルのIsa-KRd療法追加のどちらかである。
 

主要評価項目は4サイクルの治療後の完全寛解率である。解析はITT集団で行われた。試験薬を投与された全ての患者が安全性解析に加えられた。

 

【結果】

2020年7月31日から2022年1月31日の間に、50人の患者が参加した。年齢中央値は59歳(範囲 40-70)で、54%(50人中27人)が男性、44人(88%)が白人だった。46%(50人中23人)が高リスク染色体異常を有していた。フォローアップ期間中央値は26カ月だった(四分位範囲 20.7-30.1)。32%(50人中16人)が4サイクル後に完全寛解を達成した。全奏効率(ORR)は90%(45人)、78%(39人)が非常によい部分寛解(VGPR)以上を達成した。地固め療法完遂後、58%(29%)が完全寛解を達成し、ORRは90%(45人)で86%(43人)がVGPR以上を達成した。

 

最も頻度の高い(2人以上)グレード3もしくは4の副作用は好中球減少症(50人中13人[26%])、ALT上昇(6人[12%])、疲労(3人[6%])、血小板減少(3人[6%])、急性腎障害(2人[4%])、貧血(2人[4%])、発熱性好中球減少症(2人[4%])だった。グレード1~2の輸注関連反応が20%(10人)で見られ、グレード3はいなかった。グレード1~2の高血圧が14%(7人)、グレード3が1人で認められた(1人[2%])。治療に関連しないと評価された2件の死亡が見られた。

 

【解釈】

今回の試験では事前に特定された完全寛解閾値を達成出来なかったが、Isa-KRd療法は移植適応新規診断多発性骨髄腫患者に深く持続する反応をもたらした。この治療は安全であり、同様の状況でのレジメンに一致するものであった。


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多発性骨髄腫は四剤併用化学療法の時代に近づきつつあります。以前にもダラツムマブベースのDara-KRd療法や、Isa-KRd療法の別の試験もご紹介しています。

 

 

 

今回のSKylaRk試験は、全リスクの多発性骨髄腫を対象として、上記のGMMG-CONSEPT試験よりもカルフィルゾミブなどの投与スケジュールが全体的にやや軽めになっており、受けやすいレジメンになっていると思います。患者数の少ない第Ⅱ相試験なのでまだ何とも言えませんが、既存の四剤併用化学療法と遜色なさそうな効果を示しており、今後有望な戦略の一つになりそうです。

 

おまけ

 

 

イトヨリを炊き込んだ土鍋ご飯を食べました!家でも作ってみたいです。