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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBloodより、既治療慢性リンパ性白血病患者を対象としたアカラブルチニブとイブルチニブの比較試験であるELEVATE-RR試験の安全性プロファイルを詳細に検証した報告をご紹介いたします。

 

Detailed safety profile of acalabrutinib vs ibrutinib in previously treated chronic lymphocytic leukemia in the ELEVATE-RR trial

Seymour JF et al, Blood 2023, doi: 10.1182/blood.2022018818

 

【要旨】

ELEVATE-RR試験で、既治療の慢性リンパ性白血病においてイブルチニブに対してアカラブルチニブが無増悪生存で非劣性であり主要な有害事象(AE)の頻度が低いことが示された。我々は事後の解析を通してアカラブルチニブとイブルチニブのAEをさらに特徴づけた。全ての、および曝露量により調整された有害事象の発現率が、一般的なブルトン型チロシンキナーゼ関連AEと臨床的に興味のもたれる選択されたイベント(ECI)に対して評価された。過去の文献に基づいたAE burdenスコアが全AEおよび選択されたECIで算出された。安全性解析には529人の患者が含まれた(アカラブルチニブ 266人、イブルチニブ 263人)。

 

一般的なAEのうち、全グレードの下痢、関節痛、尿路感染症、背部痛、筋痙攣、消化不良の頻度はイブルチニブがより高く、曝露量により調整された発現率は1.5~4.1倍であった。頭痛と咳嗽の頻度はアカラブルチニブで高く、それぞれ同様に1.6倍、1.2倍高かった。ECIのうち、全グレードの心房細動/粗動、高血圧、出血はイブルチニブで頻度が高く、曝露量により調整された発現率でも同様であった(それぞれ2.0倍、2.8倍、1.6倍)。全心関連イベントおよび感染症の頻度は両群で同等であった。AEによる治療中断率はアカラブルチニブで低かった(ハザード比 0.62;95% CI 0.41-0.93)。AE burdenスコアは全ての、および心房細動/粗動、高血圧、出血のECIでアカラブルチニブに対しイブルチニブが高かった。本解析の限界としては、試験デザインが非盲検でありより主観的なAEが報告される影響があったかもしれないことが挙げられる。

 

全体として、イベントベースの解析とAE burdenスコアでは、アカラブルチニブに対してイブルチニブで全ての、および心房細動、高血圧、出血で特にAE burdenが高いことが示された。

 

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ELEVATE-RR試験は以前ブログで紹介しております。

 

 

今回の報告ではさらに詳細に安全性プロファイルが解析されていますが、やはり全体的にはアカラブルチニブが安全性に優れるようです。イブルチニブも優れた薬剤ですが、安全性の観点からはアカラブルチニブがしばらく主流になるかと思います。Zanubrutinibがどうかという疑問はありますが・・・今後の研究に期待します。

 

 

おまけ

 

 

夏ですが比較的正統派のポトフを作りました。汗だくになりながら食べました!