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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今年最後の論文紹介は、JCOからちょっと懐かしい臨床研究の長期フォローアップ成績を選んでみました。

 

Treatment of Older Patients With Mantle Cell Lymphoma (MCL): Long-Term Follow-Up of the Randomized European MCL Elderly Trial

Kluin-Nelemans HC et al, JCO 2019, doi: 10.1200/JCO.19.01294

 

【目的】

2012年に発表されたランダム化非盲検第Ⅲ相試験であるEuropean Mantle Cell Lymphoma(MCL) Elderly試験のアップデートにおいては、リツキシマブ維持療法に関する長期間の有効性と安全性に特に焦点を当てて、長期成績を確認することを目的とした。

 

【患者と方法】

新規に診断された560人のMCL症例が、R-CHOP群、R-FC群(リツキシマブ・フルダラビン・シクロフォスファミド)のいずれかに最初のランダム化を受け、さらにその後、治療に反応した316症例をリツキシマブ群もしくはインターフェロンα群による維持療法に2回目のランダム化を行い、維持療法はリンパ腫の進行まで継続された。最初のランダム化からの無増悪生存期間、および最初もしくは2回目のランダム化からの全生存(OS)を比較した。

 

【結果】

中央値で7.6年のフォローアップ後において、以前に報告された初回治療におけるOSの有意差は持続していた(R-CHOP群 [n = 280] 中央値 6.4年 vs R-FC群 [n = 280] 中央値 3.9年;P = 0.0054)。R-CHOPに反応を示した患者群において、無増悪生存期間とOSの中央値はそれぞれ5.4年と9.8年であった。リツキシマブ維持療法群に割り付けされた場合(n = 87)にリツキシマブによる利益を最も受け、インターフェロンα(n = 97)と比較して無増悪生存期間(5.4年 vs 1.9年;P = 0.001)とOS(9.8年 vs 7.1年;P = 0.0026)の双方で有意差が見られた。

 

R-CHOPで治療をされた患者のうち、58%と32%が維持療法開始後それぞれ2年後、5年後にも治療継続されていた。R-FCで治療を受けた後のリツキシマブ維持療法は、予期されない寛解期の死亡の累積発生率が高かった(5年後で22%)。リツキシマブ維持療法の毒性はR-CHOP群で低かった(grade 3~4の白血球減少もしくは感染症:5%)一方で、R-FC群ではgrade 3~4の白血球減少が最大40%、感染症が最大15%と頻度が高かった。

 

【結論】

高齢者のMCLに対し、R-CHOP療法後に再発するまでリツキシマブ維持療法を行う治療戦略の優れた結果は、長期間のフォローアップでも維持されていた。2年間を超えるリツキシマブ維持療法の延長は有効かつ安全なものである。

 

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2012年にこの臨床試験の最初の結果が発表されてから大きく様変わりしてしまいましたが、未だにR-CHOP療法は重要な治療選択肢の1つであることは間違いなく、特に治療選択肢が少ない高齢者においては、このような長期フォローアップの有効性や安全性にも目を向けることが重要と思います。最新の臨床試験に目が向きがちな昨今ですが、古くてまだ新しい治療の情報にも注視していきたいですね。

 

私の今年のブログ更新は今回が最後になります。年末年始で慌ただしい時期ですが、お身体に気をつけて、よいお年をお迎えくださいね。

 

おまけ

 

 

後期研修医の先生の歓送迎会で食したサーモンコロッケです。店で食べる揚げたては、やっぱり美味しいです。